核兵器保有国としての北朝鮮

ジョシュア・ポラックと言えば、「この人をおいて、北朝鮮について語ってはいけない」北東アジア地域の軍事情勢やミサイル拡散問題の専門家である。彼は米国が北朝鮮に対して先制攻撃を行なうか、否かの是非を、それぞれの利点と失点をあげて考えている点からも彼が専門家として誠実である事がわかる。

Skin in the Game: Why Worry about North Korean ICBMs?

彼の北朝鮮核開発に関する意見は、まずリンゼイ・グラハム上院議員のような強硬派による「今、北朝鮮を制止しなければ、北が核兵器所有国となった際には、北の軍事暴発を抑える為の被害は更に大きくなる」という意見も充分に理解している。また、北朝鮮との戦争となれば、米軍に多少の被害が出たとしても、米国まで届く遠距離ミサイルの発射実験が未だ成功を収めていない現状を考えて、米国本土が攻撃される可能性は、殆ど無いだろうと考えているようだ。この点は強調するところに差が出ても、殆どの軍事問題専門家が同意している。恐らく、米朝の戦争が今行なわれるとすれば、数週間以内に米国側の圧倒的勝利で終わるだろう。
 
しかしながら彼は、米国の同盟国である韓国と日本への多大な被害が、既に現段階で免れない点を重視し、『北が核兵器を所有する目的は、金体制の維持にある。金体制維持を目的とした北朝鮮の核兵器保有は、日韓の被る犠牲を引き換えにしても、我慢の出来ないものか』という疑問を投げ掛けている。この疑問は、リンゼイ・グラハム議員も認めている通り、「米国は必ず勝利する。しかし日本と韓国という同盟国、また貿易相手が被る被害は大きい」点に注目をしているのだ。これは日本国政府だけではなく、日本国民も真剣に考えなければならない問いではないだろうか。
 

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実際に、安倍政権はトランプ政権に対して、米国による北朝鮮への先制攻撃に対しての否定的見解を伝えている。
 
くり返すが、米朝の戦争は数週間以内に米国側の圧倒的勝利で終わると考えられている。勿論、中ロの出方は判らず、勃発的な事故や失敗によって、それまで予期しなかった結果をが生じる可能性はあるが、世界最貧国の北朝鮮が米国に対する戦争に勝利をするとは考えにくい。日本と韓国に必ず生じる北の軍事攻撃による被害に引き換えても、北朝鮮が核兵器保有国となる事は我慢がならないものだろうか。
 
ポラック氏の同僚、ジェフリー・ルイス氏は、国内に強制収容所を置き、国民を飢えさせ、世界一の人権侵害国である北朝鮮が核を保有し、金体制が続く事への道徳的不快感を述べつつ、それでも「日韓の犠牲を引き換えにしても、それは我慢が出来ない事か」、同様に問いかけている。
 
この二社選択は、日韓両国の国民の意識と、それに動かされる政府の姿勢次第ではないか。