通州事件のユネスコ申請に関して…(3)

通州事件のユネスコ申請に関して…(3)
 
日本人以外の方との歴史討論で感じる事ですが、日本人が考えている歴史観と、日本を一歩出たところの外国人の考えは違うようです。
 
「いずれの歴史認識が正しいか」という判断よりも、歴史認識に違いがある点は認めた方が良いと思われます。
 
『通州事件』のユネスコ登録の為には、それなりに日本以外の外国の支持が必要ですが、この事件の登録に向けたサポートが他国から期待出来るか、冷静に考えてみる必要があります。
 
果たして、第二次世界大戦中のアジアに於ける『日本の被害者的側面』という歴史観を記録する事は、他国の支持を得るでしょうか?
 
日本の中のナショナリスト的な考えによれば、「中国や韓国以外のアジアの国々からは日本は感謝をされている」筈ですが、頼みの綱のアジアの親日国も、「過去の日本の行ないを手放しで感謝」していたり、或いは日本の保守派の一部と同じ「歴史観を共有している」わけではない事が、各国800人以上のサンプルから得た意識調査の結果から理解出来ます。 
 
 
 
あまり日本人には馴染みのない『シンガポール華僑虐殺事件』ですが、勿論シンガポール人やマレーシア人は知っている事件です。日本政府もシンガポール政府も、虐殺の事実を認めていますが、主張する犠牲者数に違いがあるようです。
 
華僑勢力は、華僑である為に、中国に武器を購入する資金を送っているのではないかという疑いをかけられて殺されましたが、彼らは誰一人として兵士やゲリラではありませんでした。そもそもシンガポールでは日本兵は華僑によって殺されてはいません。
 
リー・クワン・ユーは、シンガポールの初代首相となった人物ですが、彼は19歳の時に、彼の外見が『中国に資金援助をしていそうな外見』の要点を備えていた為に粛清リストに載り、危うく難を逃れた事を証言しています。
 
彼はこの件について一度インタビューに応えただけで、反日プロパガンダで嘘を広めるどころか、「日本軍のおかげで犯罪が減った」と日本の統治の功績も評価をしています。戦後は日本と戦った事が栄誉として見なされ、勲章さえ受ける事が出来たのに、「抗日運動の何の役割も果たしていない」と述べています。
 
ちなみに戦後の日本政府は、彼を親日派として、また日本の友人として扱ってきました。
 
このような虐殺があった事を知らずに「日本はアジアを欧米の植民地支配から解放して、アジアの人々に感謝をされている」と主張して、「日本人は歴史を知らず、作り変えている」と反発されても、反発する側が『反日』で『中国の手先』だとは言い切れません。
 
「旧政府関係者だから」、「華僑であるから」、或いは「中国軍に資金援助をしているから」、はたまた「資金援助をしていそうだから」という理由で、正式な裁判もなく『敵性住民』を殺害して良いなら、戦時中のアメリカ政府は、日系アメリカ人を殺害しても良かった筈です。
 
ところがアメリカは、日系アメリカ人を全米12カ所の強制収容所に集めただけで、後にこの行為を謝罪しています。尤も、私自身はアメリカの日系人に対する処置が正しかったとも考えておりません。
 
勿論、日本軍の占領に対して反感を持ったり、運動をしたりするだけで、組織的殺害を行なって良い筈がありません。
 
日本軍や日本の憲兵による地元の人々への虐殺や蛮行は他にも記録されており、シンガポールやマレーシアでは学校の歴史授業でも教えられています。

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このような記憶を抱えるアジアの人々との意識や歴史観の違いは、『中国のプロパガンダ』や『欧米の陰謀』だけでは片付けてしまえません。