シリアの化学兵器はどこから来たのか

シリアのアサド政権が自国民に対して化学兵器を用いて虐殺を行なったことは、世界が認めている。これらの化学兵器は恐らく、イラク戦争が起こる前に、フセイン政権によりシリアに運ばれたものだ。

Inside the Ring: Syria, Iraq and weapons of mass destruction - Washington Times

2014年の秋、ニューヨーク・タイムズは「The Secret Casualties of Iraq’s Abandoned Chemical Weapons」とするイラクに遺棄された大量の化学兵器処理の為に、米軍関係者に多くの被害者が出ている事を報道した。これにより、イラク戦争のキッカケとなった大量破壊兵器の存在が再確認されるべきだったが、既に米国内には「イラクに大量破壊兵器は無かった」「イラク戦争は失敗だった」という見解が定着しており、オバマ大統領はイラク戦争を終わらせる事を自身功績として数えてあり、イラクやシリアにおける過激イスラム教テロ組織の台頭と共に、「実はイラク、シリアには未だ大量の化学兵器が遺棄されている」などと宣言すれば、これらの兵器が過激派の手に渡る危険が増す。

https://www.nytimes.com/interactive/2014/10/14/world/middleeast/us-casualties-of-iraq-chemical-weapons.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&version=Banner&module=span-ab-top-region&region=top-news&WT.nav=top-news&utm_source=huffingtonpost.com&utm_medium=referral&utm_campaign=pubexchange_article&_r=0

そもそもヒラリー・クリントン元国務長官の経歴の汚点となった『ベンガジ事件』は、イラク撤退の正当性を訴える為、イスラム教過激派組織の台頭等の脅威を軽視し、現地の情勢不安定を示唆する米大使館セキュリティー補充への要求を退け、「アルカイダは敗走している」と宣言した最中に起こっている。

New report claims al-Qaeda-Benghazi link known day after attack

イラクやシリアでの大量破壊兵器遺棄の事実も論じられないのも、イラク撤退の正当性を訴える延長線上にあるからだ。

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こうしたオバマ大統領の政治判断の是非は、勿論歴史が下すだろう。しかしながら、政権が民主党政権から共和党政権へと移行した後にも、トランプ大統領は『大量破壊兵器は無かった』という主張を繰り返している。トランプという人物は、自身の便宜の為にはどんな嘘や、矛盾する主張、はたまた陰謀説までも繰り返す事で有名である。であるからトランプ氏の発言をもって真実を知ろうとする人は、アメリカには殆どいない。しかしながら、彼がアメリカの大統領という立場から『大量破壊兵器は無かった」などと主張する時に、それがこれからの軍事政策や外交政策にもたらす影響は計り知れない。

トランプ氏が自身の都合の良いようにNATOを厄介者と繰り返したかと思うと、NATOを厄介者と呼んだのはNATOについて知らなかったからだと述べている。中国が通貨操作を行なっているとも繰り返していたが、習近平主席との直接会談の後には「中国は通貨操作を行なっていない」と180度の方向転換を行なった。それでも自分が間違っている事を認めたことは無い。イラク戦争に於けるブッシュ大統領やCIA機関等の情報が全て正しかったとは言わない。しかしながら、イラクからの撤退を優先させる為に実際にある脅威を無視し続けたオバマ政権の非は更に大きい。また、2014年の報道以降も『大量破壊兵器は無かった」と繰り返すトランプ大統領の厚顔無恥は、オバマ大統領を更に上回る。

Transcript of AP interview with Trump

 
イラクから、またシリアの至る所でサダム・フセイン政権から運ばれ、隠されたと見られる大量の化学兵器が見つかっている点は、疑いようのない事実である。これはオバマ政権の諜報機関ですら認めていた事実である。こうした事実すら認められない人々と、事実に関する議論をするつもりは無い。しかしながら、これからの米国の軍事戦略を考える為にも、イラクにおける大量破壊兵器の存在を認めた上で、イラク戦争の是非を考え直す事は必要だと思われる。

Are Syria's Chemical Weapons Iraq's Missing WMD? Obama's Director of Intelligence Thought So. | The Weekly Standard