中国との戦争を語る狂気のトランプ陣営

トランプ大統領のアドヴァイザーであるスティーブン・バノン氏は、5年以内の中国との戦争を示唆している。

Donald Trump's closest advisor Steve Bannon thinks there will be war with China in the next few years | The Independent

 
こうしたトランプ政権の強硬姿勢を喜び、それに期待をする日本のメディアやトランプ支持者の気が知れない。
 
まず軍事面から見ても、これはアメリカ、また同盟国にとって決して有利な戦争ではない。例えば南シナ海における中国の拡張を止める為にアメリカが中国を攻撃すれば、中国は反撃をすると既に明確に誓っているが、中国はアメリカ本土を攻撃し得る通常兵器を持っていない。

 

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もし通常兵器を使用するとすれば、在日米軍基地や在韓米軍基地への攻撃しかないだろう。アメリカ本土に届く兵器による反撃を行なうとすれば、核兵器を使用するしかないのだ。またアメリカ本土が核攻撃を受けその軍事力が著しく減退すれば、日本や韓国のような極東の同盟国が中国の更なる餌食となる事は分かり切っている。
 
しかもトランプ政権ほど、アメリカ諜報機関や軍事専門家からの報告を無視しているアマチュア集団は他には無い。
 
トランプ大統領は、安全保障会議へのCIA長官やケリー長官の参加には、親ロシアの態度を隠さないマイケル・フリン元将軍の許可を必要とさせている。安全保障会議に於けるジェームズ・マティス国防省長官の意見を覆す為に、国土安全保障庁のジョン・ケリー長官を外し、スティーブン・バノンをメンバーとしている。軍事戦略の専門家や、諜報の専門家の意見が届かない仕組みとなっているのだ。

Trump’s National Security Coup Cuts Intelligence Out of Big Decisions | Observer

 
己の無知や限界を意識できないトランプ氏は、毎日行なわれる筈の諜報機関からのブリーフィングにも不満を隠していない。「大統領がブリーフィングに飽きてしまい、テレビを見たがる」と側近が匿名で報道機関に漏らしている程だ。

Donald Trump's closest advisor Steve Bannon thinks there will be war with China in the next few years | The Independent

 
こうしたトランプ政権の実情を鑑みて、軍事諜報の専門家、ジョン・シンドラー氏は警告を発している。「これは冗談やお遊びではない。バノンやトランプの愚者集団は、今すぐ挑発を止めるべきだ。」
 
尤もこの事態の深刻さは、自分の見たい神話や幻想しか見られない反中国のナショナリストやトランプ狂信者には興味が湧かないかもしれない。
 
中国の拡張は厳しく批判されるべきだし、止められなければならない。しかしながら、トランプ政権に引きずられる今日のアメリカにそれが可能かどうかは、全く別の次元である。中国による軍事拡張の脅威を本気で止めるには、諜報や軍の専門家を軽んじる傲慢なアマチュア集団では不可能だし、彼を選出してしまった時点で、当分の間の機会を損なったと言える。
 
多くの戦争というものが突発的な事件によって勃発する事を考えれば、トランプ政権というアマチュア集団は、戦略の無い挑発をするべきではない。