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プーチン露大統領訪日と、国連安全保障理事会対イスラエル非難決議に見る安倍外交の失態

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国連安全保障理事会は、先週金曜、イスラエルのヨルダン川西岸地区入植を非難する決議を行なった。

イスラエルのネタヤフ首相は、そもそもこの国連安全保障理事会決議の背後には、任期切れの迫ったオバマ大統領の意向があった事を指摘している。アメリカは拒否権を行使しなかっただけでなく、オバマ大統領の率先により、イスラエル入植への非難決議に至ったようだ。
 
この非難決議は、当然ながらイスラエルとアメリカの保守派によって厳しい批判をされている。ネタヤフ首相は「イスラエルは(右の頬を打たれて)もう一方の頬を(更に打たれるように)差し出すようなことはしない」と宣言した。
 
イスラエルの入植は「二国間解決案」を台無しにするという意見は、そもそも「二国間解決案」が既に破綻している現実を全く無視している。そしてその原因はイスラエルにではなく、過激化の一途を辿るパレスチナ側にある。

 

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そもそも「二国間解決案」が成功する為には、交わした約束を実現させるとの信頼に値するパレスチナ側、或いはアラブ側の指導者が必要である。ところが、パレスチナ側の指導者であるアバス大統領は、イスラエル人を攻撃するパレスチナ人テロリストやジハーディストの遺族などに多額の給与や年金を支払うなどして、イスラエルに対するテロを奨励している。それでも彼がパレスチナ人からの信頼を得ているなら、まだ期待も出来るが、ガザ地区を支配しているのは、イランから武器を供給されている過激派のハマスだ。であるから、男女平等、信教の自由、言論の自由を保障するイスラエルの統治下に住んだ経験のあるパレスチナ人の多くは(特に若い層は尚更)、実はイスラエルの統治下に住んだ方が良かったと答えている。それはそうだろう。ハマスが人権を尊重することは無く、ハマスに牛耳られているパレスチナ政府は国民の自由や権利を認める政府ではない。公けに伝えられている「反イスラエル」の建前とは異なり、エルサレムに住むパレスチナ人の半数は、パレスチナ人としての国籍よりも、イスラエル国籍を希望しているのが実情だ。
 
二国間解決案だけでなく、和平に向けた交渉と実現を拒否してきたのは、イスラエルという国家の存在を全く認めようとしないパレスチナ側である
 
ハマスがISISとの協力関係にある事を鑑みれば、ガザ地区のパレスチナ人がハマスとISISの支配下に置かれる危険の現実を考慮するべきだ。権利や人権の概念の成立した近代民主主義国家であるイスラエルにではなく、過激派ハマスとISISの支配下に置かれる事は、誰よりもパレスチナ人にとってより大きな悲劇となる事がなぜ無視されるのだろう。
 
人権や法による支配という概念の全くないイスラム教国や共産主義国、専制主義国が居並び、多数決で判断をする国連には、そもそも正義はない。イスラエルに対する国連総会の非難決議は、イスラエルに対してロケットを発射させ、テロを奨励するハマスやISIS、北朝鮮、ロシアやイランのような無法国家に対しては殆どなされない。国連が今までイスラエルを不公平なまでの非難の標的としてきた事は、退陣が近い潘事務総長も認めている。

UN Head Ban Ki-Moon Admits Anti-Israel Bias in Departing Speech - Breaking Israel News | Latest News. Biblical Perspective.

 

今回の非難決議は、ただの『宣言』としての価値しか持たない「国連総会」での非難決議ではなく、経済政策や軍事介入などの実質的な拘束力を発揮できる『安全保障理事会』での非難決議だ。
 
勿論この決議は、来月20日に就任するドナルド・トランプ次期大統領によって批判されている。経済政策や軍事介入などが更に提案されれば、トランプ新政権は拒否権を行使するだろう。トランプ次期大統領だけではなく、米民主党議員からの批判すら出ている。イスラエルのネタヤフ首相は、決議に賛成票を投じた14カ国に対する反発を表明し、これらの国々の大使を呼び出し、しばらくの協力関係の停止や経済支援中止を発表している。
 
日本はこの決議に賛成票を投じた国の一つだが、この賛成票は、道義的にも外交的にも大きな誤りと言える。
 
外交的な誤りと言えば、安倍首相は12月15日、16日と、プーチン大統領を日本に迎えたが、雨の中、ロシア側からは何の連絡も無いまま到着時刻を2時間遅らせるという非礼を受けている。当然ながら、和平条約締結や領土問題解決の交渉の実質的進展は見られなかった。ロシアにとって、和平条約の締結は必要ではないのだ。北方領土4島返還はおろか、ロシアには2島返還する意図もないのが現実だ。
 
プーチン大統領は、G7の一員としての安倍首相、並び日本の国際的立場を利用し、それを足蹴にすることで、西側に対する優越を見せつける事には成功した。

How Putin Outplayed Abe in Japan | The Diplomat

二島返還でさえ非現実的である事は、「返還」の際の文書・文言をどのように同意するか真剣に考えれば、わかり切った事実だ。「返還」ではもともとその領土が日本のものだったことを意味し、ロシア側は絶対に同意しない。かと言って「譲渡」では日本側が反対するだろう。「譲渡」の文言でも構わないという日本からの主張がないのと同じように、「返還」の文言に同意するロシアからの主張はない。
 
領土返還を悲願とする日本側は、今回のロシア大統領訪日の成果を何とか見出そうとしている。ナショナリストらは「ロシアとの友好関係は中国からの脅威に対抗する為に必要である。今回の訪日は、その協力関係を謳った意味で重要だ」と痛ましくも自身を慰めているが、「万が一の日中の軍事衝突に際して、ロシアが中国を選ぶことは常識」と、西側の多くのメディアが指摘している。

 

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中国からの脅威に対抗する為には、日本としては勿論アメリカとの同盟関係の強化も大切だが、特に同じ脅威に直面する韓国、インドとの協力関係が欠かせない事は今までにも述べてきた。またイスラエルとの強い協力関係が重要であるとも主張してきた。
 
 
 
 
イスラエルにとって重要であり、道理にも叶わない今回の安全保障理事会の決議は、保守政党である自民党が政権与党である日本としては反対し、イスラエルとの近い関係を強調するべきだった。急進的左翼として有名なオバマ大統領の任期切れが間近であり、来月にはネタヤフ首相に心酔するドナルド・トランプ政権が誕生する事を考えても、日本が反対票を投じていれば、イスラエルとアメリカ新政権との外交関係も優位に運べただろう。
 
近代民主主義国家を足蹴にし、KGBの申し子であるプーチン・ロシアに期待するところに、日本のインテリジェンスの無知、日本外交の致命的な甘さがある。ロシア・プーチン大統領に対する接待に真心が込められれば込められるだけ、日本側の子供のような純真さ、もっとハッキリ言えば幼稚さが強調される。
 
蛇足ながら、ナショナリストとパトリオット(愛国者)との違いが判る一例を挙げよう。
 
ロシアのプーチン大統領は訪日中、安倍首相に対して「野党が(内閣不信任案提出などで)安倍首相に反対するようなことがあれば、犬を嗾けましょう」と言い放った。勿論、野党のくだらない主張には嫌悪感を覚える事が多々ある。それでも、領土問題はおろか、和平条約締結の見通しすら立っていない軍事的敵対国の首脳からの圧力を借りて、国内の反対者の言論や主張を封じる事を快く思うような人々は、間違いなくナショナリストである。真の愛国者は、たとえ反対意見に対する弾圧であっても、そのような外国からの干渉は自国の主権に対する侵害であると不快に思うだろう。実際、プーチンの言葉は、日本の政界にも影響力を発揮できると言っているのに等しい、限りない非礼であり、侮辱なのだ。
 
「日本はロシアとは違います」と安倍首相は答えるべきだった。そうした指摘の無いところに、日本の自称保守派の多くはナショナリストであり、パトリオットではない事が見て取れる。
 
安倍首相が国連の場でイスラエルを裏切り、シリア・アレッポの虐殺の非を負うべきプーチンに花を持たせたことは、長い目で見れば、保守政権としての安倍外交の汚点となるだろう。