ケベックで起きた白人至上主義者によるイスラム教寺院への襲撃

ケベックのイスラム教寺院で起きた痛ましい虐殺事件は、外国人嫌い、反イスラム主義、反フェミニズム主義で、白人至上主義者である、アレクサンドル・ビソネットが犯人であり、イスラム教徒が犠牲者である。事件の現場となったこのイスラム教寺院の玄関には、去年夏、血まみれのブタの頭が贈り物のようにラッピングされ放置されていた。ブタを不浄の動物として嫌うイスラム教徒に対する嫌がらせであるが、動物虐待の跡が見られ、犯人の精神異常性が疑われていた。イスラム教徒や外国人に対する憎悪をあらわにする白人至上主義者の台頭は、この地域で目立ってきていたようだ。
 
ところがこの事件では、アメリカ右派のよりどころである「フォックス・ニュース」などが、犯人を「モロッコ人」と報道し、イスラム教徒による犯行であると示唆している。モロッコ系の男性は事件の目撃者であり、警察に通報をした人物だ。

 

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             事件後、心情を語る犠牲者の遺族

 

それでもトランプ支持者たちは、この事件をもって「だから我々はイスラム教徒の難民を受け入れる訳にはいかない」と主張する。犯人は白人至上主義者であり、モロッコ人は通報をした目撃者であると指摘しても、「それはフェイク・ニュースだ」と一蹴する。自らの描く筋書きと現実が一致しなければ、真実を伝える報道を全て『フェイク・ニュース』と切り捨てる類の人々が増えているが、彼らはフェイク・ニュースの何たるかも理解していないのだろう。
 
偏っているのはトランプ支持者だけではない。
 
悪い事に、ホワイト・ハウスのショーン・スパイサー報道官は、「この事件は、なぜ我々が用心深くあるべきかを教えてくれ、なぜ大統領が、従来のように対応に追われるだけでなく、もっと積極的なステップを取ろうとしているかを思い起こさせる酷い事件である」と述べている。

The White House just cited the Quebec mosque attack to justify Trump’s policies | Toronto Star

トランプ支持者や大統領府の人間が、いかに偏った情報しか得ていないかを物語っている。
 
常識で考えれば、例えもし、この事件がイスラム教徒による犯行であったとしても、6人のイスラム教徒が殺害され、多数の負傷者を出した事件の後に、「だから我々は、安全の為に、イスラム教国からの移民を受け入れるべきでないのだ」と報道官が発表するべきだろうか。
 
過激イスラム教徒によるテロに対しては、厳しい態度で臨む必要がある。またヨーロッパに押し寄せた多くの難民が犯した犯罪についても、知らない振りをするべきではない。それでも、祈りを捧げている最中のイスラム教徒が犠牲となった殺人事件の後に、過激派やヨーロッパへのイスラム教徒移民が犯した犯罪の非を、平和の内に共存しているイスラム教徒に押し付けて良い筈がない。
 
 
犠牲となった方の魂に安らぎが与えられ、ご遺族の方に慰めがあるように、心からお祈り申し上げたい。