プーチン政権下、暗殺されるジャーナリスト達
アンナ・ポリトコフスカヤは、チェチェンにおけるロシアの人権侵害について暴露する多くの本を書き、その中でプーチン大統領を独裁者であると批判しています。彼女はモスクワの自宅アパートメントのエレベーターで何者かに銃で撃たれ、殺されました。
彼女はその著書、「プーチンのロシア」の中で以下のように記しています。
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「なぜプーチンについて、ここまで書くようになったのか、 自分でも不思議に思います。 なぜ彼についての本を書くに至るほど、 彼を嫌うようになったのでしょう。私は彼の政敵ではなく、 ライバルでもありません。モスクワに住む一人の女性です。 正直に言えば、私は45歳になるモスクワ市民であり、 ソヴィエト連邦が最も醜悪であった1970年代から1980年代 を目撃しています。その時代には戻りたくないのです。」
と述べています。
殺害されたアンナ・ポリトコフスカヤの写真に花束を置くモスクワ市民
彼女の殺害について、ワシントン・ポストのアン・ アップルバウム記者は、
「地元のビジネスマンなどは、彼女を殺害する動機がありません。 けれど軍の将校や、警察、クレムリンにはあったようです。 地元のチンピラなどが彼女の暗殺の証拠消しに動いたとしても、 ポリトコフスカヤの暗殺は、 ロシアで行なわれている多くの暗殺がそうであるように、 法の裁きを恐れているようには思えません。
それぞれの写真の下に、それぞれの誕生日が記されてあり、空欄があります。そして、 意図するものは、その空欄には近い将来、 死亡年月日が記される予定であるのです。
と書いています。
プーチン政権下のロシアで、ジャーナリストや民主運動家、人権活動家らが、政府を批判する際に、命の危険に直面する事は真実であるようです。少し調べれば、ロシア当局によって暗殺されたジャーナリストや民主・人権活動家の長いリストがあり、現在もそのリストに付け加えられる名前があることがわかります。
List of journalists killed in Russia - Wikipedia, the free encyclopedia
私たち言論や報道の自由の保障されている民主主義法治国家に生きる人間にとって、同じ覚悟をもって政権批判しなければならないと言うつもりはありませんが、ロシア人民主運動家のゲイリー・カスパロフ氏が釘を刺したように、オバマ大統領にせよ、ヒラリー・クリントン候補が「強権独裁者」であるという主張は、本当の恐怖政治や独裁がどのようなものか知らないからこそできる、呑気な発言だと言えます。
私たちが身近に知る「政治家像」を通して、これらの恐怖政治が行なわれている国々を見ることは、余りにも危険です。
恐怖政治を行なう独裁者らの「笑顔」や「庶民的な人柄」などが強調され、その陰で彼らの政治目的の為に暗殺される多くの人々を忘れる事は、道徳的に許される事ではないと考えます。
監視カメラに映った、自宅エレベーター入口に入る直前のアンナ・ポリトコフスカヤと犯人と思われる人物