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『愛国者』らは、北朝鮮軍事危機を直視せよ

何人かの方々から北朝鮮の齎す脅威についてのご質問を受けた。諜報活動の専門家に言わせれば、残念なことにアメリカには北朝鮮に対する諜報網は無く、核戦争に至らなくても、韓国と日本は共に通常兵器での戦火による被害を被る距離にある。

Why North Korea Is a Black Hole for U.S. Intelligence | Observer

 
正直に言えば、国民の間に国防の意識が強い韓国よりも、日本の方が危機に直面していると指摘する声がある。北が南を攻撃すれば、韓国は必ず軍事報復を行なうし、反北ナショナリズムが高まる事は避けられない。韓国の核化を反対する声も殆ど無いだろう。しかしながら、日本のうちには未だ核に対するアレルギーが圧倒的であり、自らが武器を持って国防にあたるという意識がすこぶる低い。日本国憲法上の足枷を考えても、北に対する軍事報復は限られていると見る方が現実的だろう。北がいずれかの国を先制攻撃するならば、世界第9位の軍事力と15万人の在韓米軍を抱える韓国よりも、世界11位の軍事力と5万人の在日米軍を抱える日本の方が攻撃しやすい事は常識の範疇だ。

 

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いずれにせよ、実際に米軍が先制攻撃するにしても、核兵器を抱え、韓国と日本が人質に取られているような状況を考えれば、「中東の方が散歩のように容易である」と軍事問題専門家が嘆くのも理解できる。

The Real North Korean Missile Crisis is Coming | World Affairs Journal

 
北朝鮮が世界で最も厳しい経済制裁を既に受けている点を考慮しても、通常の報復処置は既に行なわれており、世界第二の軍事力と経済力を誇る中国とロシアの出方も予測がつかない。中ロとも、米国のカール・ヴィンソン母艦に対抗する形で戦艦を北朝鮮近海に運航させているが、特にロシアは、中国ですら賛成した国連による北朝鮮非難声明を阻止する拒否権を数日前に発揮している。万が一、米国が幾つもの妥協の末、中国からの協力や連携にこぎつけたとしても、プーチン・ロシアは、自らの存在感を誇示する為に敢えて軍事介入するかもしれない。
それでも、だからと言って25日に何かの軍事行動がいずれかの国によって起こされるとか、Xデーは何時いつか等のパニックに陥る必要も無いと思う。金正恩は予測不可能な狂人ではない。彼の望みは全て金王朝存続であり、自らの権力維持であり、核兵器開発にしても、その為の手段でしかないのだ。万が一北が先制攻撃をすれば、彼の王朝は必ず倒されるだろう。現在北がそうした危険を冒してまで先制攻撃を加えるとは考えにくい。
 
しかしながら、日本が歴史問題を理由とした安易な反韓ナショナリズムにうつつを抜かす余裕は全くない。日本は米国を軸とした韓国との軍事協力関係を結ぶ必要があるし、戦前の日本を彷彿させるような紛らわしい国内政治をもって韓国内の反日ナショナリズムを高めたり、懸念を強める愚かさからは脱却する必要がある。
 
日本が信頼される為には、戦前の日本の言動の正当性を強調する事には無く、現在の日本と戦前の日本のシステムや哲学が異なっている点を強調する方が遥かに正しいやり方なのだ。ナショナリストらの『戦前の日本は素晴らしかった』史観では、実際の軍事脅威を前にしても、日本の安全保障は守れない。この期に及んで未だ『嫌韓』ナショナリズムや慰安婦像に目くじらを立てるナショナリストらの主張は、日本の国益にとって百害あって一利なしである。
 
日本の安全保障は、どんな名誉意識よりも優先されなければならない。ナショナリストらの中には歴史問題ゆえに反米主義に凝り固まった人々すらいる。そういう人々に限ってトランプ支持者であったりするが、トランプ大統領の関心は、シリアやアフガニスタン、北朝鮮問題には無く、昨日は「メキシコとの国境の壁」に、今日は「カナダとの貿易不均衡」に移ってしまっている。注意欠陥多動性障害を抱えたトランプという大統領には、複雑な国際問題をじっくり腰を据えて長期的戦略練る能力が欠けているのだ。
 
勿論トランプは、思い出したように北への挑発的言動を繰り返すだろう。それでも彼に長期的政策を熟考する能力に欠け、現在のホワイトハウスは、ニューヨークの不動産業者とワンピースやハイヒールのデザイナーである娘夫婦ら、素人集団によって牛耳られている点は忘れるべきではない。マティス国防相の発言ではないが、アメリカは日本が自らの子供たちの安全を心配する以上に、日本の子供たちの安全を心配する事は出来ないのだ。
 
日本が必要としているのは、左翼の自虐史観でも、反韓日本至上主義でもなく、安全保障と経済発展を重視する「穏健中道の現実主義」である。例えここ何日かの危機を脱却したとしても、北朝鮮からの脅威がこれから更に高まっていくことに間違いはない。世界で起こる殆どの戦争や紛争は、意図した計画に基づいてではなく、判断の誤りや勃発的出来事によって引き起こされるのが常である。北朝鮮問題の『勃発』が後日に延ばされれば延ばされる程、大きな災害となる事も明らかだ。政府には同じ脅威に直面している韓国との間の軍事協力関係を結ぶ必要があるし、国民にはそうした現実的政治判断を支持する必要がある。