コロナウイルス対策を巡る、両サイドの極論

私は全米でコロナウイルス感染者数が第三番目に多いミシガン州に暮らしている。ミシガン州で初のコロナウイルス感染者が確認されたのは3月10日だ。数週間以内に国際旅行をしたデトロイトに近いオークランド郡の女性と、ウエイン郡に住む、国内旅行経験者の男性である。この日、グレッチェン・ウィッティメア州知事は「緊急事態宣言」を発動し、3月12日には、全ての公立学校が休校となった。16日からはレストランやバーはデリバリーのみの営業とされ、50人以上が集まる集会が禁じられた。ウィッティメア州知事は、全ての重要でないビジネスを休業させ、3月22日は全ての州住民に対して自宅待機命令が出された。その間、生活必需品の為の買い物は認められたが、公共の場においてはマスクをする事と、他人との間に6フィートの「ソーシャル・ディスタンス」をとる事が求められた。ここまでの期間に、ウィッティメア州知事に反対する声はそれ程あがらなかった。ミシガン州に住む住民の殆どは、コロナウイルス感染拡大に伴い、何らかの措置を取る必要を感じ、生活の規約を設けられる場合も、緊急事態である故、それらに従おうとしていたからだ。ところが3週間の予定だった自宅待機命令はその後4月末まで延長され、その間、州知事個人の判断によって様々は規則が加えられる。https://www.thenewsherald.com/news/governor-orders-michigan-residents-to-stay-at-home/article_317a5902-6d13-11ea-acbd-e3d2c096f1a5.html
「宝くじ」が生活必需品として買って良い必需品のリストに入る一方、草花や種や家具の買い物は「生活必需品ではない」と判断され、購入した場合には処罰の対象となった。北部の湖畔に別荘を持つ人は多いが、ミシガン州住民がこうした別宅に移動する事は禁じられた。これは北部の住民の一人が、コロナウイルスの蔓延によって北部の別荘に避難する人々が増えた事に危機感を持ち、州知事に電話で苦情を入れた為に追加された規則のようだ。またアメリカでは、専門業者に頼んで広い庭の芝刈りや木の剪定、根の保護など、ガーデニング一般をしてもらう家庭が多いが、業者による芝刈り等一切の仕事まで禁じられた。それだけではなく、全て自動の洗車サービスまで禁じられ、利用を試みると警察が呼ばれる。https://www.clickondetroit.com/news/local/2020/04/03/michigan-car-wash-caught-violating-executive-order-by-staying-open-during-covid-19-crisis/ https://www.clickondetroit.com/news/local/2020/04/07/landscapers-fight-for-essential-status-amid-coronavirus-outbreak/ https://www.mlive.com/public-interest/2020/04/with-michigans-coronavirus-stay-at-home-order-extended-frustration-builds-over-whats-been-deemed-non-essential.html
ここまで極端になると、ただ生活に不可欠ではないビジネスを全て徹底的に閉鎖してしまうという執念が感じられるだけで、コロナウイルス感染予防とは一切のビジネスまで被害を被ることとなる。私の家の庭でも1エーカーあり、普段は専門業者が秋からの落ち葉の掃除から始まり、芝生の刈りこみ、手入れ、枝の剪定、根の保護など、全てのサービスを行なっていたが、今年は彼らが仕事を始める前に働く事そのものが禁止されてしまった。1エーカーもある庭は、乗用芝刈り機が無ければどうにもならないが、小さな芝刈り機であっても、そうしたものを扱うガーデニング専門店そのものが閉鎖されている。しかしながら、なぜ広い庭の芝を乗用芝刈り機によって刈る事が、コロナウイルス感染の可能性を高めると禁止されるのか。なぜ自動洗車サービスが、禁止されるのか。ウィッティメア州知事の極端な政策は、法を順守し、感染予防に協力しようとする一般市民の生活を、必要以上に窮屈にしているのだ。必要以上の制限となれば、不満を持つ多くの人々によって反対運動が起きても当然である
公権の介入による必要以上の規則は、自らの権利や自由を制限されても公共の福祉に貢献しようとする市民の意欲を損なう事にしかならない。ウィッティメア州知事は民主党員であるが、「政府や権力の介入が大きければ大きいほど、良い社会になる」と考える左派の典型であり、その為に侵害される自由や権利にはあまり考えが及ばないようだ。しかも一度個人企業や零細企業を破たんさせてしまった場合、その修復がどれ程困難であり、時間がかかるか全く考慮していないようにも思われる。市民の協力のもとに他者の自由を制限するならば、その制限は必要最低限であるべきだ。
さて、そうした州知事の政策に反発する市民の多くが、車に乗ったままデモンストレーションを行なった。車に乗ったままのデモンストレーションであるならば、多少渋滞を招くことになるが、コロナウイルスの脅威を認識した上の責任ある大人と見做す事は出来る。これ以上のロックダウンによってミシガン州の経済を破たんさせない為には、非常事態宣言が解除された後にも、市民がそれぞれソーシャル・ディスタンスを守り、ウイルス感染阻止に向けた責任ある行動をする事が求められる。ところが、ここ数日ミシガン州都に押し掛けるデモンストレーション参加者の中には、ソーシャル・ディスタンスを全く取らず、マスクも被らず、ただ「トランプ・ペンス」のバナーを掲げたり、銃を携帯したりで、コロナウイルスの脅威を全く無視した人々、責任ある行動を取れない人々と、自ら公言しているような場合が多い。

 

f:id:HKennedy:20200419162855j:plain


こうした傾向は、コロナウイルスの脅威を認識できないトランプ氏本人による「ミシガンを開放させよ」等のツイートや、すっかり北朝鮮国営放送並みにトランプ礼賛を報道し続けるフォックス・ニュースのオピニオン・アンカーらによるウイルス軽視にも依るのだろう。(テキサス州で行なわれたロックダウンに反対するデモでは、ホワイト・ハウスのコロナウイルス対策委員会のアンソニー・ファウシ博士を敵視し、ファウシ博士の解雇を求めるトランプ支持者らが100人ほど集まっている。)https://www.washingtonpost.com/national/rallies-against-stay-at-home-orders-grow-as-trump-sides-with-protesters/2020/04/17/1405ba54-7f4e-11ea-8013-1b6da0e4a2b7_story.html?fbclid=IwAR1UjGkOztxpmfMlBZA6SkPmfKukRhKZMdHeShETltgJnng7H7Kk8jdLsX0#click=https://t.co/2V1mhWFDC9
しかしながら、コロナウイルスの脅威を認識できず、ソーシャル・ディスタンスを順守できない人々のデモは、彼らが権力者による強制を必要としている事を証明しているだけだ。こういう人々がいるからこそ、ウィッティメア州知事のような極端な政治家が必要とされるのだ。彼らはお互いを嫌悪しながら、相手の存在があって初めて自らの存在も正当化できると言える。
メディアは左右揃って、州知事によるロックダウン政策に反対する人々のデモを報道する。フォックスなどの右派メディアは、デモが「経済崩壊を前に、住民の怒りを表している」と報道するが、左派メディアは「ソーシャル・ディスタンスを順守せず、ウイルスの脅威を軽んじるトランプ支持者」と報道する。私はウイッティメア州知事のロックダウン政策の一部に強く反対するが、州知事の懸念も理解できる。いま議論されるべきは、どのように住民の生命を守りながら、ビジネスを再開させていくかである。経済破綻を防ぐ為には、行政側がすぐに結果の出る検査キットの普及に全力を挙げ、ソーシャル・ディスタンス順守の下、感染を広める可能性が低いビジネスを再開させていく必要があるのだ。経済破綻は、そのまま国の崩壊に繋がり兼ねない、深刻な問題である。確かに州知事の政策は、経済破綻の驚異を深刻に受け止めるようには見受けられない。ところがデモに参加する一部の人々は「コロナウイルスはフェイクニュースだ」とし、ソーシャル・ディスタンスを順守せずに、ウィッティメア知事に対して、「反対者は単に、コロナウイルスの脅威を理解していない人々」と一蹴する機会を与えてしまっているのだ。両サイドが、自らの感じる驚異への取り組みに徹する一方、相手の感じる驚異を軽視した行動に出てしまっている。ところが、感染拡大防止にしてもにしても、経済崩壊阻止もどちらも最重要課題であり、一方を切り捨てる事はできないのだ。shttps://www.forbes.com/sites/brucejapsen/2020/04/16/by-june-abbott-labs-rapid-coronavirus-test-to-reach-general-population/
国を正常に戻す為には、「自動洗車サービスも芝刈りサービスも一切してはいけない」という狂気に似た主張と、「コロナウイルスはフェイク・ニュースだ」という狂気以外の、常識的人間同士による議論が必要となる。ところが両サイドは相手の愚かさを論う事だけに徹してしまっている。両サイドによる諍いの終結は見えず、多くの人々を疲労させてしまうだけでなく、もっと巨悪な嘘の暴露や、不正への捜査を延滞させるのだ。
私たちはコロナウイルスが中国のどこから来たのか、納得のいく説明すら得ていない。コウモリから人に感染したと言われながら、言われていた中国武漢のウエットマーケットにはコウモリは売られておらず、コロナウイルス患者第一号の人物もウエットマーケットには関連が無い。また初期の患者3分の一も、ウエットマーケットには全く関連していない。米国国防省のケーブルには2年前から外交官らが中国武漢2カ所のコロナウイルス研究所からウイルスが漏れ、世界的パンデミックを起こし兼ねない危険性を警告していたとあるが、中国の習近平はこの研究所への捜査そのものを禁止し、証拠の破棄を命じ、しかも研究者や医師らは行方不明となってしまった。問題とされている研究所がパンデミックの起源と結論付けるに足りる証拠は無いが、先にも述べた通り、中国政府が習近平の直々の命令によって、研究所に存在していた書類や調査書の破棄を命じたのだ。https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/04/14/state-department-cables-warned-safety-issues-wuhan-lab-studying-bat-coronaviruses/
そうこうするうちに、中国の公式アラブ語放送では、中東に向けて、コロナウイルスはアメリカ政府が作成し、世界に広めたというプロパガンダを流し始めている。https://www.memri.org/reports/chinas-official-arabic-language-tv-covid-19-does-not-appear-have-originated-china-evidence?fbclid=IwAR1RTga-jKDoYLWL51RK3HbEP0EAMtYwMBE0_gwG9famkHkiSLItxHw6khk こうした虚偽のプロパガンダは西側自由主義社会にとっては全く意味が無いが、WHOや国連のような、アラブ諸国やアフリカ諸国からの票にも重きが置かれる国際会議の場では、問題解決を遠のかせ、中国やロシアのような、圧制国家を利する為の役割を果たすだろう。
テドロス事務局長による台湾批判や中国擁護などで注目を浴びたが、実はWHOの不正の歴史は長い。トランプ氏がWHOを批判し、資金提供を中断させる事は当然なのだ。https://thedispatch.com/p/suspending-who-funding-should-be?fbclid=IwAR0_gjsmQlpw29JHNSQbS1FNjLreijE4IkEFNDKC4NgJ0yF-wh67jsFnauI しかしながら世界に知られる米国大統領の発言があまりにも幼稚で、しかもパンデミックを軽視したものであり、加えて左右ともの米国民が愚かな極論を繰り返す場合、中国政府の嘘やWHOの不正が暴かれる時に、誰が米国を信じてくれるだろう。
コロナウイルスの脅威は、決して軽視されるべきではない。しかしながら国民の行動に制限を設ける場合、その制限は最小に止められなければならない。その上で、生活に必要なビジネスだけではなく、感染を広げる可能性の少ない屋外のビジネスなども、徐々に再開させていくべきだろう。この為には、国民の方でも、信頼されるに相応しい、責任ある大人として行動する必要がある。