アメリカの政治事情

核兵器保有国としての北朝鮮

ジョシュア・ポラックと言えば、「この人をおいて、北朝鮮について語ってはいけない」北東アジア地域の軍事情勢やミサイル拡散問題の専門家である。彼は米国が北朝鮮に対して先制攻撃を行なうか、否かの是非を、それぞれの利点と失点をあげて考えている点か…

シリアの化学兵器はどこから来たのか

シリアのアサド政権が自国民に対して化学兵器を用いて虐殺を行なったことは、世界が認めている。これらの化学兵器は恐らく、イラク戦争が起こる前に、フセイン政権によりシリアに運ばれたものだ。 Inside the Ring: Syria, Iraq and weapons of mass destruc…

『愛国者』らは、北朝鮮軍事危機を直視せよ

何人かの方々から北朝鮮の齎す脅威についてのご質問を受けた。諜報活動の専門家に言わせれば、残念なことにアメリカには北朝鮮に対する諜報網は無く、核戦争に至らなくても、韓国と日本は共に通常兵器での戦火による被害を被る距離にある。 Why North Korea …

アサド政権による自国民への化学兵器使用と『アメリカ・ファースト』

4月4日火曜日、シリアのアサド政権が、反政府派の拠点の一つとなっているイドリブ地方を化学兵器を用いた爆弾攻撃により、子供や、まだオシメを履いている赤ん坊を含む市民少なくとも70人を殺害した。 Chemical Attack in Syria Puts Focus on Trump Policy …

日韓の和解を妨げる両国のナショナリストたちに反対する

世界の悲劇と言われている過去の出来事の、その壮絶さを図る測りに、被害者の数の大きさが取り沙汰される。一概に『虐殺』と言われても、被害者の数は複数(最小は二人)から何百万人にまで登り、その悲劇がやはり数の多さで測られるのも、ある意味当然だろう。…

ロシア: 民主活動家アレクセイ・ナヴァルニィー逮捕に見る、独裁者プーチンの焦り

ロシア政府内の腐敗を暴露し、『プーチンが最も恐れる男』と呼ばれ、ロシア民主化運動の指導的立場である弁護士のアレクセイ・ナヴァルニィが逮捕された。彼が主催した「反腐敗デモ」はロシア連邦内の90カ所以上の都市に広まり、各地では何千人もの人々が集…

日本政府によるグレンデール慰安婦像撤去裁判への意見書提出の問題

カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像撤去を巡る裁判が、グレンデール近郊に住む日本人によって起こされたのは記憶に久しい。この裁判は現地の裁判所で一審、二審とも原告側の訴えが退けられているが、この判決を受け、原告側は先月、連邦最…

無策のトランプ大統領、『一つの中国』政策を伝える

大統領就任直前のトランプ氏は、ここ何十年かの外交慣例を破って、台湾の蔡英文からの大統領当選への祝辞を受け、電話会談を行なった。それに対するメディアや外交、軍事、安全保障専門家からの猛烈な批判を浴びたトランプ氏は、「何億ドル分もの武器を売っ…

トランプ・アメリカでは、対中国戦は勝てない。

挑発的で、『反中国』とも受け取れる発言をするトランプ氏の大統領就任をもって、トランプのアメリカは、南シナ海における中国の軍事拡張に真っ向から対決するのではないかと期待する声が、日本のメディアや言論人にはあるようだ。 期待や夢想、幻想、或いは…

中国との戦争を語る狂気のトランプ陣営

トランプ大統領のアドヴァイザーであるスティーブン・バノン氏は、5年以内の中国との戦争を示唆している。 Donald Trump's closest advisor Steve Bannon thinks there will be war with China in the next few years | The Independent こうしたトランプ政…

なぜヒラリーの民主党は敗退したか

トランプ氏が大統領選に勝利した原因は、トランプ支持者の熱意にはない。 トランプの選挙ラリーに行ってみたという日本人が「トランプ氏への熱気は、凄まじい。あの熱気を見て、トランプ氏勝利を確信した」と意見するが、『熱気』という、主観を通してしか測…

反日大統領トランプによる『TPP脱退』と、客観的な分析や証拠に反してトランプに心酔する日本人ナショナリストの奇怪

どこの国でも、ナショナリストたちは、自国を美化する神話には興味を示すが、自国へ深刻に影響を及ぼす現実の安全保障や経済にはあまり関心を持たない。彼らにとって守るべきは『名誉』や、「他者に何と言われるか」であり、国の平和や近代民主主義、自由主…

女性大行進とトランプの奇妙な共通点

トランプ新大統領の就任式から一夜明けた21日、昨日のトランプ大統領就任式を見ようと駆け付けた群衆を遥かに上回る数の女性たちが、首都のワシントンDCやシカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、タラハシーなど全米各地でトランプ大統領に反対するマーチを行…

ロシア工作員が笛を吹き、保守派が躍る---スタニスラフ・レフチェンコの証言(2)

昨今の一部保守派に見られるプーチン・ロシアへの期待感や親近感は、ヴラジミール・プーチンという独裁者の醸し出すイメージに操作されているだけで、ロシアの実態を無視した非論理的な感情論である。 ロシアは、近代化された中国の軍に対して立ち向かえるよ…

スタニスラフ・レフチェンコの証言---KGB・日本活動の実情

1979年米国に亡命した後、1982年には米国議会で日本におけるKGBのスパイ活動を暴露したスタニスラフ・レフチェンコの書いた「On The Wrong Side」を読んでいる。 レフチェンコはアメリカに亡命した後、ロシア国内での死刑判決を受けているが、KGBが彼の米国…

パレスチナという国家は必要か

パレスチナという国家がなぜ必要なのかについては、殆ど議論されていない。かつての独立国であり、現在中国共産党によって民族・文化浄化の危機に瀕しているチベットや、何世紀もに渡って独立を叫んできたクルドという国家ですら存在しない今日、なぜ迫害さ…

アンジェイ・コズロウスキー教授に聞く、対イスラエル非難決議とユダヤ人入植 (2)

AK: 次に、宗教的な面から見ていきますが、宗教的なユダヤ人にとっては、この地は神からユダヤ人に与えられた土地です。聖書の時代には、現在論争になっている「東エルサレム」や「ヨルダン川西岸地区」などが、当時の殆どのユダヤ人が住んでいた土地であり…

日本の右派が抱える危機(2) 各国の極右ナショナリストに近づくプーチン・ロシア

さて、『日本の保守派が抱える危機(1)』の冒頭にあげたジョシュア・ブレイクニー氏は、ホロコーストを否定しているだけではなく、9・11テロをアメリカによる自作自演と主張されている。典型的な『陰謀論者』である。それだけではない。彼は、旧ゾヴィエト時…

日本の右派が抱える危機(1) ホロコースト否定論者と南京否定論者

二年前、私は独自のラジオ番組を持つジョシュア・ブレイクニーというジャーナリストから、フェイスブックの機能を通してメッセージを頂いた。 「こんにちは。私はカナダ在住のイギリス人ジャーナリストです。私は自分のラジオ番組を持っていて、あなたをゲス…

アレッポに聞く、ロシアは約束を守るか

プーチン大統領の訪日を機に、ロシアが果たして信頼に値するか、交渉での取り決めを守るかの議論がなされているようだ。今日も北方領土問題が解決しないのは、アメリカの責任であるという声も何故かある。 「ロシア国民の多くが北方領土返還に反対している中…

ヒラリーよりもプーチンへの好感度を増す共和党支持者---WSJ

ウクライナ不法占拠から始まって、シリアへのロシア軍派遣、アメリカ大統領選挙に影響を与える事を目的とした、民主党と共和党への大胆なハッキング、シリア・アレッポにおける連日連夜に渡った大規模な空爆による一般市民への虐殺などを考えれば、2012年、…

東アレッポの陥落

アサド大統領の下、シリア政府軍による反政府軍拠点『東アレッポ』への包囲戦は、アレッポの陥落と、今も続く市民への虐殺で終局を迎えたようだ。 以下はナショナル・レビュー誌の報道である。 Russia Wins Again -- Aleppo Falls | National Review -------…

「日本 死ね」は、テロではない

先日、「なぜ日本は海外メディアに誤解されて報道されるのか」といった趣旨の記事を見かけた。この記事は、海外の日本に関する報道の基本に、日本に対する人種差別があると示唆していたが、全て単純に人種差別、戦前から今に続く日本に対する敵視などに原因…

ロシアによるハッキングと、レックス・ティラーソン(エクソン会長)国務長官登用への懸念

2012年の大統領討論に於いて、当時二期目の当選を狙うオバマ大統領は、共和党からの対候補者であるミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事の「ロシアはアメリカの安全保障に対する一番の脅威である」と主張した事に対し、「80年代の政策だ」とあざ嗤った…

「トランプ氏の言葉を、文字通り受け取らず真剣に受け取れ」というナンセンス

トランプ氏の選挙中の公約から始まって現在に至るまで、トランプ氏ほど、「既成の政治家とは違い、分かり易い言葉で、そのままをハッキリ語ってくれる」と評価を受けながら、実際には彼の真意が全くの不明である次期大統領もいない。メディアや批判者らは、…

真珠湾から75年、戦後自由主義社会と世界秩序の擁護者となる安倍・日本

以前、マイケル・オースリン氏の書かれた安倍首相に関する記事をご紹介した事がある。 オースリン氏は、元イェール大学助教授であり、現在は保守派シンクタンクである「アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート」の常勤研究員、ウォール・ストリー…

保守派は「偽情報」で騙すな、「偽情報」に騙されるな。

先月始めの11月2日、ヒラリー・クリントン元国務長官が、ワシントンDCのピザ・レストランにおいて「マネー・ローンダリング」から始まり「子供相手の性犯罪」に関与している、というニュースが流れた。これは意図的に捏造された偽ニュースであり、社会的責任…

リベラル極論とナショナリズム極論の狭間で

以前も書いたが、私は、日本軍による『南京30万人大虐殺』や『南京40万人大虐殺』などは、荒唐無稽なプロパガンダであると考える。 ところがこの『30万人説』や『40万人説』に対する反発として、これらを否定する為に、『虐殺は起こらなかった説』や『(虐殺…

トランプ次期大統領の掲げる『関税35%』政策の危険

多くのトランプ支持者は、「トランプ氏は思ったことを、そのままハッキリとわかるように言ってくれる」ことを、既成の政治家には無いトランプ氏の魅力と主張してきた。この、「トランプ氏は、自分の考えをそのまま分かり易い言葉で述べる」とは、一部支持者…

911テロ首謀者による「新たなテロの波を防いだジョージ・W・ブッシュ」

ローン・ウルフ型のテロが急増する中、911テロ後にアルカイダのトップ首謀者、カハリド・シーク・モハメッドを尋問していたジェームズ・E ・ミッチェル氏の回顧録が出版された。その中で、911テロ後に、更に新たなテロ攻撃を多発させようとしていたアルカイ…