トランプ外交の非礼: オーストラリアとの『難民取り決め』の背景

トランプ氏が「マヌケな取引」と罵倒したオーストラリアとの交渉は、オバマ政権とオーストラリアが11月に取り決めた、主にイラン、マレーシア、ヴェトナムなどからの1,250人の難民の受け入れを指す。彼らは既に厳密な身元調査が行なわれており、そのうちの約二割は「経済移民」と見られているが、残りの八割は難民である。
 
現在これらの難民は、オーストラリア管轄下のナウルとパプアニューギニアの保護センターのもとに収容をされているが、収容日数の平均が470日を超え、その環境の劣悪さから、うつ病や自傷行為、自殺などが発生しているという。こうした状況は、オーストラリア政府に対する人権団体からの非難や世論からの圧力となっており、オーストラリア政府としても、トランプ大統領との間に取り決めの順守を確認したかったであろう点は理解できる。

 

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         オーストラリア、ターンブル首相とドナルド・トランプ大統領

 
去年9月、世界中の6,530万人に上る難民の処遇問題について国連難民サミットが開かれた。その時の各国への支援要求に呼応する形で、オーストラリアのターンブル首相は、エルサルバドル、ガテマラ、ホンジュラスで起きる犯罪や暴力行為から逃れ、当時コスタ・リカに収容されていた難民を、バラク・オバマ前大統領の要請により受け入れたている。オーストラリアは南米からの難民受け入れと引き換えに、ナウルとパプア・ニューギニアの保護センターに収容されている1,250人の難民受け入れの約束をアメリカと交わしたのだ。

UN refugee summit: Australia to take in Central Americans and maintain annual intake - ABC News (Australian Broadcasting Corporation)

 
ターンブル首相は、オーストラリアが可能とした年間18,750人の難民受け入れ枠内に、南米からの難民を収めると約束しているが、この取り決めは、ターンブル首相にとっても苦渋の選択であり、オーストラリア野党のビル・ショートンから「人間交換だ」と批判を浴びた交渉だった。

Is the Refugee Deal With Australia ‘Dumb’? - The Atlantic

 
オバマ前大統領からの政権を受け継いだドナルド・トランプ大統領が、この取り決めに不満を持ったとしても、その非はオーストラリアやターンブル首相には無い。
 
トランプ大統領はオーストラリアとの取り決めを、電話越しのターンブル首相相手に「マヌケな取引」と呼び、その後「今、このマヌケな取引について学んでいる」とツイートしている。この取り決めに関する予備知識の無いまま、外国首脳相手の電話で、その交渉を「マヌケ」と呼んでいるのだ。
 
自由社会のリーダーとして、世界中に散らばる6,530万人の難民の処遇を何とかしようとしたオバマ大統領の決断に不満があるとしても、それを同盟国の首脳相手に当たり散らしていては、外交が成り立たない。トランプ氏のこの電話会談やその後のツイートは、一国の首脳の言動として、弁護される類のものではない。
 
勿論、トランプ大統領がターンブル首相を指して「大統領」と記したことも、オーストラリアに対する非礼への詫びとはならないだろう。