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ロバート・スティネット『欺瞞の日々』の欺瞞

『真珠湾攻撃』について、『ヨーロッパの戦争に裏口介入するためにルーズベルト大統領が意図的に日本に真珠湾を攻撃させた』というロバート・スティネット著の『欺瞞の日々』は、『ルーズベルト陰謀論信者』によって頻繁に引用されますが、多くの歴史家は、ルーズベルトが事前に把握していたとは考えにくいと結論付けただけでなく、スティネットの著書を悪質で取るに足らない陰謀説であると、酷評しています。

Day of Deceit - Wikipedia, the free encyclopedia

 
秦郁彦氏も、この陰謀説を否定されていますが、もし仮にルーズベルの陰謀だと仮定した場合、攻撃を知っていながら未然に防がなかったルーズベルトに対してアメリカ人が憎しみを感じるのは当然ながら、日本人がルーズベルトに騙されたと考えるのは理解できないと書かれています。
 
『もしルーズベルトが日本の解読された暗号や、或いは機動部隊の行動についての情報を基に真珠湾攻撃を知っていたとすれば、日本にとって実に間の抜けた話しである。少なくとも日米戦争の初戦に勝利したのは、ルーズベルトのおかげだったのである。山本五十六の作戦でもなんでもなかったという事になる。もしルーズベルトの陰謀説が証明されたら多くの日本人は愕然とするのが当然であろう。それをやっぱり知っていたのかと大騒ぎして喜んでいる人たちの気持ちがサッパリわからない』と、尤もなご意見を述べられています。
 
私見ながら、秦先生の仰る通り『ルーズベルトはやはり知っていたのかと大騒ぎして喜んでいる』方々は、日本が『だまし討ちをした』と言われるのが、公明正大で清廉潔白な日本軍の名誉にかかわるとお考えになるようですが、では日本が奇襲攻撃をしようとしなかったのか、在米日本大使館が日本政府の意向通り、宣戦布告を通達していたら、『奇襲攻撃』とはならなかったかを落ち着いて考えれば、日本政府には奇襲攻撃をしようとする意思があり、計画されていたことが山本五十六元帥の発言記録からもわかります。
 

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前出の秦先生は、日本が日露戦争に於いても宣戦布告の2日前に奇襲攻撃をした事、また奇襲攻撃そのものが戦法と考えられていた事をご存じですので、奇襲攻撃を弁護されたり、否定されたり、あるいはルーズベルト大統領陰謀説に責任転嫁せず、ただ当時の考え方の説明をされています。これが過去の価値観や歴史を現在の価値観では裁かず、或いは政治運動に関係なく、『日本の名誉』を取り戻すといった目的とは無縁の歴史学者の姿勢なのだろうと思います。
 
因みにロバート・スティネットの犯した決定的な過ちは、彼が暗号の傍受と解読を故意か不注意で混同した点にあります。彼が自著の中で掲載した証拠写真そのものが、日本海軍の暗号は傍受したものの、その解読に成功したのが1946年4月であることを示しています。(秦郁彦『陰謀史観』187ページ)