日本の右派が抱える危機(2) 各国の極右ナショナリストに近づくプーチン・ロシア
さて、『日本の保守派が抱える危機(1)』の冒頭にあげたジョシュア・ブレイクニー氏は、
9・11をアメリカによる自作自演とし、反米、
ブレイクニー氏は、2014年に「Japan Bites Back」という本を出版している。日本の側から見た真珠湾攻撃と第二次世界大戦について書かれているようだが、要は真珠湾攻撃の見直し論である。彼の政治目的は、クレムリンの思惑と一致し、日本人右派の間に反米感情を起こす事にあるのではないか。
http:// http://www.nationalreview.com/article/380614/dugins-evil-theology-robert-zubrin
例えば、ロシアがイギリスのEU離脱を支援していた事は知られているが、イギリス独立党のナイジェル・ファラージュ党首は、公けにプーチンを礼賛している。フランスの極右政党で、マリー・ル・ペン党首が創設した「国民戦線党」は、党がロシアから940万ユーロ(約11億5千万円)の資金援助を受けている事を公式に認めた。
We should beware Russia’s links with Europe’s right | Luke Harding | Opinion | The Guardian
また1950年代に元ナチス党員によって建てられた、オーストリアの極右政党である「自由党」のハイン・クリスチャン・ストラッシュ党首は、プーチン大統領率いる統一ロシア党との経済、ビジネス、政治問題への協調関係に署名した事を発表した。
Austria’s Far Right Signs a Cooperation Pact With Putin’s Party - NYTimes.com
ハンガリーでは武装化した極右ネオナチ・グループのリーダーが、家宅捜査に入った警察官を射殺する事件が起きたが、その活動家に対して武器を提供していたのがロシア軍情報部である事が判明している。
マリー・ル・ペン党首のポスターを貼る支持者
Putin’s Support for Europe’s Far-Right Just Turned Lethal | Observer
冷戦時代のソヴィエトは、ヨーロッパの左派に接近していたが、現在のロシアは、リベラル政治が進めた移民政策に反発をするヨーロッパの右派に接近しているのが事実だ。ヨーロッパに於いてリベラルか排他的極右ナショナリズムかの選択肢しか残らなくなれば、他国との協調関係を結ぶことが困難になる。ロシアは、リベラル政治にうんざりしているヨーロッパ国民の意識を利用し、米国との同盟関係(NATO)やヨーロッパ共同体(EU)を重んじる保守政党ではなく、これらの極右政党を支援する事によって、米国による一極体制、及び米国主導による世界秩序の崩壊を目指しているのだろう。
ブレイクニー氏のようなあからさまな親ロシア派の言論人が、日本の右派に取り入ろうとしている事実には、
KGB出身のプーチン大統領は、大衆の支持を受ける情報操作に長けている。例えばロシア政府高官はアメリカの原爆投下についての非難を行な
プーチンは、日本人右派が安全保障や同盟関係よりも歴史認識を重要視している事実に対し、さぞ滑稽に感じているだろう。日本は、左翼だけでなく右派も、同盟というものに対する理解がヨーロッパに比べて圧倒的に薄い。未だに、アメリカと中国、ロシアとの中間に、ニュートラルな独立国として存在出来得ると考えている。ロシアとの間に北方領土での進展がなくても、尖閣上陸を念頭に入れた合同軍事演習を中国と毎年行なっていても、産経新聞を始め日本の右派は、何故かロシアが中国の拡張主義に対抗する為の軍事戦略的パートナーであるという錯覚を信じ、あらゆる不都合な事実には目を瞑ってくれるのだ。
Chinese, Russian South China Sea Exercise Includes 'Island Seizing' Drill
中国の膨張する脅威…安倍首相が日露防衛協力を急ぐ理由 ただ乗り越えるべき壁も (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK
日本の右派にとって、中国という侵略拡張主義国家に対して、共に戦い得る国家は、戦後70年にわたって日本の安全保障を担ってきた同盟国アメリカだけではなく、呆れた事にロシアであるのだ。しかしながら、アメリカとロシアが中国を相手に共闘することは無い。アメリカにとって最大の脅威を与える敵対国はロシアである。中国という侵略国家への警戒をする右派が、中国を警戒するのは当然だが、中国と同じ侵略国家であり、2014年にはウクライナを不法占拠したロシアへの警戒を軽んじるべきではない。たとえロシアが、日本人右派の誇りや名誉心をくすぐるリップサービスを行なったとしてもだ。
何度も繰り返してきたが、日本にとって第二、第三の同盟国となり得るのは、ロシアではなく、アメリカの同盟国でもある韓国とインドである。日本がアメリカとの軍事同盟を継続する限り、日本の同盟国となり得るのは、アメリカとの同盟関係を結んでいる国家だ。これは同盟という概念の初歩的な常識である。
日本は、クレムリンの流すプロパガンダに惑わされ、安全保障を危機に陥れるような誤りを犯してはならない。