レックス・ティラーソン国務長官指名---議会は対決姿勢を強めよ

ドナルド・トランプ氏は、国務長官にレックス・ティラーソン氏を選んだようだ。この選択については、共和党議員の中にも懐疑的な声が多い。上院がこの指名を承認するかは不明だ。

http://www.nytimes.com/2016/12/12/us/politics/rex-tillerson-secretary-of-state-trump.html

ロシアによるハッキングが民主党、共和党共に行なわれたとする報告をCIAがまとめ、議会に対し説明を行なったが、2014年のクリミア不法占拠による対ロシア経済制裁を挟んで頓挫している約55兆円の取引を再開させたいエクソン会長のティラーソンが外交のトップに立てば、自国の諜報機関による警告を無視する事になる。

http://www.nytimes.com/2016/12/12/world/europe/rex-tillersons-company-exxon-has-billions-at-stake-over-russia-sanctions.html?_r=0

トランプ氏はCIAの報告について「くだらない。もともと彼ら(CIA) はイラクに大量破壊兵器があったと主張していたCIAと同じCIAではないか」と語り、「オバマ大統領率いる民主党が背後にある」と何の裏付けも無いまま自国の諜報機関を批判している。

CIAという、命の危険を顧みず諜報収集にあたる職員の纏めた報告を「くだらない」と一蹴する事は、トランプによるCIAへの『宣戦布告』に当たる。

FBIにせよ、CIAにせよ、彼らの働きを軽んじれば、政治生命は短く終わる。email私的サーバー使用の非を過小評価し、その過失の非を認めなかったヒラリー・クリントンが、圧倒的な党内の権力を手中に納めながら落選した前例もある。

トランプ氏は大統領の日課である諜報ブリーフィングを、「自分は賢いから毎日同じ説明を聞きたくない」という理由で、週に一度で良いとしている。週一度のブリーフィングだけで、70歳に届くトランプ氏が、自身の興味の無い軍事諜報について、どのように記憶するのか。日々変化する情勢であるのに、週に一度のブリーフィングで緊急事態に対応できる筈がない。

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こうしたトランプ氏による諜報収集への軽視が、CIA関係者を激怒させるのは当然だろう。

Trump Doubles Down: CIA Report on Russian Hacking Is 'Ridiculous' - Cortney O'Brien

Trump Declares War on the Intelligence Community | Observer - Linkis.com

 

トランプ氏による情報への軽視は、大きな失政に繋がると思われる。トランプ氏は自身の周りを親プーチン派で固め、マイケル・フリン元中将を安全保障委員会の長にしたことも踏まえれば、新政権が親ロシア・プーチンの色を強める事はハッキリとしている。

親ロシア色が明確になれば、大統領府と諜報機関、及び軍が反目し合うことなる。但し、このロシアを巡る大統領府とCIA、及び軍との対立には、ロシアに対して懐疑的な議員の多い議会も参戦するだろう。大統領府が親ロシア色を深めても、議会が諜報機関及び軍と共に立つことは十分可能である。

当たり前のことだが、必要のない、被害者妄想にかられた戦いを世界相手に起こしているのは、ロシアの側だ。ロシアがその気になれば、世界は喜んで彼らをパートナーとして受け入れるだろう。ロシアは優れた人々による偉大な国だが、彼の国の指導者は、世界の一員となる務めを怠っているのだ。悲劇はそこにある。プーチンの無いロシアは可能であったのだ。プーチン大統領率いる現在のロシアは、意図的なアメリカ敵対政策を世界中で行なっている。プーチンに率いられたロシアが至る所で人権を蹂躙し、他国を侵略し、更にアメリカ敵対政策を続ける限り、トランプがどれ程プーチンを好んでいても、アメリカとの間に平和はない。

以下はワシントン・ポスト紙による『トランプの協力に関わらず、どのように議会がロシアに対し強硬に出られるか』という記事の訳である。

How Congress could get tougher on Russia, with or without Donald Trump - The Washington Post

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ロシアが熱心に大統領選の結果がドナルド・トランプの利に傾くように努めた事の証拠が積まれるにしたがって、ロシアに対するアメリカの応答への引火点は、単にアメリカとロシアの間にはとどまらず、次期大統領と共和党との間に広がるかもしれない。

何人かの共和党重鎮議員は、ロシアによる我々の選挙への干渉を捜査する必要がある事を示している。トランプは、ワシントンの何人かの共和党員と同様に、ロシアの干渉に対する疑問を挟んでいる。(実際、干渉を認めて疑われるのは自身の勝利の正当性であるからだろう。)

共和党にとっては、どう転んでも勝ちてない議論かもしれない。だがもし、ロシアに対する不信感を募らせる共和党議員が、トランプをしてモスクワに対する強硬姿勢を示すことに成功するならばどうだろう。議員がトランプと共にロシアに対してその責任を認めさせ、トランプ氏が政権に就くや、党内のいさかいを避ける事が出来れば最も良いだろう。

ロシアとの友情に傾かないように、トランプの舵取りをする選択もあるが、それでも大統領との反目は期待できるだろう。勿論、トランプが議会と歩調を合わせる保証はない。しかし国家安全保障の専門家であるマイク・ヨヤングと中道左派のシンクタンク「サードウエイ」は、大統領の協力がある、無いに関わらず、議会に出来る4つの対抗処置を提案している。

1、多くの聴聞会を開く。多くの聴聞会だ。聴聞会は議会によるいじめと同様だ。上院、下院の共和党員はロシアとトランプに対する強硬姿勢を強める為にこれを開こうとしている。ワシントン・ポストのカロウン・ディミルジャンの報道によれば、軍事委員会のジョン・マケイン議員、諜報委員会のリチャード・バール議員、外交委員会のボブ・コーカー議員など、重要な委員会を仕切る何人かの共和党上院重鎮らは、アメリカの政治政党と武器システムに対するロシアのハッキング能力を追求する事に乗り気だ。これらの3つの委員会による聴聞会は、それぞれ協調しながら包括的なゴールを達成するだろう。(詳細略)

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2、海外でロシアに対決せよ

この戦場はシリアとウクライナであろう。ロシアとアメリカの直接関係は殆どない。選挙の直後下院は、シリア政府が内戦に勝利をするよう援助する如何なる国に対しても、制裁を課す法案を通過させた。(アメリカは反政府派と同盟を結んでいる。) この法案の狙いの一つは、人権団体がシリア政府による一般市民への拷問や殺戮を報告しているにも拘らず、アサド大統領に武器を供給するロシアにある。

議会はまた、暴力によって国が分解し、アメリカとロシアがそれぞれ別の組織を支援しているもう一つの例であるウクライナ政府に対して、何億円分もの武器を供給出来る防衛政策法案を通過させた。これらの法案はロシアとロシアの行動に対して、砂の上に線引きをする意図があるが、これはトランプに対する線ともなる。これらの法案に署名しなければ、シリアやロシア、ISISに対して弱腰に見えるだろう。トランプはアメリカとロシアがシリア問題に関して協力できれば素晴らしいと語っている。しかし選挙期間中にそう語る事は、アメリカの安全保障の為に重要だと、自らの党が自分の机に置いた法案に対して拒否権を行使する事よりもはるかに容易だ。

3、トランプとの言葉の戦争を始めよ

リンゼイ・グラハム議員の手法だが、ロシアに対する戦略に賛成しない人々を名指しせよ。それが大統領であってもだ。いや、大統領であるからこそ名指しせよ。サウス・カロライナ選出の共和党上院議員は水曜日CNNで「私はロシアに対してし得る、どのような方法で以ても報復する」と宣言した。「ロシアは、世界秩序を最も乱している勢力の一つである。彼らは我々の選挙に介入しただろう。プーチンは個人的にもその代価を払うべきだ。」

前出のヨヤングに言わせれば、このような宣言は、トランプと共和党との間に最もあからさまな混乱を生じさせるだろうが、共和党が真剣にトランプがロシアに傾く事を防ごうと考えているならば、最良の方法だ。

民主党はロシアの不正について声を挙げ始めてしばらく経つが、彼らの言葉は党利党略の言い争いの中で目立たなくなる。特に彼らが大統領選に敗北した側なら尚更だ。しかし共和党側が彼らの大統領のロシア政策を批判するなら異例の事として注目を浴びる。これはトランプにとって、無視したり却下するのが困難だろう。

4、ロシアが真の色を見せるのを期待する

諜報コミュニティーには、ロシアが前例のないやり方でアメリカ選挙を揺さぶりをかけた、という総意がある。ヨヤングに言わせれば、但しこれは、ロシアがトランプを好んでいるからではない。アメリカの弱さを確かめたいだけだ。言葉を換えれば、専門家らは、ロシアがトランプの土台を覆す事こそロシアの益になると考えるのも時間の問題だと見ている。ロシアがトランプに対して友人ではなく敵なのだという反旗を翻すのを見せる事こそ、もしかしたら唯一の、ロシアに懐疑的な共和党議員にとって、大統領の目を覚ます手段なのかもしれない。