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ヒラリーよりもプーチンへの好感度を増す共和党支持者---WSJ

アメリカの政治事情 プーチン・ロシア

ウクライナ不法占拠から始まって、シリアへのロシア軍派遣、アメリカ大統領選挙に影響を与える事を目的とした、民主党と共和党への大胆なハッキング、シリア・アレッポにおける連日連夜に渡った大規模な空爆による一般市民への虐殺などを考えれば、2012年、オバマ大統領に対して、ロシアをアメリカと世界秩序に対する最も大きな脅威だと訴えた、ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事の主張は正しかったと言える。

しかしながら、そのロムニー州知事を推していた共和党は、プーチン大統領に対する否定的感情を緩和させている。共和党員によるプーチンへの好感度は、2014年7月には‐66%(マイナス66%)にも上ったが、2016年12月には‐10%(マイナス10%)となっている。民主党員によるプーチンの好感度は2014年7月には‐54%(マイナス54%)だったが、2016年12月には‐62%(マイナス62%)だ。

同時に、共和党員によるオバマ大統領への好感度は‐64%(マイナス64%)、ヒラリー・クリントンに対しては‐77%(マイナス77%)である。驚くことに、自国の大統領や対立政党からの候補者に対する嫌悪感の方が、実際の敵国首脳に対するそれよりも強いらしい。

GOP voters warm to Russia, Putin, WikiLeaks, poll finds - The Washington Post

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こうした意見は、自らの支持政党の視点によって影響されていると考えられるが、このような共和党支持者によるプーチンへの親睦感情に対して、2013年にはピューリッツァー賞を受賞したウォール・ストリート・ジャーナル紙のブレット・スティーブンス副編集長(外交問題コラムスト)は警告をしている。彼の書かれた以下の記事は、論理に逆らってプーチンへの親近感を増す共和党支持者への皮肉を込めた厳しい批判である。

How I Learned to Love Putin - WSJ

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ヴラジミール・プーチンは、私の心配の種となっていた。しかし、もう心配はしていない。

1999年9月、ロシア3都市で起きたアパートメント連続爆破事件は、約300人の住民を殺害した。クレムリンはすぐにチェチェンの反政府勢力を批判し、第二のチェチェン戦争を開始した。

同月下旬、ロシアの秘密警察FSBのエージェントが、リャザン市のアパートメントの地下室に爆発物を設置した。当局はこれを訓練の一環と主張したが、この「爆発物」が、まさか砂糖の袋だった訳ではない。ロシア議会による独立捜査はらちが明かなかった。この事件に関わる調査書は75年封印される事となる。このアパートメント爆破事件によって、プーチンは権力に立った。

マクベスも恥じらい、リチャード3世も赤面するような自作自演の工作に、かつてはプーチンが権力に立つかもしれないと考えてゾッとしていたものだ。だが、心配はいらないようだ。シリアのテロリストを掃討する為には、プーチンが無くてはならないのだから。

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    トランプ氏とプーチン大統領の親密な関係を描くリトアニアの壁画

 

リャザン事件の捜査委員会メンバーには、自由主義政治家のセルゲイ・ユシェンコフと捜査ジャーナリストのオットー・ラツィス、ユーリ・シェコチーヒンがいた。ところが、ユシェンコフは2003年の4月に暗殺された。ラツィスは2005年9月、ジープが彼のプジョーに突っ込んできた後、死亡した。シェコチーヒンは2003年6月、突然重病となり、全ての髪の毛を失い、6日後、多臓器不全によって死亡した。

その翌年、ロシアに警戒するウクライナの反対勢力、ヴィクトル・ユチェンコは、大統領選に立候補しているキャンペーンの最中、突然不思議な病に倒れた。彼は何とか当選したが、ダイオキシン中毒とみられる後遺症で、彼の顔には酷い損傷が残った。2年後、元FSB(秘密警察)で、イギリスに亡命していたアレクサンダー・リトヴィネンコは、致死量のタリウムを摂取した。イギリスの司法は、彼の殺害はプーチンの個人的許可を得たFSBによる犯行だと結論付けた。

そんな事、大したことではない。ドナルド・トランプ次期大統領が去年、スカボロー・ジョーに語った発言によれば、「アメリカだってたくさんの人を殺している」のだから。

リトヴィネンコのケースは、FSBが裏切り者だと考えた男に対する報復の一環だ。その他のクレムリンの作戦の多くは、もっと広い範囲で、外国の政策を変えようとする為の目的がある。

2015年、ドイツの国内諜報機関はロシアがドイツ議会のemailアカウントをハッキングしたと結論付けた。ブルガリアの選挙委員会は、同年、ブルガリアが「我が国民主主義への攻撃」と呼ぶ、サイバー攻撃の対象となった。イギリスの諜報機関、M15のチーフ、アンドリュー・パーカーが先月ガーディアン誌に語った内容によれば、「ロシアは、連邦の全ての機関と権力を通して、プロパガンダ、スパイ、政権転覆、サイバー攻撃などを含む、日増しに攻撃的な方法で、自らの外交方針を海外に押し付けている。」

だが、なぜ彼の言う事を信じる必要があるのだろう。ロシアを非難する時には、西側の諜報機関が誤っていると考える方が楽ではないだろうか。ロシアの『さし始めの手』の全てが、暗い秘密の動機によるものではない。時には動機が強欲による場合もある。

2003年、プーチン政権はエネルギー企業のユコスの資産を凍結し、会長であったミハイル・ホドルコヴスキーを、シベリアにある強制労働所に約10年近く送った。2006年クレムリンは環境に関する口実を用いて、サハリンにおけるシェル石油の企業支配権を止め、2,2兆円に上るガスプロジェクトを、半国営企業で天然ガス独占企業であるガスプロムに与えてしまった。現在BPの会長であるボブ・ダドリーは、2008年、ロシア人パートナーとの合弁事業が急止されてから、ロシアより撤退している。報道によれば、命の危険を感じたらしい。それと同じ年、エクソン・モービルの会長であるレックス・ティラーソンは、サンペトロブルグで「今日のロシアには、法に対する尊重の念が無い」と警告するスピーチを行なっている。

私は、ロシア国内の不法を心配していたが、2013年にティラーソンが『友好勲章』をプーチンによって授けられたのだから、何も不都合はないのだろう。

ティラーソンは、交渉人としての評判が高い。その技術こそ、トランプが最も高いレベルの「アート・オブ・ザ・ディール(交渉の芸術)」を実現する為に、国務長官に求めている事らしい。その交渉とは、ロシアにとっては西側の経済制裁解除が関係するのかもしれない。ティラーソンも制裁解除を支持している。ウクライナの一部をロシア領と認める代わりに、NATO加盟国に対する侵略しないという約束を交わすのかもしれない。

ロシアは信頼に値するだろうか。2013年9月、プーチンはシリアを指して「外国の内戦への軍事介入は、効果も意味も無い事を証明するだけだ」と警告したが、2年後にはロシアがシリアに軍事介入をしている。2014年3月にはロシアの防衛大臣、セルゲイ・ショイグは、チャック・ヘイゲル米国務長官に「ロシアの軍事演習は東ウクライナの侵略に繋がらない」と確約したが、その年の暮れ、ロシア軍は国境を超えた。1987年ロシアは中距離核戦力全廃条約に署名をしたが、ロシアは条約を無視して巡航ミサイルを開発し、今年10月にはアメリカの非難を浴びている。

平気で嘘をつくロシアに不安を覚えていたが、今年の選挙を終え、政治的憤懣は過去のものとなってしまった。プーチンを心配したところでどうなるだろう。いっそのこと、彼を好きになった方が楽ではないか。