アメリカ地方都市と慰安婦像設置運動 (3)

クリス・クリスティーは、2016年の大統領予備選に共和党から立候補をしていたが、支持が集まらず、選挙から降りて、不動産王のドナルド・トランプ氏への支持へと乗り換えた。彼がトランプ氏支持へと乗り換えた背景には、同じ票田から支持を集めている、自分よりも若年のマルコ・ルビオ議員への感情的反発があると言われている。

 

クリスティー知事と言えば、共和党知事でありながら、2012年、ニュージャージー州がハリケーンに見舞われた際には、被災地を視察した共和党からの大統領選候補者であるミット・ロムニー氏を無視して、二期目の再選を狙うオバマ大統領を歓迎し、仲の良いツーショットで保守層を怒らせた事でも有名だ。

 

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また彼は、州の司法長官にイスラム教シャリア法の適用を求めるイスラム主義者を任命し、懸念する保守層を「狂っている」と切り捨てた事でも知られている。

彼はブライアン・スタックとの共闘にも見られるように、共和党議員や保守派よりも、民主党員との近い関係がある。

 

ブライアン・スタックが市長を務めるユニオンシティーに、慰安婦像や碑の設置の案を直接持ち込んだのは、ルシオ=フェルナンデスという人物である。フェルナンデスが一体どういった経路で慰安婦像や碑の設置に関心を持ったか、ユニオンシティーに韓国系の住民がいない事を考慮すれば、選挙の際の韓国票目当てでないだろう。

 

フェルナンデスは演劇団体を経営しており、『ハドソン=ファインアート=ファンデーション』という団体と協力して「COMFORT(慰安)」という劇を制作し、自ら出演している。余程思い入れがあるようだ。

フェルナンデスは彼の妻と共にユニオンシティーの市職員としての地位を得、彼自身は市議員である。ユニオンシティーが170万ドルの援助を州から受けている事は先に述べたが、その市がフェルナンデスの運営する『グレイス=シアター=ウォークショップ』と言う非営利の演劇団体に、6万3千ドルを超える寄付をしていた。

また、スタックは彼の元妻の経営する非営利デイケアーセンターに二年間のうちにおよそ46万ドルの寄付を行う事を許可している。

 

こういった行為が良識ある市民からの反発を招くのは当然で、実際、以前スタックの選挙キャンペーンに協力をしていたユニオンシティーの元警察副署長であるジョセフ・ブレイトラー氏をはじめ、多くの市民から訴えられている。

 

ただ、このように不正で知られている地方都市が、自らの不正を正す前に『慰安婦問題』を取り上げて、市民の良心に正義を訴えようとするのは何故だろう。

 

さてサンフランシスコと言えば、全米でも左翼の街として有名だが、中国共産党に直結する世界抗日運動の拠点でもある。この抗日記念館の敷地内に、慰安婦像を建てる話も挙がっているようだ。

館長に就任するのは、米カリフォルニア州在住の女性実業家フローレンス=ファンと、同じく中国系で世界抗日連合のイグナシウス・ディン。彼らによれば、記念館設置の目的は、日本に対する中国と米国の同盟の歴史を人々に思いださせる事にあるという。

 

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ファンは北京大学やカリフォルニアバークレー校などに数万ドル単位の寄付を行ってきたことでも知られ、ヒラリー・クリントンら民主党の大物との 親交もあるとされる。

また2014年1月以降、中国を何度も訪れ、「中国人民抗日戦争記念館」や、「南京大虐殺記 念館」を訪問している。

 

中国共産党にとって日米同盟は厄介だからだろう。

 

また、リーランド=イーの存在にも注意を払いたい。彼は世界抗日連合の指導者であるイグナシウス=ディンやアイリス=チャンとかかわりのある(あった)民主党の中国系カリフォルニア州議会議員である。

 

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1996年、当時サンフランシスコの教育委員会委員であった彼は、イグナシウス・ディンやアイリス・チャンと共に、地元サンフランシスコの公立学校教科書に、第二次世界大戦中の中国大陸に於ける日本軍による虐殺を記述して教えるように働きかけた人物である。

彼は2015年、麻薬密売組織から賄賂を受け取った代わりに政治的配慮をしたとされている。それだけでなく「モロ=イスラミック解放前線」とiうテロ組織の為に武器購入の便宜を図ろうとして、FBIの囮捜査官により逮捕をされた。このイスラム教過激組織はフィリピンの政情不安定によるイスラム化を目指し、誘拐や無辜の村民殺戮をしている事で知られ、各地で非常に恐れられている。

つまりイスラム過激派テロ組織に対して、中国系ではあるがカリフォルニア州議員が支援をしようとしていたのである。彼は2016年2月に懲役5年の有罪判決を受けた。

Democrat Leland Yee Sentenced to Five Years in Weapons Trafficking Case - Breitbart

 

ちなみに、橋下大阪市長の慰安婦に関する発言に対して強烈に反論をした事で有名なエミリー=ムラセは、彼が2009年にウーマン=オブ=ザ=イヤーとしてその栄誉を称えた人物である。

About – Emily Murase for San Francisco School Board 2014

 

ところで、世界抗日連合と言えば、グレンデール市の慰安婦像をめぐっても、在米日本人らが撤去を求める訴訟を起こした時、「提訴不当」 を訴える意見書を裁判所に提出したことが知られている。また、原告側が控訴をすると、続いて弁論趣意書を提出した。それは当事者ではないものの、訴訟の結果の影響することに興味がある事を彼らが法的に明らかにした事を意味する。

 

これは市の決定と共産主義組織の思惑が一致していることを意味しないだろうか。少なくとも、グレンデールに住む一般のアメリカ人はこの事を覚えておく必要があるのは確かだ。また、今まで取り上げてきた地方議員や慰安婦像設置運動の支持者たちは、クリス・クリスティー州知事を除き、すべて民主党議員(支持者)である事も、特筆すべきだろう。

 

ここで、もう一つ、慰安婦像がだれを引き付けているかも述べよう。

 

2014年、カリフォルニアの韓国人団体の広報を務めるフィリス=キムが、日本からの旅行者にグレンデールの慰安婦像を見物させ、説明をしていた。事前にその情報を得た私は、自分も外国からの観光客の恰好をして出掛け、傍に寄って様子を伺った。

 

日本からの観光客たちは慰安婦像を囲み「我々は安倍首相、日本政府に反対をしている」と主張しながら、キムに熱心に質問をしていた。慰安婦像と"平和憲法"と関連させてキムと会話する彼らが一体どういう団体なのか、不審に思い英語で直接話しかけてみた。

 

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彼らの話では、彼らは慰安婦像を見物する団体旅行の新聞広告を見て、日本各地から集まったグループであるらしい。そしてその新聞とは読売新聞でもなければ朝日新聞でもない、『しんぶん赤旗』であった。グループの一人が悪びれる事もなく教えてくれた。

 

「私たちは共産主義者です。」

 

ナチス礼賛者に対する程ではないが、一般のアメリカ人の共産主義に対する警戒感や拒否感は日本人のそれよりも遥かに大きく、「ちょっとした政治趣向の違い」では済まされないレベルだ。このような像を設置する事によって招いた観光客が共産党主義者である事をアメリカ人が知ったら、どんな反応をするだろう。

 

(4)へ続く