キューバの独裁者、フィデル・カストロの死

キューバのフィデロ・カストロ議長が90歳の生涯を閉じました。

 
カストロ元議長は、20世紀で最も多くの殺人を犯した最も残忍な独裁者の一人です。彼の残忍さ、冷酷さと比較されるべき独裁者は、あまりいません。西側では一般的に、彼については「地獄というものがあるなら、カストロは、ヒトラーやスターリン、レーニンや毛沢東などと同じ場所にいるだろう」と呼ばれ、彼の死に際して、「数え切れない程多くの彼の犠牲者達のものと比べ、あまりにも簡単にやってき過ぎた。彼の死に際してさえ彼を称賛するような行為は、人道に対する真の敵対行為だ」「彼は、彼が何千、何万もの人々に対して行なったように、銃を構えた銃殺隊による一斉砲撃で殺されるべきではなかったか」とさえ言われています。
 
歴史家のヒュー・トーマス氏は、カストロ政権による反対者の処刑数を「1959年から1970年までの間におよそ5,000の政治犯処刑があったろう」と見積もり、ハワイ大学のルドルフ・ルメル教授(政治科学)は、1958年から1987年までに約4,000から33,000人が犠牲となったと推測しています。また『ブラック・ブック・オブ・コミュニズム』によれば、キューバ全体で15,000から17,000人が処刑されたとしています。1959年から1993年までの間に、キューバの現人口の10%に当たる1,200,000人が、小さなボートなどに乗ってアメリカに亡命しました。キューバから亡命したこれらの人々の中には、彼の実娘や実妹も含まれています。
 
処刑された『政治犯』の殆どは、前政権からの警察官、政治家、また役人らであり、彼らには正統的な裁判権が与えられていませんでした。アムネスティー・インターナショナルの抗議に対して、カストロ政権は「政府がこれらのテロリスト、犯罪者らを拷問し、罰しないならば、人民がこれらの売国奴たちを拷問し、殺害するだろう」と答えています。
 
またカストロ独裁政権は、次々と反対者や宗教者らを強制収容所に送り、拷問、生体実験、暴行を加えての尋問や、食料、衣料、衛生、医薬品らの供給を拒むと言った悪環境の中での強制労働につかせており、9歳以上であれば、子供の逮捕も行なっていました。
 
また、カストロ元議長が政権に就いた1959年後には、政治犯らに対する、精神病棟への強制入院も行なわれており、キューバの南東部サンティアゴ・デ・キューバにある「ギュスタヴォ・マキン病院」やハヴァナの精神病院では、筋弛緩剤や麻酔を使用しない、電気けいれん療法による拷問を、政治犯に対して行なっていた事が明らかになっています。
 
反体制派や宗教家らへの弾圧、国在追放、表現、言論、報道への検閲、集会の禁止や、富裕層の投獄など、毛沢東による「文化大革命」、金日成の「粛清」に等しい人権の侵害が行なわれ、共産主義国の例に倣い、豊かであったキューバの経済を崩壊させ、貧困国の一つとしました。中国やベトナムのような共産主義国家が資本主義を取り入れる中も、「社会主義、さもなければ死を!」というスローガンを抱え、恐怖政治を布いてきた独裁者です。
 

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カストロ政権圧政の下で命を落とした多くのキューバ人の犠牲を考えれば、彼の死は遅すぎたと言えますが、彼の死によって、キューバの人々に自由と機械への扉が開かれる事を願います。
 
2016年9月、カストロ元議長を訪問した安倍首相との会談で、両者は「核のない世界」という考えで一致をしましたが、明らかな反米主義であるカストロ元議長はともかく、そのような主張にアメリカが同意し、核兵器を放棄した場合、日本の安全保障は著しい危機に瀕します。

Abe, Fidel Castro agree to a world without nuclear weapons | The Japan Times

 
ロシアのプーチン大統領であっても、キューバのカストロ元議長であっても、彼らが自国民の人権を侵害し続けた、『人道に対する犯罪者』である事は、誤りようのない事実です。これら『人道に対する犯罪者』らによる『反米共闘』を視野に入れた「(アメリカは酷い国ですが)日本は素晴らしい国です」という甘言に惑わされて彼らを容認するならば、善悪の基本や原則に関係なく、全て『自分に対して何と言ってくれるか』を基準に外交を行なおうとするドナルド・トランプ氏の精神性と、全く同じだと言えないでしょうか。