米議会はトランプ大統領という偽共和党『ファウスト』に立ち向かえ

ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ政治について、非常に悲観的でしかも的を得た分析をしている。

The Republican Fausts - NYTimes.com

 
因みに、ニューヨーク・タイムズ紙と言えば『リベラルメディア』としか思い浮かばず、左翼メディアとさえレッテルを貼れば、それでその主張の正当性を打破できると勘違いしている人々がいるが、実際の記事は、共に保守派メディアとして名高い『ウォール・ストリート・ジャーナル紙』にも寄稿され、以前は『ザ・ウィークリー・スタンダード誌』の主席編集者であった保守派言論人のデイビッド・ブルックス氏が書かれている。
 
『ニューヨーク・タイムズ紙』と言っても、保守派言論人の記事を掲載する場合が多々ある。こういった公平さは、『ブレイトバート誌』のようなトランプ大統領お抱えの『アルト・ライト・メディア』にはなく、正統派アメリカン・ジャーナリズムの健全性を示していると言える。
 
ブルックス氏の記事を以下に訳す。
 
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『議会にいる多くの共和党議員はドナルド・トランプという『ファウスト(悪魔)との取引き』を行なったようだ。共和党議員らは、トランプを人間として特別に尊敬している訳ではない。トランプ政治手腕を信頼してもいない。主要な政治課題において、トランプに同意している訳でもない。しかし彼らは、トランプがその支持者をしっかり握っている事には敬意を払っている。彼らは、トランプが彼らの提出した法案に署名をする事と、過激な急進派や過換気となっているメディアと協調していると見られない事だけを期待している。
 
しかしながら、まず第一にトランプ政権は共和党政権ではない。民族国家主義政権なのだ。トランプは就任演説においても、民主党と等しく共和党を侮辱している。(スティーブンス)バノン主義は実際の政策作りにおいて、共和党の通常を完全に破壊しようとしている。
 
トランプ政権は、完全な反(自由)貿易と急な舵切りを行なっている。トランプの経済政策への直感は協調主義であり、自由市場ではない。しかもトランプの外交政策は、まるでバラク・オバマ前大統領によって背後から操られているかのように、世界の舞台から積極的に退こうとしている。ポール・ライアン共和党下院議長をあからさまに批判する人物はホワイト・ハウスでの職を与えられており、レインス・プリーバス共和党全国委員会委員長は、死んだようにトランプにつき従っている。
 
第二に、もしトランプのイデオロギーが有害なものではないにしても、彼の無能さこそが害となっている。この政権がアマチュアの集まりであると言えば、アマチュアに対して失礼だろう。最近の移民・難民入国禁止に関する特別指令は、通常当然必要となる専門組織への相談や法的アドバイスを受けずに書かれ、署名がなされている。こんな様子だから、幼稚園に通う子供でも気付けるようなエラーも見過ごしてしまっているのだ。
 
トランプ政権は政府というよりも、ブロガーとツイッター発信者の小さな集まりであり、実際に成果を出すために必要となる人々とは殆ど意思疎通がとれていない。こんな調子では世界の困難が降りかかっても対処できる筈がない。
 
第三に、狭量さが全ての政策に吹き込まれている事には疑いが無い。しかも誰でもこの政権と協調しようとすれば、その悪臭を共有するしかないのだ。政権側は、ただ難民の身元調査作業を更に厳密にする事や、難民受け入れ総数の上限を5万人とする事も出来た筈だ。しかし政府はさらに踏み込んで、イスラム教を挑発してみせた。政府は単に移民申請を厳格にすることも出来たのだ。それなのにトランプは、わざわざ全てのメキシコ人を侮辱してのけた。他の共和党議員たちは意外にも、テロへの戦いはイスラム教やアラブ人への戦いではないと強調してきたが、トランプは意外にも、全く逆の主張を強調した。共和党が人種(差別)クラブだという偏見は、絶えずあったのだが。

 

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     大統領執務室のトランプ大統領とマイケル・フリンとスティーブン・バノン

 

第四に、最近の記憶で、どのレベルにおいても、この政権ほど冷酷さが特徴として挙げられる政権はない。トランプ政権は厳しく、決して温かみがない。猛爆撃を受け、父親を亡くした8歳のシリア人少女に、更なる苦しみを課すのにも躊躇が無い。強制送還の誓いはこれから何年も、バラバラにされた家族の嘆きをテレビで見る事になる。
 
トランプ政治のこういった特徴は、時間と共に改良されることは無い。前ブッシュ政権の高官であったエリオット・コーヘンは、アトランティック誌に書いている。「問題は、トランプの癇癪と性質にある。これは決して良くはならないし、権力がトランプと彼の側近を毒するに従って、更に悪くなるだけだ。恐らくこの政権は、惨事のうちに幕を閉じるだろう。無視できない程の国内のデモと暴動、外国との経済的関係の機能不全、主要な同盟の崩壊や、一つ二つの新たな戦争、中国との戦争さえ始まるかもしれない。彼の政権が4年、8年ではなく、弾劾や、憲法修正第25条に定められた通りの『大統領職務遂行不能』によって大統領職務を罷免されるかもしれない。」

 

危険の兆候は豊富にある。遅かれ早かれ、悪魔との契約を交わした共和党議員たちは、ニクソン大統領の下でそうであった通り、二つの選択肢に直面するだろう。彼らは、トランプに反対し、彼のツイートで罵倒されるか、或いは恥ずかしそうにトランプに従い、彼のシミを一生負うかだ。

 

トランプの閣僚たちはいずれも優れた人々だ。しかし大統領就任以来の10日間で、この政権が尋常な政権ではない事を明らかにしている。この問題は無視できないのだ。この政権は、個人的な忠誠か、さもなければ斧による処罰を求める冷酷で無能者の集まりである。

 

ジョン・マケイン議員やリンゼイ・グラハム議員は共和党内に反対派グループを作っている。コリンズ議員、アレクサンダー議員、ポートマン議員、コーカー議員、コットン議員、サッシー議員ら、その他の尊敬に値すべき共和党議員にも選択が迫られている。

 

どの政権の政策においても、賛成出来る政策もあれば、反対する政策もあるだろう。しかしこの政権は、『共和党の存続』と『国家の存続』への脅威である。遅かれ早かれ、全ての人が自分の立つ位置を選択しなければならない。そして永遠に、その選択の結果を負う事になるだろう。

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選挙期間中トランプ氏は、「もし私が5番街の路上で誰かを撃っても、一人の支持者も失わないだろう」と豪語し、支持者の忠誠心を強調してみせた。実際に会話をした事のあるトランプ支持者は、「あんたたちは分かっちゃいないんだ。もしミスター・トランプが俺の家にやってきて、いきなり俺を撃ったとしても、俺は血を流しながらでも投票所に行って、彼に投票をするよ」と答えている。

 

当然ながら、彼らが実際にトランプに銃で撃たれた場合どう行動するかはわからない。しかしながら、「5番街で誰かを」或いは「いきなり家にやって来て(俺を)撃った」としても、それでもトランプを支持すると明言出来るのは、トランプと支持者らの関係が、決して原則や倫理、政策、約束をベースとした信頼で結びついているのではないからだ。彼らはトランプの行動であったら、どんな不正や犯罪(*1)であっても許すだろう。

 

事実、「銃で撃っても支持を続ける支持者」とは、つまり「どんな違法行為、殺人行為、腐敗、売国行為、裏切り行為でも支持を続ける」支持者を意味する。だからこそトランプ支持者たちは、まるで教祖の批判を絶対しないカルト信者と同じだと軽蔑されているのだ。彼らは決してトランプ大統領やその政権への正しい評価について聞くべき相手ではないし、その声を恐れるべき層ではない。

 

狂信者の連携を恐れ、頼みとした政治は、必ず悪い結果をもたらす。議会は近い将来、狂信者による政治に立ち向かわなければならない。議会が止めなければ、誰がトランプ政治のもたらす惨事を防ぐのだろう。

 

追記:トランプ支持者は、「ヒラリーを牢獄に入れろ」を叫んでいたが、そこまでの憎しみは「ヒラリーは私的サーバーを使うことで国の安全保障を危機に陥れたからだ」と説明する。しかしながら、34%のトランプ支持者たちは、トランプが私的サーバーを使用する事を認め、法に違反して勝手にペンタゴン内でコンピューターを接続し、機密情報を外国に漏らした事さえあるマイケル・フリン元将軍の国家安全保障アドバイザー起用には、異を唱えていない。

TNY: Michael Flynn had 'forbidden' internet connection at the Pentagon - Business Insider

また多くのトランプ支持者たちは、ヒラリーと外国からの献金には腐敗を訴えるが、外国からの金銭の流れを示す『納税還付証明書』をトランプが公表する必要はないと考えている。

Trump Supporter Says Polls Are Wrong, Most People Don’t Care About Trump’s Tax Returns | Mediaite

また、ヒラリーに関する悪い噂ならば、インターネット画面に現れ、クリックによって脈絡のないニュースを発信する『フェイク・ニュース』でも信じるが、トランプの不正や不手際への批判は、主要メディアによる報道であっても、全て『フェイク・ニュース』と一蹴する傾向が強い。