トランプ大統領の今日の敵

昨日トランプは、バスをチャーターして、民主党、共和党両党から成る全ての上院議員をホワイト・ハウスに招き、北朝鮮問題についてのブリーフィングを行なった。ところが、ブリーフィングを終えた上院議員らがワシントン・ポストに語ったところによれば、このブリーフィングにおいて、政策や対策、トランプ政権が何をしようとしているのかも含め、何ら新しい情報は無かったようだ。ワシントン・ポストは以下のように書く。

Trump administration talks tough on North Korea, but frustrated lawmakers want details - The Washington Post

 

『ブリーフィングを終えた上院議員らは、政権が現在の北朝鮮政策について、また北が進める核兵器開発計画にどのように対処するかの計画が知らされない事に不満を表した。「政権側は、正しい事をしようとしている筈だ」或る共和党議員は言う。しかし両党の議員は「従来の方針とどのように違うのか」全く聞かされなかった事について不満を漏らした。ブリーフィングは北朝鮮に対して、また北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験についてのごく簡単な質問への解答さえ提供しなかったようだ。何人もの上院議員は端的に「どんな政策なのか」と聞いたが、説明を行なった係員から、「具体的には殆ど何も聞かされなかった」という。』

北朝鮮問題に関するブリーフィングが急きょ上院議員らに対して行なわれたという事は、むしろトランプ氏が今まで知らなかった何かを学んだ為の反応、或いはトランプ氏が感情的に高揚した為ではないだろうか。ところがトランプ氏が驚いただけで、上院議員らはこれらの情報については既に熟知していたのだろう。

ロイターのインタビューに答えたトランプ氏の発言を読むと、トランプ氏は北朝鮮情勢についていくばかりかを学んだようで、過去の挑発的発言から後ずさりしている事が伺える。本格的な軍事紛争の可能性は未だあるものの、トランプ氏は「外交的解決」を希望しているようだ。

しかも何故か、中国の習近平主席について絶賛をしている。「習主席はとても努力をされています。彼は混乱や死などを望まれていない事は確かです。彼はとても良い人物で、私は彼についてよく知る事が出来ました。」

金正恩については、「彼はまだ27歳です。彼の父親が死に、政権を受け継ぎました。言いたい事は色々とあるでしょうが、難しい事です。特にあれだけの若さでは、難しい事です。彼について良い評価をしているのでも、していないのでもありません。ただ、難しい事を金正恩が行なっているのだと言っているのです。彼が正常な判断を行なう人物かどうかは、私は意見を持っていませんが、正常な判断を行なう人物であると望んでいます。

 

また、ロイター記事は続く。「しかしながらトランプは、韓国に対し、およそ10億ドルかかると思われるTHAAD(戦域高高度防空ミサイル)システムの費用負担を望み、またソウルとの貿易不均衡を解消する為に、韓国との自由貿易協定を解消するか、再交渉したいと語る。」韓国はこの要求に対し、「10億ドルも払えない」

北朝鮮問題が深刻となり、挑発的発言から一転したトランプ大統領だが、この期に韓国に対する『軍事費負担要求』と『貿易不均衡解消』を要求している。韓国がこれらの要求を呑まなければ、「米朝の防衛協定を破棄する」とでも脅迫するのだろうか。勿論、北朝鮮関係の緊張が高まっている最中、米朝貿易不均衡是正の要求に言及すれば、安全保障と引き換えに経済交渉を行なおうとしていると理解されても仕方がない。韓国はこの要求に対し、「10億ドルも払えない」と猛反発をしているが、韓国にしてみれば、意図的に北朝鮮との関係の緊張を高めるだけ高めておいて、安全保障の防衛を、揺すりたかりの手段に用いられていると感じても不思議はない。

なるほど、トランプ大統領にとって今日の敵国は、中国や北朝鮮よりも、韓国となったようだ。

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因みにトランプは昨日、一昨日と、何とカナダとの間に貿易戦争を始めようとNAFTAの解消を提案した。米国とカナダとの間に貿易不均衡は殆ど無い。今まで中国を相手に行なってきた批判を、そのままカナダに入れ替えた形だ。カナダからの材木に20%の関税を課すと主張したが、昨日はNAFTAの解消を訴えた。トランプ大統領はNAFTA(北米自由貿易協定)を解消すると発言しているが、NAFTAを解消すればFTA(自由貿易協定)が自動的に入れ替わる事を知らないようだ。80年代に結ばれた「自由貿易協定」が発動されれば、米国内の多くの製造業がカナダに移転すると考えられる。NAFTAに否定的なカナダ人が主張している不公平を、米国が体験する形となる。

 
NAFTAとFTA共に破棄されれば、農産物の輸出入が著しく阻害され、これらの貿易そのものが成り立たなくなる。
 

NAFTA(北米自由貿易協定)を解消すると宣言してから一夜明けた今日、トランプ大統領は以下のように宣言している。「私は今から2,3日の内にNAFTAを解消しようとしていました。メキシコの大統領、私は彼と良好な関係を築いていますが、彼が電話をくれました。またカナダの首相、彼とも良い関係を築いていますが、彼も電話をくれました。そして私はこの紳士らがとても大好きです。彼らから電話を貰いました。彼らは『NAFTAを解消するのではなく、再交渉をして頂けますか?』と言いました。私は彼らが大好きですし、彼らの国も非常に尊敬しています。彼らとの関係はとても特別なものです。ですので言いました。「解消は保留としましょう。もう少しフェアな取引ができるか、見てみましょう。」

 

トランプが、選挙期間中何度も不満を漏らしていた通り、日本と韓国との防衛協定を解消すると宣言する事は、決して想像に難しくない。そして次の日には言うかもしれない。「私は今から2,3日の内に防衛協定を解消しようとしていました。韓国の大統領、私は彼と良好な関係を築いていますが、彼が電話をくれました。また日本の首相、彼とも良い関係を築いていますが、彼も電話をくれました。そして私はこの紳士らがとても大好きです。彼らから電話を貰いました。彼らは『防衛協定を解消するのではなく、再交渉をして頂けますか?』と言いました。私は彼らが大好きですし、彼らの国も非常に尊敬しています。彼らとの関係はとても特別なものです。ですので言いました。『解消は保留としましょう。もう少しフェアな取引ができるか、見てみましょう。』」

要は、苛められる相手を「少し苛めてみたかった」のだろう。苛めた後は、丁寧に「交渉をしてみませんか」と勧められ、いかにも自分が上位であるかのように感じたのかもしれない。

諜報の専門家であるジョン・シンドラー氏は書く。「もしトランプがこの『F*** You! いや、ふざけてみただけ』の宣言を平壌に対して試したら、北東アジア付近やハワイには近づくな。」

 

どのヒラリー・クリントンのemailよりも国家安全保障と世界平和にとって深刻な脅威である、この無責任でナルシシズムの激しい、無知な苛めっ子に、よくよくの注意を払うことなく投票したのは、一体誰なのだろう。