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米メディアは嘘をついたのか-----ZAKZAK記事への反論

以下の記事に対して、果たして米メディアは嘘をついたのか、という視点から、反論をしたいと思います。

www.zakzak.co.jp

次期米国大統領にドナルド・トランプ氏が決まったことを多くの米国民が受け入れず、9日夜には全米25都市で抗議の「反トランプデモ」が起きたと、CNNなどのメディアが伝えた。
「やはりトランプ氏は大統領にふさわしくないのか」と考えた日本人は多いと思う。あなたもその1人だとしたら、メディアの情報操作に対する警戒心が不足している。米ギャラップ社が11日(日本時間12日)に行った世論調査では、米国民の84%が選挙結果を受け入れると答えている。トランプ氏を正当な大統領として認めないとの回答は15%である。つまり、「反トランプデモ」の参加者は「ノイジーマイノリティ」(騒がしい少数派)なのだ。日本で8月に解散した学生グループ「SEALDs」(シールズ)が「反安倍晋三政権デモ」を繰り返し、一部メディアがそれを多数派であるかのように報道したのと、完全に同じ構図である。
 
まず、元の記事となるCNNのリンクが添付されていませんので、実際のCNNの報道が何であるかはわかりませんが、日本語だけの判断で、反論をさせて頂きます。
 
全米25か所でトランプ氏当選に反対する抗議のデモが数日間行なわれ、参加者がそれぞれ数千人、また女性のデモでは一万人が参加したとすれば、これは「大勢のアメリカ人が…」とならないでしょうか? 勿論、「何人を以て大勢のアメリカ人が」と言うかどうかは、定まっていません。コンサートや講演会のように、収容人数が予め判断できる場合でなければ、おおよその適当な人数を報道するか、「多くの」と、人数を特定せずに報道する事は、ある意味常識的な事です。
 
この場合の「次期米国大統領にドナルド・トランプ氏が決まったことを多くの米国民が受け入れず…」とCNNが報道した事は、事実から逸れた報道ではありませんし、「米国民の84%が選挙結果を受け入れる」と答えたギャラップ社の世論調査とも矛盾しません。
 
「CNNやその他のメディアが『情報操作』をしている」ことを示唆されるケントさんですが、CNNなどのメディアが「大勢のアメリカ人がトランプを次期大統領として受け入れず、デモに参加している」と報道する事によって『情報』を操作したとすれば、この場合の「操作されていない報道の仕方」とはどのようなものでしょう? 「少数のアメリカ人による小規模のデモが行なわれた」と報道する方が事実に近いのでしょうか。

 

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これは、コップの水を多いと見るか、少ないと見るかの違いである気も致しますが、やはり、何千人、何万人かの反対デモが起きた場合、人数は不確かとしながら、「大勢のアメリカ人がショックを受けている」という意味での「次期米国大統領にドナルド・トランプ氏が決まったことを多くの米国民が受け入れず…」という報道は、情報操作と呼ばれるべき類のものではありません。
 
CNNの報道が『嘘』である条件は、CNNが「『大多数』のアメリカ人が…」と報道した場合であって、ケントさんの書かれた事から判断しても、CNNはそのような報道はしていないようです。
 
また、「ギャラップ社による意識調査で84%が選挙結果を受け入れると答えた」点も、トランプ陣営や支持者が「ヒラリー・クリントンが当選した場合、選挙結果を受け入れない」と答えていた事と比較されるべきです。
 
トランプ氏自身は、法的措置に訴える事を示唆したり、支持者の中には「革命の為に立ち上がる」ことを示唆した人もありましたが、殆どのアメリカ人は、誰が当選したとしても、その選挙結果を受け入れていたでしょう。但し約8割の人々は、選挙結果を恐れていると答えていました。トランプ支持者であっても、ヒラリー支持者であっても、多くの人々が、自らは選挙結果を受け入れる一方、一部の人々による暴動や、何かがおこるかもしれないと恐れていた事は確かなようです。

Trump Throws A Tantrum And Threatens To Sue America If He Loses The Election

Pence halts Trump supporter who called for 'revolution' if Clinton wins - LA Times

Poll: 80 Percent Of Americans Fear 2016 Election Results | The Daily Caller

 
トランプ氏への投票が、有権者の約4分の一であった事を考えれば、大多数の国民がショックを受けているという意味でのメディアの報道は、必ずしも誤ったものではありません。
 
「やはり、トランプ氏は大統領として相応しくないのか」と考えた日本人がいるとすれば、その人には論理の飛躍が見られますが、その責任はCNNにはありません。CNNをはじめとするメディアが操作するのは、どちらかと言えば『印象』であって、『情報』ではありません。
 
日本人であっても、アメリカ人であっても、ある人が米メディアによる「大勢のアメリカ人がトランプ当選に反対したデモを行なっている」という報道によって、「トランプ氏は大統領として相応しくない」と判断したとすれば、その人は、民主主義選挙による投票結果こそが、正当性を齎すことを理解していません。相応しいか相応しくないかという資質の問題の前に、Electoral Collegeを用いた選挙で当選をしたのはトランプ氏なのですから、トランプ氏こそが正統的な当選者である点は疑う余地がありません
 
次に、『「クリントン・ニュース・ネットワーク」と揶揄されるCNNは報じないだろうが』と書かれる事で、すでに「CNNはヒラリー・クリントンに肩入れする為に、ヒラリーに不都合な報道はしない」という『印象』を示唆されていますが、CNNはヒラリー・クリントン元国務長官に不利となったemail疑惑も報道していました。
 
また、CNNが完全にヒラリー寄りだったという書かれ方も、事実とは言えません。CNNは、暴力騒動を起こしてトランプ・キャンペーンを解雇された、コーリー・ルワンドウスキー氏を政治コメンテーターとして雇い、トランプ氏に都合が良いだけの発言をさせています。「トランプ氏にとって都合が良いだけの発言」と述べるのは、解雇された後もトランプ氏にとって不利になる情報を漏らしてはならない契約がルワンドウスキー氏とトランプ氏との間にあったからです。CNNはそれを承知で、ルワンドウスキー氏を雇用しました。
 
 
また『今回の全米デモは、大物投資家ジョージ・ソロス氏が扇動したものとされる。』という情報も、CNNが報じないだけではなく、保守派メディアであるウォール・ストリート・ジャーナル紙も、ナショナル・レビュー紙も書いておらず、ワシントン・ポストがその噂の出所を明らかにして、それがいかに事実と違ったものかを報道しただけです。この噂は、クレムリンのお抱えメディアであるロシア・トゥデイや、主に陰謀説が専門のゲイトウェイ・パンディットなどがまず流しており、社会的責任を抱え、信頼性の高い主要メディアは、保守派メディアであってもこの噂を報道していません。
 
ワシントン・ポストの報道によれば、3月の時点で既に出ていた「ジョージ・ソロス氏が反トランプ・ラリーの裏にいる」という噂の出所は、トランプ氏の為の活動をしていたワシントンDCのロビィスト、ロジャー・ストーン氏ですが、ストーン氏は、ポール・マナフォート元トランプ選挙マネージャーと、『ブラック・マナフォート・ストーン&ケリー』というロビィ会社を共同経営している人物です。トランプ氏の選挙マネージャーとロビィ会社を経営していたロビィストが出所である事を考えれば、この情報に対しては、よほどの警戒をするべきだと思われます。
 
勿論、証拠があれば、たとえストーン氏が出所の情報でも信じられるべきでしょうが、証拠が無い限り、主要メディアの情報に対抗し得る真実の情報とは言えません。
 
 
 
「民主主義の根本を否定する、往生際の悪いデモ隊は大型バスの送迎付きとの情報もある。」
これは事実に基づいた情報ではありません。写真に写っているとされるバスの列は、反トランプ・デモとは関係が無く、10月の時点で既にグーグルのストリート・ビュー写真に納まっています。ここから判断されるのは、これらのバスの列が、トランプ氏への反対デモと関係が無く、常に、或いは頻繁に、この場所に駐車してあることです。
 
「すぐに沖縄の「プロ市民」を思い出した。日当と弁当も出たかもしれない。」
 
これはケントさんの憶測だけであって、金銭が支払われた証拠はありません。日当が出るという『情報』からは、これらのデモ参加者が、トランプ氏への反感からではなく、金銭的な目的によってデモに参加をした、という『印象』を受けますが、リベラル派だけでなく、トランプ氏に反対していた保守派の懸念も考えれば、これらのデモに参加した人々の動機が、金銭欲であったとは思われません。先にも述べましたが、約8割のアメリカ人がトランプ氏の当選に恐怖を感じていたのです。

Poll: 80 Percent Of Americans Fear 2016 Election Results | The Daily Caller

 
加えて、たとえソロス氏の支援されている数多くの団体が、トランプ氏に反対するデモに参加をしていても、それがソロス氏による直接の呼びかけで行なわれたものである証拠はなく、まして全てのデモ参加者がソロス氏の意向に従ってトランプ氏に反対をした「雇われ運動家」であるとは言えません。

 

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ここまで書けば、ケントさんの書かれている事にこそ、『印象操作』や情報の偏向がある事は否めません。メディアによる『情報操作』にあれだけの警戒を呼び掛けていらっしゃるケントさんが、ご自分のなさっている『印象操作』に気付かれないのでしょうか。
 
今回の大統領選は、米メディアの嘘と傲慢さを見事に暴き出した。例えば、「トランプ支持者=低学歴で低所得の白人労働者」というレッテルを貼り、選択に迷う人々をヒラリー氏支持に取り込もうと画策した。だが、現実のトランプ支持者は低学歴でも低所得でもない。私がその証拠である。本物の低所得層は、社会保障に手厚い民主党のヒラリー候補を支持した。年収500万円以上の人々の支持率は拮抗していた。
 
まず、常識として、「すべてのトランプ支持者が低学歴で低所得者の白人労働者」であると主張する人は、皆無です。そうではなく、「一般的にトランプ支持者らは…」という、統計に基づいた、あくまでも一般論、比較論が述べられているだけです。そして一般論、比較論で言えば、これは誤った報道とは言えません。
 
トランプ支持者の多くは、白人の労働者階級で、大学を出ていない層であることは、いくつもの統計が明らかにしています。
 
 
勿論これは一般論ですから、ケントさんのような高学歴の方がトランプ支持者の中にいらっしゃっても当然なのですが、ケントさんがご自分を指して『私がその証拠である』と仰った辺りは、「議論とはそのように為されるものではありません」と言うしかありません。
 
しかも、もし一人の高学歴者や高所得者の為に、支持者のおおよそが判断されるべきならば、ケントさんが指摘された「社会保障に手厚い民主党」は、共和党から立候補するまで民主党支持者であったドナルド・トランプその人や、民主党員として登録されていた成人した彼の3人の子息女らによって「高学歴」「高所得者」の党となります。
 
因みに、「トランプ支持者」と言っても、共和党からはトランプ氏を含む合計17名の候補者がありました。同じ共和党支持者、或いは保守派と言われている人々の中にも、「絶対にトランプがアメリカを再び偉大な国とする」と信じる熱狂的な支持者から始まって、「絶対にトランプ氏には反対する」というネバー・トランプの人々まで、様々な意見がありました。勿論、この中間には、「本当はトランプを支持したくはないけれど、自分の支持していた他候補者は、選挙から撤退してしまったし、ヒラリー・クリントンよりはマシだと思う」という理由でトランプ氏への投票を決めた大多数の共和党支持者らがいます。多くの候補者が立候補していた頃は、トランプ氏の共和党支持者からの支持率が40%を超える事はありませんでしたから、『大多数』の共和党候補者からの支持をトランプ氏が受けていなかったことは明らかです。
 
真にトランプ支持者と呼ばれるべき人々は、その他16人の候補者がいた段階から、一貫してトランプ氏を支持してきた人々だと思われます。ナショナル・レヴュー誌に記事を書き、「Liberal Fascism」の著者でもあるジョナ・ゴールドバーグは、保守派言論人のうち、原則に従って反トランプを貫いてきた人物の一人ですが、トランプ支持者を『無知文盲』『白人至上主義者たち』『偽祭司たち』『偽穏健派』『娼婦の指導者』『隠れ反トランプ』『諦めてしまった人々』に分類しています。
 
 
 
この中で、もともとのトランプ氏を支持していたと思われる人々に対しては、「これらの人々は早い時期からドナルド・トランプ氏が大統領として相応しいと信じてきた人々である。彼らを一般化するならば、これらの人々は邪悪なわけでも、差別主義者でもない。これらの人々は、基本的に詐欺師に騙されているような人々だ」としています。
 
また、軍史家であり、ナショナル・セキュリティーのアドバイザーでもあったマックス・ブート氏は、トランプ現象を生み出した原因に、アメリカの公民教育の衰退そのものをあげています。
 
 
ゴールドバーグ氏や、ブート氏は、共和党支持者で、保守派の言論人、外交専門家ですが、反トランプを掲げてきた人々です。
 
一方、トランプ氏のアドバイザーでもあるベン・カーソン氏がトランプ支持者について、以下のように述べています。
 

「ニュアンスや理屈、正当性で以て彼ら、トランプ支持者にわからせようとするのは、無理です。彼らは、絶望的に、勝ちたいのです。そして彼らは、どのように勝とうかについては、あまり気にしていません。トランプ氏は他の候補者に比べ、勝とうとする欲望に訴えかけるのに長けています。外交政策、拷問や社会保障などの主張に見られる通りです。彼は支持者たちが論理的な理屈の中で結論に達するようには導いていません。彼が彼らに代わって、結論やその理由まで、全てを提示するのです。国家の借金やアメリカの軍事的役割の縮小、また法律そのものなど、無視できない現実を前にしても、彼のあからさまな強さが、現状打破を願う人々に取って、新鮮な希望であるのです。この選挙は、アメリカの大衆の心と魂を勝ち取るもので、知性によるものではありません。」

 

トランプ氏のアドバイザーであるカーソン氏が、トランプ支持者に対して、「加減や知性、曖昧な言葉、論理への訴え、良識などは、この時期、有権者には関係がありません」と述べているのですが、「論理的な理屈」を必要とせず、知性ではなく心と魂に訴えられるような人々が、果たして一般的に高学歴、高所得者と分類されるでしょうか?
 
或いは、アメリカの借金をどう解決するか聞かれ、「債権者に、貸した金額よりも少ない額を受け入れてもらう」と、アメリカへの投資家をしり込みさせる発言をした後、真意を正され、「紙幣を多く印刷して借金返済に宛てる」と答えたトランプ氏を、「アメリカを偉大にしてくれる」と支持するような人々が、果たして知的で、高学歴の層であり得るしょうか? 

Donald Trump: U.S. can never default because it prints money - POLITICO

 
ただ単に、ヒラリー氏を圧倒的に支持したメディアが、民主主義を受け入れる大多数の米国民をバカにする偏向報道を、選挙中から現在まで堂々と続けているだけだ。今も「衝撃」や「番狂わせ」と報じる日本メディアは、情報操作を見抜くリテラシーを磨かないと、恥の上塗りになる。
 
ヒラリー・クリントンを圧倒的に支持したのはメディアだけではありません。ノーベル賞受賞の経済学者を含む、370人に及ぶ著名な経済学者たち、122人の共和党支持者のうちの、安全保障及び、外交専門家たち、また多くの共和党議員、元大統領や、大統領にも提言をしていた元将軍、元CIA長官らも、ヒラリー・クリントンを支持していました。共和党支持者、或いは共和党員であっても、外交、安全保障、軍事、経済専門家らは2016年の選挙では、民主党候補者であるヒラリー・クリントン元国務長官を支持していたのです。
 
これらの人々のヒラリー・クリントン元国務長官への支持は、トランプ氏や、アレッポが何かも知らなかったゲイリー・ジョンソン党首、トランプ氏と同じように親ロシアの姿勢を示していたジル・スタイン党首らしか、他に候補者がいない中での、やむを得ないヒラリー氏支持とも言えます。
 
 
 
『ただ単に、ヒラリー氏を圧倒的に支持したメディアが、民主主義を受け入れる大多数の米国民をバカにする偏向報道を、選挙中から現在まで堂々と続けている』が何を指すのかはわかりかねますが、日本のメディアが報道するように、トランプ氏の当選が「衝撃」「番狂わせ」であった事は事実です。トランプ陣営や支持者にとっても、この選挙結果は衝撃だったのです。ロサンゼルス・タイムズなどの一部メディアを除き、殆どのメディアは、トランプ氏の当選を予測していませんでした。ですから、今になって、「実はトランプ氏の当選こそ、確信していた」などと主張すれば、却って、自らの誤りを認めない『恥の上塗り』となるでしょう。一番理解できないのは民主主義を受け入れる大多数の米国民をバカにする偏向報道』が何を指すのかですが、ケントさんが挙げられているのは、CNNをはじめとするメディアが報道した、「トランプ氏当選に反発をした人々による抗議運動」です。これを報道する事が「民主主義を受け入れる大多数の米国民をバカにする偏向報道」となるのでしょうか? 
 
また、『選挙中から現在まで』と書かれていますが、選挙中に関して言えば、「(場合によっては)選挙結果を受け入れない」と主張していたのは、トランプ氏とその支持者らで、トランプ側によるこの主張は、「民主主義を軽んじたもの」として報道されていました。選挙後は、偏向どころか「公平に」、恐らくヒラリー支持者やサンダース支持者から成る反トランプ派による「選挙結果を受け入れない」という主張を報道しただけです。この報道姿勢には偏向は見られません。
 
情報操作を見抜くリテラシーを磨くことを勧めていらっしゃいますが、メディアだけでなく、なぜ多くの名だたる経済学者や安全保障、外交専門家らがトランプ氏を厳しく批判し、彼の当選への警告を発していたのか、彼らの議論に対して、冷静に聞く耳を持てば、「ただメディアが醜悪な反トランプキャンペーンを展開している」というような、『メディア陰謀説』に陥らずに済むのではないかと思える次第です。
 
メディアによる陰謀を説かれる方ほど、クレムリンのお抱えプロパガンダ・メディアや、陰謀説を垂れ流す個人メディア、社会的責任の少ないアルト・ライト・メディアを引き合いに出される事が多々あるのは、本末転倒だと言うより他にありません。
 
軽々しく「メディアが嘘をつく」と主張される方は、大雑把なメディア陰謀説を流布されるよりも、メディアの報道のどの部分の『事実関係』が『誤りであったか』を明確にされる必要があります。