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ロシア: 民主活動家アレクセイ・ナヴァルニィー逮捕に見る、独裁者プーチンの焦り

ロシア政府内の腐敗を暴露し、『プーチンが最も恐れる男』と呼ばれ、ロシア民主化運動の指導的立場である弁護士のアレクセイ・ナヴァルニィが逮捕された。彼が主催した「反腐敗デモ」はロシア連邦内の90カ所以上の都市に広まり、各地では何千人もの人々が集まり、2011年から2012年の間に起こったデモ以来、最大規模の行進を行なっている。非政府組織OVD-Infoによれば、このデモの為にロシア内で逮捕された市民は約800人に上るとされているが、この数の確認は取れておらず、ロシア国営放送のタス通信がモスクワ警察の発表として計算した逮捕者は、およそ500人とされている。また、デモ隊の参加者の半数は20歳以下の未成年であり、クレムリンのプロパガンダ報道機関である『ロシア・トゥデイ』や『スプートニック』、『タス通信』などではなく、インターネットから情報を得る世代である事が伺われる。

Protesters Gather in 99 Cities Across Russia; Top Putin Critic Is Arrested - NYTimes.com

Russia: Mass Protest Against Government in Moscow | Time.com

От Петербурга до Владивостока. Всероссийская акция протеста в фотографиях — Meduza

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政府内の腐敗を暴露するナヴァルニィは、特にいくつもの豪邸、ヨット、ブドウ農園を有するディミトリ―・メドヴェージェフ首相に関する情報を公開し、デモ隊に合流しようと地下鉄からモスクワのプーシキン広場に向かう途中、ロシア警察によって逮捕された。
 
ナヴァルニィはこれまでにも何度か逮捕されており、不正を問う裁判で有罪判決を言い渡され、2度刑務所に送られてもいる。但しこれらの裁判については、反プーチンを掲げる多くの民主活動家に対する裁判がそうであるように、ヨーロッパ司法裁判所から「反対派を封じ込める為の違法裁判」と見做されている。ナヴァルニィ―の弟も2014年末にフランス企業から窃盗したとして有罪判決を受けたが、これについては被害者とされる会社自体が被害のない事を証言しており、ナヴァルニィ―は「私を封じ込める為に、私の家族を弾圧している」と述べている。

Kremlin critic Alexei Navalny given suspended sentence and brother jailed | World news | The Guardian

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  アレクセイ・ナヴァルニィー(右)と、収監される弟のオレグ・ナヴァルニィー(左)

そもそも、クレムリンがナヴァルニィー本人ではなく、弟のオレグ・ナヴァルニィ―を刑務所へ送った理由は、ナヴァルニィ―を刑務所に送り、クレムリンによる反対派弾圧への世界的関心の集まりを避けることにあった筈だ。ところが、今回ナヴァルニィ―本人の逮捕に踏み切った理由は、その他クレムリンで起こっている不可思議な殺人事件や更迭の数々から、プーチンの焦りや生き詰まりが背景にある事が伺える。

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         デモ参加者の半数は20歳以下の若者である。 

プーチン・ロシアが2016年度の米国大統領選挙に介入をしようとしたことは、既にFBIやCIA、その他の西側情報機関が認めている。ロシアは民主党システムだけではなく、共和党システムにもハッキングを行ない、民主党から得た情報だけをウィキリークスに流し、ウィキリークスはロシア・ハッキングから得た情報に多少の工作を加えて真偽混合してこれを流した。勿論、ウィキリークスが流出した情報は、真偽混合されているからと言って、米民主党はどれが真実でどれが嘘か明確にすることは出来ない。ある情報を否定しようとすれば、その他の情報にお墨付きを与えることになるからだ。
 
このように真偽混合されて流出された情報は、米国のメディアを通して一般化されたが、これにはトランプ大統領のアドバイザーであるスティーブ・バノンの経営する『ブレイト・バート誌』や、トランプが信頼する陰謀説論者として有名なアレックス・ジョーンズの『インフォ・ウォーズ』などの「アルトライト・メディア」が飛びつき、反ヒラリーの陰謀説をまことしやかに広めてきた。『ピザゲート』等、ありもしない幼児虐待のオカルト儀式などの陰謀説は、一部のトランプ支持者によって信じられ、それを発端とした発砲事件まで起きている。最近FBIは、『ブレイト・バート誌』と『インフォ・ウォーズ』を名指しして、これらメディアとクレムリンによる選挙を巡る情報戦略との間に、「何らかの協力関係があったか捜査するべきか検討している」と認めたが、それに関連してか、インフォ・ウォーズのアレックス・ジョーンズはピザ・ゲートを巡る報道に誤りがあった事を認め、関係者に謝罪をしている。

FBI Probing Breitbart, InfoWars In Russia Investigation | The Daily Caller

https://www.nytimes.com/2017/03/25/business/alex-jones-pizzagate-apology-comet-ping-pong.html?_r=0

 

直接的協力関係の有無は定かではないが、これらアルトライト・メディアによるヒラリー・クリントンへの誹謗中傷的報道が、元々はクレムリンに発している点は否めない。
 
さまざまな報道によれば、2016年の選挙期間中、トランプ陣営とクレムリンとの間に頻繁な連絡が為されていた事が判明している。FBIはトランプ政権への捜査が行なわれている事を公式に認めているが、こうしたロシア政府との繋がりやロシア政府によるアメリカ民主主義への介入が公けに取り沙汰されれば、いくらトランプ大統領のようなあからさまなプーチン礼賛者であっても、そうロシアへの経済制裁を解除することは出来ない。

https://www.nytimes.com/2017/02/14/us/politics/russia-intelligence-communications-trump.html

Trump aides were in constant touch with senior Russian officials during campaign - CNNPolitics.com

Updated Trump Russia election timeline FBI - Business Insider

ここに、プーチン大統領の長期的戦略の欠如が見て取れる。
諜報に詳しい、フリーランス・ジャーナリスト、マイケル・J・トッテンの分析によれば、元々プーチン大統領でさえ、トランプ勝利を期待してはいなかった。彼は民主党候補者であるヒラリー・クリントンが次期大統領となる事を期待して、その上で、米新政権への先制攻撃的妨害として行なっていたのだ。

Brace Yourself for a New Cold War | World Affairs Journal

 
ところがトランプが当選した事によって、ロシアとの繋がりが却って注目を浴び、問題視され、マイク・フリン安全保障顧問が解任する羽目となり、ジェフ・セッション司法長官まで選挙期間中にロシア大使と会見した事を隠蔽して証言した責任を問われ、新政権とクレムリンの繋がりを操作する委員会から外された。それだけではなく、ロシア政府との親密な関係を築いてきたポール・マナフォート選挙アドバイザーややカーター・ペイジ外交政策顧問、ロジャー・ストーンなどのトランプに近い人物に疑惑がかかり、トランプ政権とロシア政府による繋がりを解明する為の独立捜査機関の設置を必要と考える国民は約7割に上る。このような大多数の国民による反発を控え、議会が制裁解除を認める可能性は、幻となったヒラリー政権による解除の割合よりも低い。

Poll: Majority of Americans want independent commission to investigate Trump-Russia ties - POLITICO

しかも米国や西側の諜報機関に対する敬意の片鱗も見せず、指導者としての判断力に欠けるトランプ自身により、さまざまな情報が陰謀説と共にツイートされれば、FBIや英国など西側諜報機関としても反論をせざるを得ない。その過程で、更にロシアにとって隠しておきたい『陰謀』の情報がトランプに反対する内部関係者からも流出されるし、プーチンとすれば、苦労の割には見返りの無い介入であったと言えよう。

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  『反腐敗』のプラカードを掲げた自転車に乗っていた為に逮捕された18歳の少年

しかもプーチンにとって大きな懸念の種は、米新政権による制裁解除を期待していた国民の不満だ。
ロシア経済は、制裁が始まる以前より悪化していたが、ナショナリスト的野心から断行したクリミア侵攻とウクライナ違法併合によって西側からの経済制裁が発動され、現在は崩壊の寸前にある。国民の生活は貧困に陥っている中、ナヴァルニィーはプーチンの友人やロシア政府高官の腐敗暴露を続け、一般国民の政府に対する反感は高まっている。プーチン・ロシアに親しみを表明するトランプ政権が誕生すれば制裁はすぐに解除されると信じ込まされていたロシア国民も、これが起こりそうにない事に気付き始めている。制裁解除の為には、プーチンを排除する必要性が囁かれているのか、あるいはプーチン自身がそういった計画を懸念しているのだろう、ここ何か月かの間にプーチンとトランプ政権との間の関係を知る何人もの外交関係者や諜報機関高官、或いは側近らが暗殺や逮捕、更迭されている理由は、彼らが米国諜報機関に協力して、プーチン排除の為の情報を流出する懸念をプーチンが感じているからだろう。

Five months, eight prominent Russians dead - CNN.com

Unexpected deaths of six Russian diplomats in four months triggers conspiracy theories | The Independent

 

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ナヴァルニィーが担ってきた、長年に渡って一貫してきたロシア改革への活動形跡や指導力を見る限り、今回の逮捕でナヴァルニィーの決意を変えることは出来ない。脅しても、打たれても、こういった人々は信念を曲げはしない。彼を投獄しても、彼の英雄化に貢献するだけだろう。彼が殺されれば、西側からは更に強い批判を浴びる事となるし、国民の側にもナヴァルニィーの偉業を引き継ごうとする気運が高まるだけだ。ナヴァルニィーを乗せたバスの周りを、デモ参加者によって何台もの車が駐車され、警察による移送が阻まれていた。ナヴァルニィーは秘密裏に殺害されたジャーナリストとは違い、世界の目前で、ロシア当局により拘束され、人権を侵害されたのだ。

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プーチンという、冷酷な殺人者の行ないを許してはならない。夜半、自宅アパートのエレベーター内で射殺されたジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤの無念を忘れてはならない。ポリトコフスカヤが殺されたのは、プーチンの誕生日、10月7日である。
 
世界は、クレムリンのプロパガンダによって強調されるプーチンの『人気』に惑わされてはならない。プーチンが真に勇敢な指導者ならば、自らを批判するジャーナリストを数百人に渡って殺害する筈が無い。プーチンが真に国民の信頼や尊敬を得ているならば、ナヴァルニィーによる大統領選立候補を阻止する筈が無い。何千人にもわたるデモが、90を超えるロシアの各都市で発生する筈が無いのだ。

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プーチンは残虐で臆病な独裁者であり、ロシア国民の敵である。
声にならないロシア国民の叫びを無視し、独裁殺人者を容認する偽善は、いずれ必ず歴史が裁くだろう。

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ヘイトスピーチと「日本らしさ」の限界

最近私は、知日派のアメリカ人と議論を交わすことが多い。

勿論、アメリカ人と言っても様々な考えがあり、ナショナリストや保守派から始まって、左翼、リベラル派まであるのだが、一致しているのは、「日本の評判は、中韓の流すヘイトスピーチやプロパガンダではなく、現在の日本人の言動によって落とされている」という点だ。

アメリカ人の中には現在日本の政治事情に詳しい人もおり、一部『ネットウヨ』の主張を目にする事も多いようだが、自称人権派でなくても、人権に関する概念の育った環境で暮らした事のある人間にとって、「~人を殺せ」等というあからさまなへイトスピーチや、「韓国人を見たら泥棒を見たと思え」等の表現が、殆ど批判される事なく一部保守派の間で横行している現状は、日本在住の日本人が考えるよりも遥かに悪印象を与える。

あるアメリカ人は、ソーシャルメディアが発達した現在、フェイスブック上の議論によってファナティックな日本人のヘイトスピーチに接し、慰安婦問題において中国人学者の流すプロパガンダをすっかり信じてしまうようになった。彼の信じ込んだ誤解を解くには、こうしたヘイトスピーチの影響を過小評価したり、或いは「韓国人の方がもっと悪い」とファナティックな日本人ナショナリストを弁護する事ではなく、「こうしたヘイトスピーチがどれ程間違っているか」に同意する、普遍的な道徳心を示すことが先決となる。

 

こうした問題を考えていた矢先、桜井よしこ氏が2014年に書いた記事を目にした。

櫻井よしこ氏 ヘイトスピーチは日本人の誇りの欠如が原因│NEWSポストセブン

 

『最近、在日韓国人や在日朝鮮人に対するヘイトスピーチが問題になっています。残念ながら日本人としての誇りや道徳が欠如していることの表われだと思います。根拠なく日本に罵詈雑言を浴びせ続ける中国人や韓国人と同じことをするとしたら、彼らと同じレベルに落ちてしまうことを自覚すべきです。』

 

桜井氏は、一応ヘイトスピーチに反対をなさっているようだ

しかしながら、ヘイトスピーチに反対されるその理由は、「根拠なく日本に罵詈雑言を浴びせ続ける中国人や韓国人と同じことをするとしたら、彼らと同じレベルに落ちてしまう」と、さりげなく中国人、韓国人への差別意識を覗かせている。

在日韓国人や在日朝鮮人に対するヘイトスピーチを行なう人々にとっては、「中国人や韓国人と同じことをしている」と警告される事が、その行動を思いとどまらせるキッカケとなると考えられているのだろうか。たとえそうであっても、差別表現を含むヘイトスピーチを思いとどまらせる為に「あの人たちと同じになる」と差別を示唆するのでは、元も子も無い。

加えて、桜井氏によるヘイトスピーチへの対処法は、①「私たちが『日本らしさ』を持つ」ことと、②「外国から来た人にもそれを理解し、受け入れてもらうこと」にあるらしい。

①に関しては、「『日本らしさ』の根本とはいったい何でしょうか。日本が日本である所以、国柄の大もとになっているもの、それは皇室の存在です。王室を戴く国は世界に27ありますが、万世一系で悠久の歴史を保ち続けてきたのは日本の皇室だけです。皇室の歴史、それを支える宗教観や文化、暮らしのあり方、伝統を日本人自身があらためて認識できれば、そのことだけで私たちは大きな力の源泉を得られると思います。それが危うくなっている今、まず私たち自身が日本の歴史や日本国の成り立ちを学んで、本当の『日本らしさ』を身に付けることが大事でしょう。日本の国柄を守り、価値観を守り続けるために、日本人は学び続け、成長し続け、新し時代に応じて変わるべきところでは変わらなければならないのです。」と書かれている。

しかしながら、ヘイトスピーチを行なっている人々は、主に『日本の名誉』や『日本の誇りを取り戻す』ことを掲げている層の一部であり、そうした教育を幼稚園児のうちから徹底している筈の森友学園そのものが、中国や韓国の人々へのヘイトスピーチを行なっていたのではないだろうか。

桜井氏は「外国から来た人にもそれを理解し、受け入れてもらうことです。そうでなければ、外国人が増えていった時に日本が日本でなくなってしまう可能性があります」と書かれているが、外国人が理解しなければならない「それ」とは、その直前の段落で述べられている「皇室の歴史、それを支える宗教観や文化、暮らしのあり方、伝統」であり、「日本の国柄」または「価値観」を指すのが適当な解釈であるようだ。但し、ヘイトスピーチが行なわれる原因が「日本らしさの欠如」であり、日本らしさの欠如が「...を理解し、受け入れない外国人が増えること」にあるならば、結論的にヘイトスピーチの生じる非の一端は、外国人にあると言っているのに等しい。

実際には、ヘイトスピーチは排他的ナショナリストの産物であり、更に愛国心に立ち返るように諭しても、撤廃への効果は無い。却って正義を振りかざしている左翼やリベラル派の方が、少数派へのヘイトスピーチを無くそうと努力している。

何でも『日本らしさ』や『日本』に問題への解決があるかのような考え方は、完全な誤りだ。

 

もちろんの事、ヘイトスピーチやヘイトクライム、人種や国籍による差別は、日本だけの問題ではない。ある意味これは、多数派と少数派との確執を抱える国家に共通したユニバーサル的な問題なのだが、その解決法が「本来の国の姿に立ち返る」事である筈がない。アメリカでも差別意識が強いのは、リベラル派よりも保守派層であるし、ヨーロッパの例を見ても、極右になればなるほど排他的になる事がわかる。

伝統的保守派でありながら排他的ナショナリズムに陥らず、ヘイトスピーチや差別から距離を置く人々は、絶対的、或いは『普遍的な善悪の基準』を原則としている人々だ。

一部右派の間に見られるヘイトスピーチを撤廃する為には、「中国人や韓国人と同じことはしたくない」と自分に言って聞かせることや「日本らしさ」に没頭する事でもない。愛国や日本らしさなどといった『愛国無罪論』によってヘイトを行なうような人々には、彼らの誇りに訴えるよりも、普遍的な道徳心の欠如を指摘する方が先だろう。

 

因みに思い出していただければ、普遍的な人権論を日本独自の考え方、日本らしさに置き換えようとする論理こそが、普段は日本の憲法改正に賛成をするような米国保守派メディアをして、自民党憲法改正論に懸念を抱かせる根拠となっていた筈だ。

ナショナル・レビュー誌の書く『ファシズムに逆戻りする日本』 - HKennedyの見た世界

 

「日本らしさ」という「特別な日本論」に、他者を騙せるほどの魔法の力は無い。普遍的な人権論や道徳心を「西洋的な考え」を否定せずに、その重要性に立ち返る事も必要ではないだろうか。

 

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         愛国教育で有名な森友幼稚園の父兄に宛てられた手紙

 

日本政府によるグレンデール慰安婦像撤去裁判への意見書提出の問題

カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像撤去を巡る裁判が、グレンデール近郊に住む日本人によって起こされたのは記憶に久しい。この裁判は現地の裁判所で一審、二審とも原告側の訴えが退けられているが、この判決を受け、原告側は先月、連邦最高裁判所に上告をした。

米国グレンデール市慰安婦像訴訟 日本国政府の意見書提出 | 外務省

 

こうした原告側の上告を受け、日本政府は、連邦最高裁判所に対し、「像の設置はアメリカ政府も支持する日韓合意の精神に反する」などとして、上告を認めて審理を行なうよう求める意見書を提出した。

 

また日本政府は、「像の設置は、国際社会で互いに非難や批判をすべきではないとした合意の精神にも反する」と意見書提出の正当性を訴えている。

 

外務省は「これまでもあらゆる場面で政府の立場や取り組みを説明しており、今回の意見書もその一環だ」と説明しているが、日本政府は、こうした行動が、米国をはじめ国際社会にどのように受け取られるかを、全く考慮していないのではないか。

 

まず、こうした日本政府の行動は、日本政府の立場や取り組みを説明しているものとは映らない。その動機が慰安婦像撤去に向けた意思表明であってもなくても、こうした意見書の提出は、日本政府による司法への介入、ひどい場合では外国権力による弾圧だと米国側に受け取られるだけだ。

 

三権分立の徹底している民主主義国家において、外国政府が第三者として司法に対して立場を示し、市民の起こした裁判の上告を求めるように要求をする事は、普通あり得ない。こうした行動が通常あり得ないことを認識してか、日本のメディアは『異例』という表現をするが、この『異例』は、米国にとっては呆れるばかりの『非常識』なのだ。

 

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                 米国連邦最高裁判所

地元に住む日本人の起こした裁判そのものについて、裁判を起こす権利が二審判決で認められた点を踏まえ、原告側の主張や目的に同意するかしないかは別として、彼らが裁判を起こす権利がある事は認める。しかし、国民の行動と政府の起こす行動では意味が全く違う。

 

一連の日本政府の介入が、何故米国では権力による不当な介入と受け取られるかを説明しよう。

 

欧米社会では、政府は国民の権利を剥奪し得る権力として見做されている。また実際、強権を振るい、自国民の権利や自由を取り上げ、弾圧する国々が世界にある事を踏まえれば、こうした見方も一概に誤っているとは言えない。特に保守派の間では出来るだけ国民の自由や権利、活動に介入しない「小さい政府」が望ましいとされ、リベラル派の間では保守派に比較して、やや「大きな政府」を主張するが、その目的は「国民の自由や権利を更に拡大する為にある」と考えられ、いずれにせよ国民の自由と権利に関しては介入しない国家が求められている。権利の侵害や自由を拘束される事を嫌う気質がある英米では特に、国民は国の介入を拒絶する。自由と引き換えに、自由の責任を自分で負う覚悟も持たなければならない社会なのだ。

 

対して日本は、政府が国民の必要を満たす国家である。しばし誤解されるが、実際の日本は『全体主義国家』ではなく、『Nanny State』と呼ばれる方が相応しいだろう。これは、乳母が幼児の必要をすべて満たすように、国家が国民の必要を満たすシステムを指す。勿論日本では、しばし『全体主義国家』の『専制君主』がするように、国が国民に対して威圧や暴力を使ったことは皆無と言って良く、古い時代からかなりの法治国家でもあった。しかし国民は危険を避ける傾向があり、自らの責任を負うこともしない。日本人の多くの投資や勤労が無駄になるのは、その為である。勤勉な努力に相応する個人の成功も僅少だが、比較的安定をした社会ではある。親が子供の責任を負うように、リスクは政府が負ってくれるし、外交から内政まで、他国では介入しないような国民の為の諸問題まで、政府が介入する事を期待されているのである。

 

であるから日本人の間では、「政府は何をしている」「外務省は何をしているのか」という声がしばしあがる。これは英米では殆ど上がらない声である。まさに「国があなたの為に何が出来るか」を問う国民気質ではないからだ。

 

こうした文化的違いを念頭に、連邦最高裁判所への意見書を提出した日本政府の『外交』を考える前に、この慰安婦像を巡る裁判と米国司法制度について、簡単に纏めてみる。

 

まずこの裁判の一審では、グレンデール市が連邦政府に代わって外交を行なう事は憲法違法であるという原告の訴えそのものが棄却され、上告も二度却下されている。同じ裁判を、再び繰り返し審理してはならないという『一事不再審理原則』によって、連邦最高裁判所がこれを取り上げるとすれば、控訴判の手続きに不備があった場合である。そして、これが慰安婦像を巡る裁判である事をわきに置いて落ち着いて考えれば、一度訴えが棄却され、更に二度上告が却下された裁判に、手続きの不備があったとして、連邦最高裁判所で取り上げられるとは、常識的に到底考えられない。

 

原告側は、連邦最高裁判所がこの訴えを取り上げるか否か、あるいは原告側の主張を認めるかどうかを「米国の裁判所がどれだけ公正に法律の規則に従って判断するかのモデルケースになる」としているが、もしそうであるならば尚更、「外国政府からの要請(圧力)によって、米国の司法が動いた」と見られる行動を日本政府が取った事は、決定的な誤りである。

 

日本という外国政府による口出しが、米国司法に影響を与えることは勿論絶対にない。もし司法が、外部からの圧力によって特別処置を取るとすれば、それは法治国家ではない。法治国家としての米国司法の威信にかけても、こうした「要請」や「意見書」は、無視されるだろう。

 

勿論こうした日本政府の行動に影響がない訳ではないが、メディアや反対派は日本政府による司法への介入を厳しく咎め、現在の日本に対する誤解を広める助けとなるだけだ。

 

意見書提出にせよ、在韓大使を召還にせよ、日本政府とすれば、韓国側民間人の行動に怒りを感じる日本国民への理解や対処のつもりかもしれない。しかしそれならば、2014年から2015年にかけて、産経新聞の加藤記者が韓国政府によって自宅軟禁処分を受けた際に、日本政府が大使召還を決断しなかった理由は何か。大使召還という厳しい外交措置を取りたかったとして、最もそれに相応しく、国際的に理解を得られた機会は、加藤記者の人権が韓国政府によって侵害された際だ。あの時大使召還をしていても、日本の主張を支持せず、韓国政府を糾弾しなかった民主主義国家は無かっただろう。

 

政府は、国民の感情よりも、国民の人権や権利や報道の自由を守るべきではないか。

 

自国民の人権や報道の権利が、外国政府によって何か月に渡って侵害されていた際に何もせず、外国の民間が設置したただの像の為に異例な強硬手段を取るところに、日本政府が気にかけているのは、国民の権利や自由ではなく感情であり、名誉といった実態の無いものである事が伝わる。

 

安倍政権が「ナショナリスト」による政権だという外国の味方が間違っているならば、なぜそういった誤解を受けるのか、自身の行動を振り返るべきだ。

歴史問題と心の癒し

 
最近の事だが、ホロコースト否認者として有名な英国の歴史家、デイビッド・アーヴィングの起こした裁判を扱った『The Denial』という映画を鑑賞した。これはアーヴィングが、自分自身を「反ユダヤ主義であり、歴史の事実を歪曲している嘘つき」と呼んだアメリカの学者デボラ・リップスタッドを名誉棄損で訴えた裁判をもとに作られた映画だが、非常に興味深いやり取りが、デボラと彼女の弁護士との間で行なわれる。

Irving v Penguin Books Ltd - Wikipedia

 

ユダヤ人に対する民族浄化を目的としたホロコーストがまぎれもない歴史の事実である事を法廷で証明する為に、デボラはホロコースト生存者を証人として招こうと提案する。これは「生存者の意見を全く聞かずに、ホロコーストの有無が法廷で議論される事は耐えられない」とする生存者の願いを受けての事だが、これをデボラの弁護士は一蹴するのだ。
 
「生存者の証言は不正確なものだ。本来はドアが右側についていたものを、彼らはドアは左側についていたと証言する。否認者らは、こういった小さな矛盾をついて、生存者としての彼らの証言の信憑性を否定するのがパターンだ。彼らの通り抜けてきた苦難は想像を絶するが、彼らの苦難の記憶は否認者らの攻撃材料となるべきではない。法廷は彼らの魂の癒しの場ではないのだ。彼らの必要としているのはセラピー(カウンセリング)であって、法廷での争いではない。」
 
目撃者や被害者の記憶が不正確である事は、エリザベス・ロフタス博士も書かれている。

Creating False Memories

The fiction of memory: Elizabeth Loftus at TEDGlobal 2013 | TED Blog

 

「記憶というものは、多くの人々が考えるような、録画装置のように機能するものではない。何十年に渡る研究の結果が教えているのは、記憶は作られ、また再建されるのだ。それは、ウィキペディアのように、自分も他人も、行って変える事ができるのだ。」
 
韓国人元慰安婦たちの記憶の不正確さも、作られ、作り替えられる部分が多くあるからだろう。活動家らの期待に応えるかのように、元慰安婦たちがより過激な『体験談』を提供する場合もあるかもしれない。しかし記憶の塗り替えは、元慰安婦たちだけでなく、戦争の体験者やトラウマとなるような体験の生存者には頻繁に見られる傾向である。こうした生存者や被害者が訴えているのは自身の中の傷であり、悲惨な体験から来る痛みなのだ。
 

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そうした面を踏まえ、政治活動家や一部の学者らは、彼らの痛みに配慮した形で、彼らの証言の信憑性を疑うことなく「歴史の事実」として遺そうとする。こうした極端な「歴史の記憶」に対抗する為に、もう一方には、ホロコースト否認論者と同じように、小さな矛盾や記憶の不正確さをついて「すべてがでっち上げ」であり「悲惨なことは何も無かった」かのように反論を試みる政治活動家や一部学者が控えている。
 
しかしながら、生存者や被害者らの証言の矛盾をついて、彼らが意図的に嘘をついているかのように弁証する試みは、証言というものがどんなものだかを知る研究者らを説得する事が出来ないばかりか、大多数の人々を説得する事も出来ない。一般の人々からすれば、エスカレートする話の全てが信じられないにしても、何らかの悲惨な体験が被害者に起きた事は間違いないと思われ、やはり心情的に、実際に苦難を体験したと思われる側により同情の念を感じるたくなるのだろう。
 
ホロコースト生存者の証言が例え不正確にドアの位置を記憶していても、ホロコーストの有無そのものを争う議論に説得力が無いのと同様だからだ。
 
であるからこそ、歴史の真実を知る為には、政治的意図を持たない歴史家による、客観的な姿勢による研究が重要なのだ。歴史の真実への研究は、生存者による悲劇的な体験談よりも物的証拠を重視する。こうした研究は、『被害者』の証言を絶対視する事が無い代わりに、否定論者にとっても都合が悪い情報も容赦なく提供する。いずれの立場の心情の癒しの為にも学問は存在していないのだ。
 
プロパガンダに対抗する為には、被害者の心情に対して無慈悲と思えるほど客観的な姿勢を保ち、物的証拠によって事実関係を調査する歴史家の研究に頼るしかない。しかし同時に、こうした客観的研究は、プロパガンダに対抗する為に、真逆のプロパガンダを広めたい否認論の政治活動にとっても不都合である事を覚悟するべきだ。
 
私は「被害者」の"心の癒し"の為に、歴史研究が政治化される事には反対している。しかしながら、歴史研究が「否認論者」の"自分探しの旅"の為に政治化される事にも反対する。誠実な歴史家として欧米からは高く評価されている秦郁彦氏は、歴史論争の難しさに関して、「多くの人々が歴史問題を名誉の問題と混同している為、冷静な議論がなかなか出来ない」と嘆いておられた。秦氏の慰安婦問題への研究は高く評価されているが、同じ姿勢で研究をされた南京事件への研究に対する評価は、歴史問題を名誉問題として捉えるナショナリストの間では頗る低い。評価が低いだけではなく、秦氏の研究そのものが売国行為であるかのような怒りさえ口にする人々さえいる。それは秦氏の慰安婦に関する研究がナショナリストらの政治目的には都合が良いが、南京否定論者の政治目的にとっては都合が悪いからだろう。
 
しかしながら、歴史に『名誉』や『都合』は関係が無いのだ。「先人の名誉を守る為」「日本に着せられた汚名をはらす為」という姿勢では、都合の良い情報を選り好みした「ファンタジー史観」に浸るだけで、他者に対する説得力は皆無だ。冷静に考えれば、他者に対する説得力が皆無である限り、「日本の立場の弁護」が出来る可能性は当然皆無である。もし日本が、自分たちの極論の与えてきた影響を直視するような大人の国家であるならば、戦略の誤りには当然気付き、方向転換をしていただろう。しかし日本は、国家が国民の感情的必要を含め全ての責任を負う「Nanny State(ナニー国家)」と揶揄される通り、愚行の責任を政府に押し付け、個人が負うことはない国なのだ。
 
こうした幼稚な思い違いは、勿論日本人ナショナリストに限った事ではない。韓国人活動家にしても、本当に元慰安婦たちの「名誉回復」や「心の癒し」を求めるならば、80歳を過ぎた老婆を世界中引きずり回し、70年前の恨みや憎しみ、悲しみに浸る生活を強要するべきではないのだ。
 
高齢の元慰安婦たちの心の癒しを本当に求めるならば、日本軍に性サービスを行なっていた過去を恥としなくて良い社会環境を整えるべきだ。その際には、親日であった事が売国行為であるかのような反日社会は、改められる必要があるだろう。元慰安婦たち以上に和解のハードルを高くする韓国人活動家らは、自らの「慰安婦ビジネス」の為に問題を拗らせているという印象を与える。
 
また日本人ナショナリストらは、長い日本の歴史上の一時的政策や行動への批判を、自らの全人格への否定でもあるかのように受け取るべきではない。一時の政府の行動や政策に関する批判ならば、今日も普通に行なわれている筈だ。戦時中の日本政府の政策や軍事行動への批判する事は、村山元首相や鳩山元首相、また安倍現首相への批判が、日本の名誉を汚した事にはならないのと同様である。歴史の紐を解けば、一時の政策や行動に評価するべき点があるのと同時に、批判すべき点が見つかるのはどの国にとっても自然な事であり、日本もそれを免れない。
 
実質的な癒しや名誉回復が双方に起こらない理由は、実は双方のナショナリストらが歴史や政治問題を、自らのアイデンティティーの延長線上に見出している点に尽きるだろう。
 
 

 

ボリス・ネムツォフ故ロシア副首相の死を悼むロシア国民の無言の抵抗

プーチン・ロシア
ロシアの副首相ボリス・ネムツォフが、深夜12時近く、モスクワのボリショイ・モスクワレツキー橋を渡っている最中、背後からの銃撃による4弾発を頭や胴体に受けその場で即死したのは2年前の2015年2月27日の事である。プーチンによる恐怖政治や同僚への迫害を批判し、ウクライナ侵攻に反対する平和行進を提案したその数時間後、彼は帰らぬ人となってしまった。55歳の若さだった。モスクワでは何千人もの人々がロシア国旗を掲げて、花束やろうそく、写真を持ち寄り、ネムツォフの死を悼んで、無言の反抗を行なっている。日中ロシア当局は、花束などを「治安への妨害」として除去してしまったが、日が暮れると人々はまた花束等を持ち寄り、ネムツォフの死を悼み、プーチン政権への怒りとロシア民主化の儚い希望を表している。

https://www.nytimes.com/2015/03/03/opinion/the-brilliant-boris-nemtsov-a-reformer-who-never-backed-down.html?_r=0

Boris Nemtsov: Moscow state workers demolish memorial to slain Russian opposition leader | The Independent

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        故ネムツォフ副首相の死を悼むモスクワ市民による花束

ネムツォフが暗殺される直前の2月10日、彼は「彼がいつかプーチン大統領に暗殺されるのではないか」と87歳になる彼の母親が憂慮している事を書いている。彼の母親は同様に、プーチン大統領による、ミハイル・ホドルコフスキーやアレクセイ・ナヴァルニーの暗殺も心配していると書かれているから、こういった憂慮が杞憂ではない事がわかる。

Boris Nemtsov - Wikipedia

ロシア一のビジネスマンであり、プーチン対抗候補者とも言われていたミハイル・ホドルコフスキーは、ロシア政府によって賄賂や脱税への冤罪を着せられた後、逮捕、禁固9年の実刑判決を言い渡され、プーチンに対抗して選挙に立候補する資格を奪われている。欧州人権委員会は、逮捕、一連の裁判や収監中に、彼に対する重大な人権侵害があったとして、ホドルコフスキーに対してロシア政府に2万4500ユーロの支払いを命じているが、刑期を終え釈放後の現在ホドルコフスキーはスイスに亡命している。

Mikhail Khodorkovsky - Wikipedia

プーチン大統領が最も恐れる男と言われる、弁護士であり、民主化活動家であるアレクセイ・ナヴァルニーに至っては、ロシア政府による被害者のいない『窃盗』の言い掛かりで実弟が刑務所に送られ、自身も軟禁状態にある。勿論、ロシア政府によってありもしない不正が言い立てられ、プーチンに対抗して立候補する権利を剥奪されてしまった。プーチンは「ナヴァルニーなど取るに足らない男だ」と豪言しているのだが、だったら不正をでっち上げる事なく、ナヴァルニーの被選挙権を剥奪する必要など無い筈だ。

Alexei Navalny - Wikipedia

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        プーチンが最も恐れる男と呼ばれる民主運動家のアレクセイ・ナヴァルニィー

プーチンによる反対者やジャーナリストへの迫害、暗殺などを書く度に、「あれだけ支持率の高いプーチン大統領が反対派を殺害する訳がない」などという意見を耳にする。支持率の高さが圧制や反対者への迫害が無い証拠ならば、トルコの残虐な独裁者、エルドアン大統領も反対派を弾圧していないと言うのだろうか。トルコよりも、もっと日本人には身近な話題かもしれない、北朝鮮の金正恩などの支持率などは100%を超える場合もあるようだから、彼こそ全国民の支持を受ける偉大な指導者ということになる。
 
こういった高支持率を背景に、「弾圧などある筈がない」と主張する発言は、「投票しなければ罰せられる」という恐怖感が行き渡る国での選挙というものを、恐らく理解していないからだそろう。
 
ロシア政府による暗殺や殺害には、何種類かある。
 
ボリス・ネムツォフ故副首相の暗殺のように、プーチン大統領の政敵やジャーナリストなどの批判者が暗殺される場合。またもう一つは、プーチン政権初期に、クレムリン政権高官や治安部高官が突然謎の死を遂げ足り、暗殺される場合だ。初期に突然の不審死を遂げた高官で最も有名な事件は、KGBのアナトリー・トロフィモフ将軍の殺害だと言える。ただ最近になり、こういった暗殺事件が再発し、短期間に10件ほどの外交関係者、治安部高官の暗殺が続いている。
ボリス・ネムツォフ故副首相の暗殺に関しては、ネムツォフ氏を非常に憎んでいた、ラムザン・カディロフ、チェチェン共和国大統領の仕業である事が、ほぼ間違いないだろうと言われている。ネムツォフ故副首相の暗殺に関しては、プーチンは事前に知らされていなかった可能性すらあるが、プーチンもカディロフを反対する事は決して無い。カディロフは、誰でも自由に殺害、暗殺できる力を有し、実際に多くの人々を殺害している。

Ramzan Kadyrov - Wikipedia

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             故ボリス・ネムツォフ副首相の暗殺に抗議するモスクワ市民

カディロフとプーチンとの関係は、北朝鮮と中国の関係と似ている。カディロフは腐敗した強権専制君主であり、多くの殺害を侵してきている。但し彼は、自分への批判に対して非常に繊細であり、批判者に対しては脅迫し、あるいは暗殺の実行者を送っている。チェチェンからの迫害を逃れた亡命者によれば、カディロフは自分に批判的なチェチェン国民を誘拐し、拷問を加え、殺害し、ロシアにいる人々まで刑事免責を利用して暗殺していると証言されたが、この亡命者も殺されてしまった。権威のあるロシア治安局高官でさえカディロフを警戒しているが、プーチンがカディロフを必要とし、メダルを与え続けているため、誰も彼を排除する事が出来ない。
プーチンがカディロフの暴走を止める事は、中国が北朝鮮の暴走を止めるようなものだろう。第一に、プーチンは、人々を恐怖に陥れるカディロフの残忍さや暴政を利用している。プーチンを公けに批判しても、プーチン本人が脅迫めいたことを語る事はない。プーチンの代わりに、「このような人間は、厳しい教訓が教えられるべきだ」等の脅迫をするのが、カディロフだ。
 
実際に彼は、何人ものプーチン批判者を暗殺し他と言われている。自身の手を直接汚す必要が無い為、カディロフはプーチンにとって都合が良い。カディロフはチェチェンを恐怖でもって支配し、絶えずどこかで戦闘があるものの、比較的に安定した政権を保っている。カディロフは、プーチンが直接関連付けられたくないような、最も残酷で野蛮な方法を使って都合の悪い人々を拷問する為、プーチンはカディロフの与える恐怖の有効性を評価し、プーチンが彼を手放すことはない。勿論、時としてカディロフの過激さを不快に思う時もあるだろうが、カディロフの与える恐怖感こそが、プーチンの独裁を安定させているからだ。

 

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     アパートのエレベーターで射殺されたジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ

私は、自由な立場にあるものとして、厳しくプーチンを批判する。命の危険を侵してこれらを主張してきたロシアのジャーナリストや民主活動家らに比べれば、私の批判など何でもないだろう。
 
ハッキリと述べるが、プーチンは大量殺人者である。プーチンが権力の座についたのは、そもそも300人に及ぶ自国民を意図的に犠牲にし、カティロフ以前のチェチェン共和国の犯行とした『アパートメント爆破事件』が背景にある。彼はチェチェンへの憎しみを煽り、第二次チェチェン戦争の指揮をとる事で、強い指導者を演出し、国民の支持を集めた。自身の権力欲の為には300人の自国民の犠牲も厭わない、KGB体質の典型である。
 
私はロシア人に反対をしているのではない。ロシア人がアメリカや西側、民主主義国家、あるいは人道への敵なのではない。プーチンがロシアの敵であり、アメリカや西側、民主義国家、また人道への敵なのだ。ロシア人の敵はプーチンである。
 
「どのようにロシアとの協調を図るべきか」といった議論が、西側諸国では語られる。しかしなぜ、プーチン・ロシアは「どのように西側との協調を図るか」考えなくて良いのだろう。平和共存や共存の道を探らなければならないのは、プーチン・ロシアの方だ。西側の責務は、プーチン・ロシアに対して人道への原則を示し、それを変えずに、プーチン後のロシアを迎える用意のある事を、示すより他はない。
 
 

『植民地支配』と『併合』の違いについての誤解

日本が韓国を『植民地支配』したか、或いは『併合』したのか、これだけの議論でもずいぶん誤解がある。『植民地支配』が住民にとって残酷な一方的搾取であり、『併合』が軍による侵攻と関係の無い平和的な合併であるかのような誤解は、無知を基にしているのではないだろうか。特に植民地支配が搾取の一方であり、住民の奴隷化を意味するかのような誤解は、あまりにも事実とかけ離れている。
 
実は、『植民地支配』と『併合統治』の違いは、形式以外殆どない。
『併合』における一応の最終的目票は、併合された土地の住民の権利を本国住民の権利と同等にする事にあり、併合された土地の『独立』を約束するものではない。原則的に、併合された土地の住民は、本国の住民の所持する権利と同等の権利を与えられると約束されるが、多くの場合はこれに即してはいない。
 
例えばアメリカがフィリピンを植民地化した時、将来的なフィリピンの独立を約束していたし、一方日本が朝鮮住民に対して約束していたのは、日本本土の住民と同等の権利の将来的付与だ。
 
因みに日本が朝鮮半島を『併合』した際に、朝鮮人には日本人と同等の権利が完全には与えられていなかった。朝鮮総督は、歴代の陸海軍大将現役や予備役が歴任している。朝鮮総督府の枢要なポストは日本人が握り、韓国人は下位のポストを占めていた。こういった日本統治の形に最も近い支配は、実はイギリスによるインド植民地政策であるし、日本はイギリスの統治を真似て朝鮮半島を支配しようとしていたのだ。
 
選挙権についても書こう。
日本本土は、1889年に大日本帝国憲法及び衆議院議員選挙法が公布され、「一定以上の財産」を持つ「25歳以上の男子」に選挙権が与えられ、また改正を経て、1925年に「25歳以上の男子全員」に選挙権が与えられているが、朝鮮半島の住民に対して国政選挙権が付与されたのは1945年になってからだ。4月3日、改正衆議院選挙法と改正貴族院令が発令されたが、戦局の悪化の為、朝鮮人の貴族院議員は日本に渡航し貴族院に登院する事ができなかった。また衆議院選挙は1946年に実施される筈であったから、1910年4月から1945年9月までの日本統治時代に、朝鮮半島の住民にとって実質的な選挙権が与えられた記憶が無いのは仕方がない。

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『併合』が意味するのは、それが本土の一部として付加される事だけである。併合された土地は住民がいない場合もある。それが軍事侵攻によるか否かには関係が無いが、勿論、多くの併合された土地には住民が住んでおり、ロシアによるクリミア併合では軍事侵攻によっての併合がなされており、併合が平和的統一を意味する事はない。
 
同様に、植民地支配が意味するのは、『天然資源などの搾取』や『現地住民の奴隷化』などは全く関係ない。『植民地』とは、植民地化した土地に共同体をつくる為に「本国」から入植者を送り作られたものだ。事実、アメリカはイギリスの植民地であったが、アメリカ人がイギリスの奴隷であったことは無いし、アメリカがイギリスから天然資源を搾取された事実もない。
 
因みに植民の歴史は古く、古代ギリシャ帝国にまで遡る。古代ギリシャでは、ギリシャ人らは自分の国から遠い土地に都市を作り、この新しい土地を植民地と呼び、入植者たちを送った。植民地に対する近代的な考えが発達し、征服という形や、全く関係のない住民を支配する要素が生まれたのは、19世紀に入ってのことだ。しかしそれでも、資源の搾取が植民地支配の目的であるかのような考えは、無知やマルクス主義者が流したプロパガンダがもととなっているようだ。
 
南米の殆どの植民地は、以下のように作られている。まず第一に個人の入植者らが、働ける土地や金、貿易、或いは布教の為に遠い土地に移住する。そして入植地を建設する。もしそこで先住民やその他の国からの入植者との間に諍いが起きた場合には、本国からの支援を要求する。最後に、これらの『本国』は、しばし消極的に、これらの地に軍や総督を派遣し、植民地が出来る。大抵時間が経つに従って、入植者たちは『本国』から送られてくる総督による支配に嫌気がさし、反逆を起こす。そして独立を勝ち取る。本質的に、これがラテン・アメリカ諸国が作られた経過である。
 
第一にエルナン・コルテスやフランシスコ・ピサロのような探検家は、個人としてすでに国が築かれていた南米大陸を征服した。この後、スペイン王はスペイン軍を入植地に派遣するよう説得されている。ピサロのような初期の入植者らの何人かはスペイン政府に反対した為、投獄や処刑の憂き目に遭っている。これらの植民地はスペインからの征服者によって統治され、多くの人々がスペインから渡ってきた。これらのスペイン人は先住民と雑婚し、新たな混血の人種となった。最終的には彼らはスペインに抵抗し、『本国』相手に激しい戦いを戦った。ブラジルやメキシコは一時期皇帝を戴き、新たな帝国を築いている。南米の国々は全て、スペインかポルトガルの植民地であったし、人種もスペイン人かポルトガル人の血と原住民と連れてこられた黒人の血が混ざっている。スペイン人やポルトガル人は雑婚をしていったのだから、原住民を奴隷化した事実はない。勿論、探検家らはこれらの新世界に金が多くあることを期待して出かけて行っただろうが、『搾取』とも全く関係が無い。
 
因みに、アメリカの先住民が新たな入植者によって虐殺され、絶滅したかのような誤解があるが、これは事実を基にしていない。勿論アメリカ先住民が入植者との戦いで殺害された事実はあるが、まず先住民同士の部族間の戦いで多くが死んでいる事実もある。ヨーロッパ人の入植によって死んだアメリカ先住民の8割から9割は、戦闘による死亡ではなく、入植者が持ち込んだ腺ペスト、天然痘や麻疹、チフスなどの病気に罹った事が死因とされている。

American Indians and European Diseases | Native American Netroots

 
日本人の間に、アメリカ先住民とヨーロッパ入植者との関係に誤解がある一方、アイヌ先住民を事実上奴隷として使用していた歴史について、日本ではあまり知られていない。かつては本州にも『倭人』と同じくらい住んでいたアイヌが、現在では北海道に僅かばかりとなった理由は何だろう。勿論『倭人』との雑婚により、同化したアイヌもいくらかはいるだろう。『倭人』との戦闘によって死亡したアイヌも多くある。しかしアイヌの死の殆どは、天然痘や麻疹など『倭人』の持ち込んだ伝染病に罹った事が原因にある。
 
『植民地支配』や『併合』、『先住民』との問題にせよ、欧米諸国のした事はすべて悪で、日本のした事だけは潔白であったと考える事は、思い込みに根差した誤りである。政治的動機を持ち込まずに学問的探究心から歴史を学ぶのでなければ、客観的な判断は、いくら学んでも出来ないと思われる。余りにも政治的主観が行き過ぎれば、学んだ結果はプロパガンダとしかならないだろう。
 

韓国の『反日ナショナリズム』を理解する

国際政治事情 日本の歴史、政治
以前も書いたが、ナショナリズムとは、自国を美化する神話を含んだ国家意識と共に、国民を別の集団に反対してまとめる主義を指す。ナショナリズムは、米国、日本、ロシア、韓国など、多くの国に存在し、その主張には、他国のナショナリストには共感し得ない、自国への美化や正当化が羅列されているが、特に「パトリオティズム(郷土愛)」と異なるのは、ナショナリズムには必ず『敵』と『被害意識』が存在している点だろう。
 
ロシアのナショナリズムは、欧米や西側を敵視する。実際、ロシア人ナショナリストらは、アメリカ人がロシアについて考える以上に、アメリカ人によっていかに自分たちが敵視されているかを信じ込み、アメリカ人への敵対心を「挑発への反発」として煽動する。彼らにとって『反西側主義』は、実際には攻撃されていないのにもかかわらず、『自衛』でもあるのだ。
 
アメリカのナショナリズムは、外国人を敵視してきた。但し最近の傾向では、イスラム教徒やメキシコ系だけでなく、同盟国、また国内のリベラル派も「アメリカにとっての直接的な脅威」と見做されている。自分たちが守ろうとしている生活様式への脅威が、リベラル派によってもたらされていると感じているからだろう。
 
日本のナショナリムズは、韓国、中国、またアメリカを敵視している。特に韓国に対する敵愾心は近年にない激しさを見せているが、日本のナショナリストらは一葉に、自国を守る気概を口にする。例え「韓国人は死ね!」等と書かれたプラカードを掲げる反韓国のデモ行進者であっても、自分たちこそ攻撃を受けているのだと信じているようだ。
 
韓国のナショナリズムは、反米、反日でまとめられていると言って良いだろう。特に日本に対しては、韓国人ナショナリストらは海外に在住していても活動を続けている。日本人ナショナリストと同様、活動を続ける人々の多くは戦後生まれの筈だが、それでも、たった今見てきたように「日帝」の犯した悪を語ってくれる。
 
こうしたナショナリストたちの主張が、いついかなる場合にも変わらないという悲観はしていない。論理的議論や、知見を広げることによって『被害妄想』から抜け出す場合もある。私は日本のナショナリズムを厳しく批判するが、勿論、韓国やアメリカ、ロシアのナショナリズムに対しても同様である。
 
但し、意外と知られていない韓国の反日ナショナリズムの背景について、以下に在韓アメリカ人学者、ロバート・ケリー教授の記事を訳してご紹介する。まず、韓国に蔓延しているかのように見られる「反日ナショナリズム」について、まず原因を知る姿勢も必要に思えるからだ。

Why South Korea Is So Obsessed with Japan | The National Interest Blog

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『北朝鮮の真のイデオロギーが社会主義ではなく、朝鮮民主主義人民共和国が外国勢力から民族を守っているといった、『民族』をもととした韓国ナショナリズムである事は、今では広く受け入れられている。国際化した経済、米軍基地、文化の西洋化、韓国に住む外国人の存在などの為に、北には『ヤンキーの植民地』と呼ばれる韓国は、北の『民族の純血』を強調した史観には太刀打ち出来ないのだ。
 

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こうした事も、もし韓国の政治アイデンティティ―が、人種を超えた真の民主主義であったならば、問題とはならなかっただろうが、政治アイデンティティーは違うのだ。『民族』への神話は、韓国内にも深く共鳴されているのだ。韓国の教育はそれを教え、国営メディアはそれを広め、業界はそれを強調し、私の教え子たちもそれを称賛した文体で書いていた。何年か前までは、国の忠誠の誓いは、民主主義国家『韓国』ではなく、『民族』に対してなされていたのだ。また韓国の民主主義は民族を基本としたナショナリズムに対抗できる強固な正当性を与えていないのだ。また一部の特権階級が政治的機会に恵まれるような機構は、路上デモの文化を作り出し、選挙結果が尊重されていない徴しとなっている。
 
もし韓国が民主主義を通して、か細く自身を正当化するとして、強力な民族ナショナリズムを背景に、ソウルは、『民族』と『5,000年の輝かしい歴史』の擁護者であるかを平壌と競う場合、接戦を迫られるのだ。しかし、北朝鮮による「虚偽の歴史を作り出す意欲」の為だけではなく、米軍の存在、市民の間に人種混合を推進する多文化主義の発達などによって、韓国にはこの戦いに勝ち目はない。北の純粋な民族主義ナショナリズムは、韓国でも何十年に渡り、絶えず共鳴されてきた。独裁者であった朴正熙故大統領は民族による正当性を強調し、最近の議会選挙では、10%の国民は公けに親北朝鮮の政党に投票をしているし、主な左翼政党は、北朝鮮よりも米軍基地の存在の方が韓国に対する脅威であるかのように、一貫して態度を曖昧にしてきた。
 
さてここに、韓国にとって「都合の良い他者」として本来ならば北朝鮮が占めるべき場所に、日本が登場する。北朝鮮、韓国に関係なく、朝鮮半島の全ての人々は日本による植民地支配(併合)が悪であった事には同意している。北朝鮮を非難する事は、すぐさま「誰がより優れた民族の後継者か」という問題を再熱させるが、日本を非難する事への道徳性は議論の余地が無い。本来ならば、これは必要のない議論なのだ。西ドイツは東ドイツに対して自らのアイデンティティーを明確にし、正当性の争いに勝つことが出来た。ところが北はマルクス主義を捨て、韓国も共鳴する民族の正当性に置き換えてしまったが、民主主義はこれに打ち勝つ力はないのだ。
 
であるから、日本を罵倒する事は、優れた『解決策』なのだろう。日本を非難する事で、韓国は民族の擁護者となり、あからさまな北へのシンパシーを煽動し兼ねない北との激しい民族ナショナリズムの競争から一歩退く事が出来る。また、財閥と呼ばれる凝り固まったエリートらを韓国政治から一掃する必要が生じる韓国の政治的正当性を、長期的に民族から民主主義へと変える為の議論を避ける事ができるのだ。とどのつまり、反日本主義は、韓国の多くの問題を管理するのに都合が良い戦略なのだ。しかも、アメリカが安全保障を担ってくれる限り、地政学的な代価を払わなくて済むのだ。
 
何の問題があるだろう。韓国が反北朝鮮になる事が出来ないならば、反日本で良いではないか。』
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また、以下はアンジェイ・コズロウスキー教授の書かれた日中韓のナショナリズムに関する洞察だ。
 
『中国の反日プロパガンダを反米の予行演習か何かであるような吹聴は、全く馬鹿げている。実際、中国は反米プロパガンダを反日プロパガンダよりずっと以前から行ってきているのだ。しかも中国による反米プロパガンダの主張は、日本人ナショナリストらの主張と同じなのだ。また中国と韓国には大きな違いがある。
 
無知な日本人ナショナリストの主張とは異なり、中国人の間では日本に対する敵愾心は殆ど無い。中国の田舎に出かけた事のある人間ならば、これに同意するだろう。実際に中国人とかかわった事のある人間ならば、一般の中国人の間に日本への憎悪がない事は明らかなのだ。第一彼らには日本に関する知識も無いし、政府の流すプロパガンダを読んだり聞いたりすることも無いのだ。中国では意図的に反日感情を煽るのは政府であり、共産党である。彼らは自分たちの都合に合わせてこうした感情を煽動しているのだ。
 
しかし韓国は逆である。韓国のナショナリズムは実在し、日本の植民地支配によって反日感情はナショナリズムの中心を占めている。日本人ナショナリストは認めようとしないが、韓国人ナショナリストらは反中国でもある。また韓国政府は、大抵反日ナショナリズムを煽動しようとせず、抑える方向で働くが、北朝鮮はこうした韓国政府による対日本への穏健な姿勢を、絶えず弱さの兆候として宣伝してきた。そうする事で、韓国人ナショナリストからの支持を得られるからだ。日本のナショナリストらとは違い、韓国のナショナリストらは左派(親北派)が多い。勿論韓国人ナショナリストの間には右派も存在するが、左派ナショナリストよりも声が小さい。
 
日本の場合は、これとは逆である。左派が「インターナショナリスト」であり、ナショナリストらは自分自身を「愛国者」と呼んだり、「保守派」と呼び、右派に属する。勿論、こうした定義は単純化されている。例えば、日本人ナショナリストらは、基本的に左翼と全く同じ、西側やアメリカなに対する『世界観』を持っている。それでも彼らは自分たちを右派であると信じているのだ。』
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韓国の反日ナショナリズムついて反感を持つにしても、反日ナショナリズムの台頭と北朝鮮からの圧力の狭間にある韓国政府の微妙な立場を理解する事は、日本外交の成否を決める上で欠かせない知識である。
 
こうした微妙な外交の現実は、実は日本だけが抱えているのではない。
 
約3,000人のアメリカ人が殺された911テロのハイジャッカーたちの多くは、エジプト人、またサウジアラビア人であり、両国はアメリカにとって敵対国ではない。911テロに関して、特に同盟国であるサウジアラビア政府の関与が疑われていたが、アメリカはサウジアラビアとの同盟関係、またテロリストやテロに関する情報提供の協力を重視し、サウジアラビア政府の責任を追及していない。サウジアラビア政府は、国内のイスラム教徒にとっては世俗主義と考えられており、サウジアラビア政府の責任が公式に問われ、政権が転覆でもされれば、更に反米イスラム主義国となる可能性が濃厚だからだ。道徳的、あるいは倫理的怒りや反発に任せてサウジアラビア政府に圧力をかけた場合の結果は、アメリカが意図しないものとなる事がわかり切っているからだ。
 
日本の場合も同様だ。(尤も、アメリカがサウジアラビア人に恨まれるよりも、韓国人に憎まれるべき要因が日本には遥かにあるのだが...) 誰が政権に立っていても、韓国政府への圧力は、更なる民間の反発を招くし、そうした民間の活動に圧力をかけようとすれば、更に反日的要素のある政権が誕生するだろう。
 
「元々は韓国政府が蒔いた反日感情の種が手に負えなくなっただけ」として理解すら拒めば、しっぺ返しは必ず日本にもやって来るだろう。