ヒラリー・クリントンによるトランプ外交批判
ドナルド・トランプ氏の外交政策を痛烈に批判したヒラリー・クリントンの演説は、オバマ外交支持や自身の成果の強調さえなければ、中道路線に近く、「まるで、マルコ・ルビオの演説のようだ」と評価されています。
特にトランプ氏が、日本や韓国からの米軍撤退を提案し、日韓の核保有を許容した事や、北大西洋条約機構(NATO)との関係を再考したりという考えを示したことに、「彼は自分が何を言っているのかも理解できていない」と酷評したあたりは、共和党議員から聞こえても当然の批判です。
またロシアのプーチン大統領のような独裁者を褒め、中国共産党の横暴を力強いと評価する一方、英国首相やドイツ首相、メキシコ大統領ら、米国の「友人」には無用と思われる挑発を行なっているトランプ氏の言動を「理解不能」とした点は、全く同意できます。
ヒラリー・クリントン候補の中道路線への変更は、同じく民主党から立候補している社会主義者であるバーニー・サンダース議員の極左政策と区別をつけ、排他的なトランプ支持を躊躇する保守派や無党派層からの得票を狙ったものだと思われます。
トランプ氏は、自身の経営していたトランプ大学を詐欺と見做したゴンザロ・クリエル判事を「メキシコ人」と呼び、ラテン系の血統の為に正しい判断が下せないと批判しましたが、「ユダヤ系だから」「黒人だから」「アジア系だから」「白人だから」と、一々自分に反対する人々の「動機」を勘繰り、人種を背景とすることは「アメリカ的」ではありません。アメリカはそのような国家ではありません。
さて、ヒラリー候補の演説におけるトランプ氏批判に対して、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「有権者にとって外交政策は、重要な観点となった事が無い」とトランプ氏擁護の記事を掲載しています。
Clinton to Pound Trump on Foreign Policy but Risks Loom - WSJ
但し、トランプ氏とヒラリー候補の外交政策への考えの違いを比較すれば、トランプ氏の考えが「アメリカは今まで同盟国によって搾取され続けた犠牲者である」と言った、トランプ氏自身の思い込みそのものであり、韓国からの米軍撤退案によって、北朝鮮の国営放送がトランプ氏を褒めちぎった事にも頷けます。
How Hillary Clinton and Donald Trump See the World Differently - Washington Wire - WSJ
またフォックス・ニュースは、いかにクリントン候補のトランプ氏批判が的外れだか、単なるトランプ氏の為のプロパガンダとなった記事を掲載しています。
保守派テレビ局であり、またメディア・ニュースとしてあったフォックス・テレビは、トランプ氏が他の共和党候補者を抑えてリードを始めた時から、あからさまなトランプ支持を打ち出したようで、公平なメディアとしてのトランプ批判では、CNNの方がよほど客観的な報道を行なっています。
保守派メディアのトランプ支持は、トランプ氏に不満を持つ保守派アメリカ人を落胆させたようです。比較して、ワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙のようなリベラル・メディアの方が、トランプ氏の政策を警戒する記事を掲載し続けてきました。
特にワシントン・ポストは、2013年にジェフ・ビーゾ氏によって買収されたことにより、ウォール・ストリート・ジャーナルに代わる中道保守のメディアとして、フォックス・ニュースやウォール・ストリート・ジャーナルのトランプ報道に不満を持つ保守層の新しい受け皿となっているようです。