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『共産主義独裁者カストロ』を称える左翼の醜悪な偽善

国際政治事情

私は時折、一部の人々が安倍首相を戦争好きなファシストと呼んだかと思えば、プーチン露大統領を称え、またプーチン露大統領を愛国者として称えたかと思えば、オバマ大統領を売国奴の独裁者と呼んでいるのを聞いてきた。

勿論、「ファシスト」や「独裁者」とは、「政治的に反対意見を持つ政治家」を意味しない。

安倍首相を「戦争好きなファシスト」と呼ぶテレビ司会者やコメンテーターなどは、ファシストが何かすら理解していない。

もし、安倍首相やオバマ大統領が本物のファシストであったら、彼ら反対者らは二度とテレビで自説を述べる事なく、国内の強制収容所で『再教育』という名目の強制労働に服している事だろう。或いは、プーチン露大統領を批判したジャーナリスト達がそうなった通り、『行方不明』とされるかもしれない。安倍首相やオバマ大統領がカストロ元議長の様な暴君独裁者であれば、政権批判をする人々は、拷問の末、公開処刑されているだろう。

 

 

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          裁判を受けることなく銃殺された男性。

これはトランプ次期大統領を批判してきたリベラル派にも言える。トランプ氏が立候補してから一貫して彼をファシストと呼びつつ、それでいてカストロ元議長を称えるような二枚舌は許されない。

また同じルールは、トランプ氏にも当てはまる。カストロの『冷酷で残忍な統治』を批判しつつ、プーチン露大統領の『強い指導力』を褒め称える事は、明らかに道徳的な矛盾を抱える。「(プーチン大統領が)私を褒めてくれたから、私も彼(プーチン大統領)を褒める」などの個人的基準が、一国の指導者への評価を左右して良い筈がない。

 

誰かがファシストかどうか、独裁者かどうかは、その人の意見に自分が同意できるかどうかには依らないのだ。ましてや、これらの暴君が自分に対して何と言ってくれたかにも依らない。

 

強い反米姿勢を貫いたカストロへの評価は、彼が広島を訪問し、米国による2つの原爆投下に対して日本に同情した事や、日本庭園を自宅に持っていた事、核の無い世界を目指すと安倍首相と同意した事にはよらない。ヒロシマへの訪問を以て、彼が人道的な自由の戦士と見做すならば、生きていればアドルフ・ヒトラーでさえ、広島訪問をしていたかもしれない事を考慮するべきだ。

カストロへの正しい評価は、彼によって殺害されたキューバ人口の1%の犠牲者が決めるだろう。

 

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カストロ政権の犠牲となった人々を記念するフロリダ州タミアミ公園の十字架。一つ一つの十字架は、それぞれ犠牲者の名前を記している。

リベラル派であろうと、保守派であろうと、気に入らない意見を持つ政治家はファシストであり、意見が気に入れば、本物の暴君・独裁者であっても「歴史に名を遺す偉大な指導者」であるかのような事実の歪曲は、改められなければならない。

 

カストロ元議長の死に際する各国指導者らの声明について、デイリー・シグナル誌の記事を以下にご紹介する。

The Left's Appalling Whitewashing of Castro's Legacy

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今日、フィデル・カストロの犯した犯罪を、彼が社会的改革を成し遂げたとして許容する人々がいる。カナダのジャスティン・トゥルドー首相やイギリスの労働党ジェレミー・コルバン党首などはこれらの人々の中にいる。勿論、彼らだけではない。

我々の大統領、バラク・オバマ大統領は、金曜日のカストロの死の後、彼を賛美する事や彼の共産主義独裁が57年間もの間キューバの人々に与えた悲劇を以て彼を批判する事からは手を洗った (評価を避けた)。オバマ大統領は「歴史は、この記憶されるべき人物が人々と世界に与えた大きな影響を記憶し、評価するだろう」と語り、自らの判断は避けている。

勘違いしてならないのは、彼が達成した社会的貢献など無い、という事だ。彼は全国民を人質にし、人々から選挙権を奪い、彼らのどんな人権の行使をも半世紀以上に渡って拒絶してきたのだ。彼が達成できた社会貢献など何もないのだ。

 

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            カストロ一味による反対派への虐殺

全く逆に、マルクス主義の教義によってか、婚外子である為に感じた、キューバの中流階級に生きる上での恥辱によるものか、カストロは活性していた社会を滅ぼし、極端な欠乏生活を強いた。1958年には多くの社会がそうであったように、キューバも問題を抱えていた。しかし様々な数値から見れば、キューバはラテン・アメリカ諸国のトップ国だったのだ。アジアやアフリカ諸国と比較して社会的に富裕であっただけでなく、多くのヨーロッパ国と比較しても、キューバの方が裕福だったのだ。

私の曽祖父母を含む多くのヨーロッパ人が、経済的向上を求めてキューバへ移民したのは、たった100年前の20世紀の事だ。彼らの多くは実際に成功を収め、彼らの孫にあたる私の母は法学部に進むことも出来た。

57年間に及んだ共産主義の結果、キューバに渡ったヨーロッパ人の一人でも豊かになったと考える事は嘲笑を誘う。暗くて恐ろしい嘲笑だ。

 

信じられない逸話かもしれないが、今日生存する200万人のキューバ系アメリカ人がそう証言してくれるだろう。

 

国務省のヒューゴ・ロレンスやカービー・スミスによる分析が証明しているように、例えば、幼児の死亡率、文盲率、人口による食料消耗率、車の所有率、電話機の数、ラジオ、テレビ台数やその他の多くの指標から見れば、キューバはカストロが政権を握った1958年の日に比較して、後退をしている。

 

国連の統計は、あらゆる疑問を払拭している。キューバの幼児の死亡率は1000人中32件とし、日本(40)、西ドイツ(36)、ルクセンブルク(39)、アイルランド(33)、フランス(34)、イタリア(50)、スペイン(53)よりも少なかった。

 

食料消費率は、一日の消費カロリーから計算すれば、酪農の盛んなアルゼンチンとウルグアイを除く全てのラテンアメリカよりも良好であった。1000人の住民を対象にしたキューバの自動車保有率(24)は、ラテンアメリカでは石油を生産しているヴェネズエラ(27)に次いでいた。

 

文盲率では、1950年代後半のキューバの76%は、アルゼンチン、チリとコスタリカに僅差で後れをとっていたが、大国のブラジルは対照的に49%だった。1959年のキューバの国内総生産は、国連の統計によれば、アイルランド、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、又ほとんどのラテンアメリカ、アジア、アフリカの諸国よりも勝っていた。

最も重要な統計が示すのは、キューバは地中海諸国や南米諸国と対等な国家だった事だ。


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                カストロ前のキューバと、カストロ後のキューバ

 

今日ではどうかと言えば、カストロの共産主義はキューバの経済を乞食化しただけではない。政治的にもすっかり廃れてしまっている。オバマ大統領による、85歳になるカストロの弟ラウル現議長への一方的な譲歩は、更に状況を悪化させただけだ。アムネスティとフリーダム・ハウスによって認められているキューバ『人権と和解の為の委員会』によれば、キューバは今年8か月間のうちに、すでに8,505人以上の人々を政治犯として逮捕している。これはここ10年のうちの政治犯検挙のうちで最も高い割合だ。

同時に、我々は新たなキューバからの移民の危機を迎えている。1994のいかだによる難民到来以来、最大のキューバ国民難民に直面しているのだ。キューバから逃れてアメリカに移民してきた人々は、2015年には前年の二倍に増えている。去年は51,000人のキューバ人がアメリカに移民し、今年はその数を楽に上回っている。オバマ大統領が政権をとって以来、キューバから逃れるキューバ人は、それまで年間7,000人ほどであったのに対し、約5倍に膨れ上がっているのだ。

 

ドナルド・トランプ次期大統領は、ラウル議長がキューバを政治的に開放しないならば、オバマ大統領が撤廃した禁輸政策を見直すとも約束している。ラウル議長がこれらを行なうことは無いだろう。既に反体制派がまとめて移送されている、という報告もある。(*ただし、トランプ氏が、カストロ政権下のキューバとのビジネスを、禁輸期間中に行なっていた事も明らかにされており、禁輸の再開を政策として実行する可能性は少ないと思われる。)

How Donald Trump’s Company Violated the United States Embargo Against Cuba

Trump unlikely to reinstate embargo after death of Fidel Castro, analysts say | World news | The Guardian

今のところ、トランプ氏による「残酷な独裁者、カストロ」についての声明が、最も道徳的であり、最も的を得ていると言えるだろう。

『フィデロ・カストロの残した遺産は、銃殺部隊、人々からの搾取、想像を絶する苦しみ、貧困と基本的人権の否認である』

 

今日は 世を去った暴君に対して世界の指導者が何と言うかによって、彼らの内に道徳というコンパスを持っているかどうかが明らかにされる日である。

 

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カストロは1994年7月にも、アメリカへ亡命しようとしていた71人の女性、子供を含むキューバ人を高圧放水によって引船を粉々に破壊し、溺れる亡命者への救助を拒否し、子供10人を含む41人を殺害している。この後、男性生存者はヴィラ・マリスタにある拘置所に送られた。

Cuba 11.436 - Merits

 

カストロ政府によって殺された人々の多くは、亡命を試みて殺された人々だ。

例えば1971年、キューバ脱出を試みたラゾ一家の乗るボートにキューバ海軍が突っ込み、ボートが転覆をし、ラゾ家の3人の子供が溺死している。母親のアルベルト・ラゾ・パストラナはサメによって食べられてしまった。1994年には、キューバの海上保安隊によってボートが沈められ、6ヶ月から11歳までの12人の子供はが、その他の33人と共に溺死している。1980年には、キューバ海軍と空軍が、ハイジャックされてフロリダに向かう遠足用ボートを砲撃し、3歳から17歳までの4人の子供たちを含む52が犠牲になった、有名な『カニマール川虐殺』と呼ばれる虐殺も起こっている。

Counting Castro's Victims - WSJ

 

私たちは、これらキューバ人の犠牲を軽んじてはならない。アメリカに亡命したキューバ人の娘で、政治コラムストのメルセデス・シュレイプの言葉をご紹介しよう。

 

『キューバには言論や報道に自由がない。個人資産所有の権利も、自由選挙の権利もない。全ての権限はカストロ兄弟と軍に与えられている。兄の方は死んだが、生き残っているラウル・カストロは、兄と同様に破壊的であり、恐怖政治をキューバの人々の強いている。キューバの人々が自由を願う間に、もう一人のカストロもいなくなるだろう。しかし共産主義がこの島から消え去る保証はない。政治的迫害は続き、自由は奪われている。但し今日という日は、地球上から独裁者が一人減った日として喜ぶべき日なのだ。キューバの自由を祈らずにはいられない。』

MERCEDES SCHLAPP: Thousands of Cubans, my father included, paid heavy price during Castro's rule | Fox News

 

くり返すが、カストロは20世紀最悪の独裁者、人道に対する犯罪者、虐殺者の一人である。彼が「自分の銅像を建てなかった」、或いは「自分の名に因んで道路や市を命名しなかった」からと言う全く無益な論理によって、彼を無私無欲の革命家のように称える事は、裁判を受けることなく拷問の末殺されていった無辜の人々、救助もされず溺死させられた子供たち、サメに食べられた母親の死への何よりもの冒涜である。

 

平和や人権を唱えながら、カストロのような犯罪者をそうと呼ばないところに、左翼の醜悪な偽善があるのではないか。

(追記:カストロ元議長の死に際して、国連潘事務総長は、『彼の革命的な考えは殆どの人の関心を引き付けた。彼は国連総会や国際・地域フォーラムなどの世界的な議論の場で社会的正義と訴える力強い声であった』と哀悼の意を示している) 

United Nations News Centre - As Cuba mourns passing of former President Fidel Castro, Ban offers condolences, UN support

 

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    カストロの圧制を批判して逮捕される『白い服を着た女性たち』のグループ