最も説得力のある『南京30万人大虐殺』の否定論

繰り返しになりますが、秦郁彦氏の主張される南京に於いて2万から4万人の不法殺害、いわゆる虐殺があった事に対する反論に、『南京難民区の人口増加』、『こんなに平和な南京の写真』、ましてや『南京に入城した際人っ子一人いなかった。虐殺など起こる訳がない』という論理は、反論にはなりません。

 

秦氏やその他の欧米の歴史家が主張する、南京に於いて行なわれた虐殺の殆どは、捕虜や投降してきた敗残兵に対するものです。

 

『南京戦』が行なわれた事は、『無かった派』の学者でも認めています。また、大量の中国軍からの投稿兵、敗残兵、捕虜があったことは日本側の記録に多く残っており、「捕虜は取らぬ方針」と記している師団もあります。

 

捕虜や投降してきた敗残兵を殺害する事は、日本も調印したハーグ陸戦条約や、開戦後、日本が『スイス、アルゼンチン外交代表に対し「適当なる変更を加えて (mutatis mutandis) 同条約に依るの意思ある』との声明を発表した『ジュネーブ条約』の一部である『俘虜の待遇に関する条約』の違反となり、その不法性を以て『虐殺』だと言われています。

 

ハーグ陸戦条約 - Wikipedia  

俘虜の待遇に関する条約 - Wikipedia

 

本来、『無かった派』が真剣に上限4万人説を否定しようと試みるならば、この「捕虜への殺害が違法ではなかった」という論理を展開しなければなりません。実際、『無かった派』の中には、捕虜殺害を何とか合法であると主張される方もいます。

 

但し、そのような論理は、国際的に見て明らかな条約違反、違法である事がわかっているのでしょう。あまり多くの方はこれを取り上げません。

 

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南京に於いて行なわれた『虐殺』とは、これら順次に起こった投稿兵や捕虜の『始末』や、特に朝香宮殿下の南京来城を前に念入りに行なわれた便衣兵狩りの際に、便衣兵に見える市民が巻き込まれて殺害された場合を累計したものです。

 

南京の虐殺を否定される方の中には、「プロパガンダに対抗するには、わかり易いプロパガンダが有益です」と仰る方もいますが、例えば、日本が政治目的の為に、原爆による被害者を100万人と誇張した場合、アメリカは日本のプロパガンダを否定するために原爆の被害者0説、或いは原爆が投下されなかった、また拘留は「無かった」と主張するでしょうか。

 

アメリカもロシアも、そのような否定はしません。「無かった」論は全く説得力に欠け、極論に対して疑念を抱かせる役目さえ果たし得ないからです。

 

また、このような「否定」は、過去の日本を貶めるものではなく、現在の日本人、現在の日本の国がらを疑わせる事に繋がり、日本側の信頼性をわかり易い形で否定するだけです。

 

30万人虐殺説に対して説得力を持ち得る反論は、「南京で何が行なわれたか」を日本軍側の資料を以て説明する事です。そしてこの説明は、すでに欧米の歴史家により史実に近いと認められています。

 

私見ながら、資料に残る2万人から4万人の不法殺害を否定することによって、日本人以外の誰も説得できない「わかり易いプロパガンダ」の為に、「30万人の一般市民に対する虐殺」を否定する最善策を失なってしまったのではないでしょうか。