370人の経済学者による『トランプ大統領』反対表明
トランプ支持を奨励している人々は、ヒラリー支持者を『グローバリスト』を呼び、批判しますが、『グローバリスト』が一体何を指すのかは定かではありません。『グローバリズム』陰謀説論者には、まるでヒラリーの政策が国境を撤廃する事のように吹聴していますが、そのような事実は、ヒラリー候補の政策にも民主党の政策にも無く、国境撤廃を主張している声は誰からも聞きません。
『自国の文化を固守す』ことが反グローバリズムであるとすれば、インターネットを通じて情報が交差され、旅行やビジネス、留学を通じて人々の交流がなされている今日、他国からの影響を全く受けずに自国文化を固守することなど不可能です。
「反グローバル主義」が「移民の排除」を指すならば「移民反対」と説けば良いものを、先月もトランプ氏やその支援者達は、わざわざ「ヒラリーがグローバリストVIPらと会合している」と批判しました。
実際には、ヒラリー・クリントン候補とユダヤ系資本家たちとの会合があっただけで、ユダヤ系資本家を『グローバリスト』と指し、「国際ユダヤのネットワークがアメリカを則ろうとしている」という『陰謀説』を流布して恐怖心と愛国心を煽動し、ユダヤ系への差別を行ないながら、トランプ支持を正当化しているだけです。
これから考えれば、『反グローバル主義』とは愛国心と恐怖心を煽動する『反ユダヤ主義』の一端である事が明らかです。
実際には、経済も安全保障も、他国との協調関係によるところが多く占めます。つまり、反グローバル主義を説き、海外からの投資や自由貿易を困難にすれば、経済を直撃します。アメリカの大統領選挙を語る上で、何故かトランプ支持者らの多くは陰謀説を信じ込む傾向がありますが、「グローバリズム」への恐怖心を煽りトランプ支持を訴えるような支持者は、(その中には陰謀説を流布する日本人も含まれていますが)、例えば「ユダヤ系資本家」を含む海外資本家とのビジネスを完全に撤廃した場合、アメリカの経済にどのような悪影響が出るか、考えた事はあるのでしょうか? そのような愚かな極論を実行して大不況に陥った場合、責められるべきは「ユダヤ人」を含む「海外資本家ら」でしょうか。果たして彼らが「陰謀を巡らせて経済悪化を招くように共謀した」となるのでしょうか。
経済について全く無知のトランプ氏は、19兆円にも上るアメリカの借金をどのように返済するか聞かれ、「債権者と交渉して、債務額を減らしてもらう」と答え、ニューヨーク・タイムズに酷評されました。
真意を正されると、「紙幣をもっと印刷する」と答えています。
トランプ氏は、投資した全額が帰ってこないと投資家が見れば、投資そのものが減少し、紙幣を大量印刷すればインフレーションを招き貨幣価値が下がる常識を、全く理解していないようです。
ニューヨーク・タイムズは、初夏の時点で、トランプ大統領の誕生が現実化すれば、アメリカへの投資は減り、経済が悪化すると警告していました。トランプ氏は一国主義を説き、同盟国を含め、貿易相手は敵であるかのように吹聴しますが、実際に海外からの投資が減れば、株価は下がり、経済に悪影響が生じます。その責任は、投資を渋った海外投資家が負うべきなのでしょうか。
今日のウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、8人のノーベル賞受賞者を含む370人の有名経済学者がトランプ氏の大統領当選が齎す経済的打撃を警戒し、トランプ氏投票への反対を訴えています。
専門家からの忠告を無視しながら何故か陰謀説を好み、その上でトランプ支持を正当化するような人々は、実際に経済が打撃を受けても、「グローバリストたちが陰謀を巡らせ、ウォール街と共謀してアメリカの経済を陥れている」と責任転嫁するのでしょうか。