トランプの脅す「米軍基地撤退」を「好機」と喜ぶ早計

トランプ氏による「在日米軍基地の負担を大幅増額しなければ、基地を撤退させる」という意見を受け、ニューヨーク•タイムズ紙は、「撤退となれば日本も韓国も核武装するのではないか?」と聞き返しました。

このやり取りについては、以前も書きましたが、トランプ氏は「自分が許可するもしないも、いずれそうなるだろう」と答えています。

この回答を受けて、日本の一部の方々の間には、「これを好機に核化の道を探ろう」という単純な意見が見られますが、ここには大きな現実的懸念がいくつも存在します。

現在の日本の大多数の世論は、核武装を否定しています。この世論は、一朝一夕には変わりません。

自国を守るために戦うと答えている日本人の割合は11%です。先進国の中でも最少の割合ですが、ここから考えても大多数の世論が、米軍基地の費用負担の大幅増額を選ぶと思われます。

これはいくら「自称愛国者」や「ネットウヨ」たちが声高に叫んでも、彼らは一般の世論に対する影響力は殆どありません。同じ仲間内で意見が過激化し、エスカレートしていくだけです。

もう一つの懸念は、日本が米軍滞在費の負担増額に賛成をせず、米軍の撤退と引き換えに核兵器開発を始めるとします。これに対して、中国は100%、中国の安全保障に脅威を与えていると主張し、「正当防衛」として先制攻撃に出るでしょう。

イスラエルのような民主国家でさえ、イランの核兵器開発の疑いが生じた1981年に、イランを空爆して原子炉を破壊しています。



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イスラエルのような法治国家は、目的を達成した後に引き上げましたが、中国のような国家は、どのような行動を取るでしょうか?

「トランプ大統領率いるアメリカ政府」が、中国との全面戦争に介入する事は考えられませんが、介入をしようとしても、一旦米国本土に引き上げた(?)米軍の再介入(?)に向けて、米国議会はどのような判断を下すでしょう。

日本は米国議会に影響力を持つほど、米国の政治事情に精通しているでしょうか?

実は「撤退」や「条約改正」と言っても、これらの決断は大統領の権限にはありません。議会の承認が必要となります。

ただし大統領には、米軍基地を縮小させたり、米軍に対して戦うか否かの命令を下す権限があります。条約はそのままでありつつ、それでも米軍が行動を取らない可能性もあります。

勿論、日本政府はこれら全ての事案を承知しているでしょうから、出来るだけ、外交交渉や韓国、インドとの軍事協力によって、この問題を解決しようとすると思われます。

それでも安倍政権にとって、困難が強いられる事は間違いありません。