デーナ・ローラバッカー議員

2014年の夏、カリフォルニア州選出の共和党下院議員、デーナ・ローラバッカー議員にお会いして、慰安婦問題などの歴史、外交問題についてお話をしたことがあります。

当時、私はアメリカの政治事情に関する知識は殆ど無く、アメリカの有力政治家で、中国の脅威を真剣に捉えている議員の方ならば、歴史問題を政治化して日米を離反させようとしている活動への危惧を共有し、歯止めの為に力を貸して下さるのではないか、と考えているだけでした。

中国政府による法輪功信者への迫害や強制臓器摘出などの非難をされていたローラバッカー議員のお名前を知っていたので、ローラバッカー議員に連絡を差し上げたのですが、 他に面会する議員の候補としてテッド・クルーズ議員の名前も上がっており、今日、アメリカの大統領選挙の関連ニュースでクルーズ議員のお名前を聞くたびに、不思議な心境が致します。

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お会いしたローラバッカー議員は、その時の私の期待に反して、慰安婦問題に関して日本の言い分を聞き、政治的影響力を発揮して解決に力を貸してくれる気配 の微塵も感じられませんでした。それどころか、日本と韓国が些細な歴史問題で関係を緊張させている事に苛立ちを感じられている事が、議員の言葉の端々に感じ取れました。

一部の報道では、ローラバッカー議員は、2007年の対日非難決議に反対のスピーチをされていながら、韓国ロビーの働きかけによって賛成票を投じたとされていましたが、議員ご本人はそのような事実はないと仰いましたし、その非難決議が可決された事もご存じありませんでした。https://www.govtrack.us/congress/bills/110/hres121

私は同年5月のオバマ大統領の韓国訪問の際の日本非難の演説について語り、あの一方的な演説で、日本人保守派の中の対米感情が悪化した事を申し上げましたが、ローラバッカー議員は「オバマ大統領のした事で非難はされたくない」と仰いました。

ローラバッカー議員は中国からの軍事脅威を語り、日韓が協力をする必要があること、ただし歴史問題で緊張を高めることをせず、妥協の道を探らなければならないことを強調されていました。

また、既に慰安婦問題が女性の権利問題となっており、この問題で日本に

別れ際の握手を交わしながら、ローラバッカー議員は、「あなたの仰っている事に協力が出来ずに申し訳ありません。但し、もっと大きな懸案については、協力をしたいと思います」と仰いましたが、当時の私としては、泣きたくなる程実りがなく、落胆をした会合でした。

あれから約1年5カ月が経ちました。

あの時から話題になっていたISISは更に勢力を増し、シリアの領土の約3分の1、イギリスとほぼ同じ面積を支配するまでになっています。いくつものテロ が起こり、このままアメリカの不介入が続けば、中東から第三次世界大戦が始まる噂さえ流れています。その間、中国は人工島の建設によって領土拡張を既成事 実化していますし、北朝鮮は核実験、ミサイル発射など、制裁もお構いなしで勤しんでいます。昨年末には日韓両政府の間で慰安婦問題の合意がなされ、政府間で はこの問題を不可逆的に解決たと宣言されています。

私自身は、アメリカの政治事情について勉強しました。「『内政不干渉』という原則を知らず、外国の紛争にお節介を焼きたがるのがアメリカだ」というアメリカの政治への認識が、いかに間違っているかを知りました。

お会いしようとした政治家のうちのもう一方であったテッド・クルーズ議員は、現在共和党から指名選に立候補をされています。クルーズ議員にお会いしていたら、何て仰っただろうかと考える事もありますが、結局、大差は無いと思えます。

因みに、CAIR(アメリカ・イスラム関係協議会)が発表したアメリカに住むイスラム教徒からの意識調査では、彼らがアメリカの大統領に望むことは「イスラム・フォビア(恐怖症)に対処をし、イスラム教徒への偏見をなくすこと」だそうですが、アメリカに住む日本人への調査ならば「慰安婦像撤去をし、あらためて非難決議121号を無効にすること」となるでしょうか? いずれにせよ、これらの懸案は、アメリカの政治について一切の関係はなく、優先順位のリスト に載ることはないでしょう。

http://www.cair.com/press-center/press-releases/13365-cair-releases-results-of-muslim-voter-survey-ahead-of-primary-elections.html

 

振り返ってみますと、あの時感じた落胆よりも、自分が如何に何も知らなかったかが恥ずかしく思い返されます。さまざまな現状を考えれば、議員の強調され た、「歴史問題よりも、現実の安全保障を大切にしなければならない」という言葉が説得力を持ちます。

勢いと熱心だけで日米の友好関係に傷をつけていたかもしれない事を考えますと、末恐ろしくなりますが、日米の堅固な絆は守られているようです。

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これから、私が学んだ事を含めて、アメリカに住む日本人の目で見た世界をお伝えいたします。

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