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トランプ氏による『ヒラリー恩赦』とマイケル•フリンの機密情報扱い不正

アメリカの政治事情

ドナルド・トランプ次期大統領は、選挙中には対候補者であったヒラリー・クリントン元国務長官を「曲がったヒラリー」と呼び、「当選の暁には、特別な検察官を任命し、彼女を起訴する」と約束してきました。大統領候補者の討論会でも「(私が大統領となった時には)あなたは刑務所に行くからだろう」と答え、その日のトランプ氏のフェイスブック・ページには、「ヒラリー・クリントンを刑務所に入れる」と有権者に向けて約束した投稿がされています。

 

トランプ氏によれば、トランプ氏の当選後、クリントン夫妻がトランプ氏に電話をし、祝福を伝えたと言われています。当選直後のスピーチでも、トランプ氏はヒラリー・クリントン氏の健闘と公職期間にあった務めを称え、「アメリカは彼女に感謝をしている」と述べていました。

 

それから、いくつかの選挙公約が見直される中、『ヒラリー憎悪錯乱症候群』が基となっているトランプ支持者たちは、約束の「ヒラリー・クリントン起訴」まで反故されるのではないか、という危機感(?)を募らせていましたが、トランプ陣営は昨日、「ヒラリー・クリントンを起訴する予定はない」と発表しています。

 

これには、『今まで、下らない色んなことも我慢してトランプを支持してきたが、そんなバカな話はない。ヒラリーは裁きに遭うべきだ』と多くの支持者が不満を漏らしており、一般支持者だけでなく、保守派作家のディネーシュ・デスーザ氏のような著名人も、「言葉というものに意味があるなら、選挙期間中、彼女(ヒラリー)を『曲がったヒラリー』と呼んでおいて、今さら『ただの冗談だった』なんて言う事は許されない」とトランプ氏に対する不満を表しています。

 

トランプ支持者の多くが、ヒラリー・クリントンへの激しい憎悪によって、トランプ氏の言動を許容しながら、彼を支持してきた事は事実ですが、以前も書いた通り、起訴するかしないかはFBIの捜査をもとに司法庁が行なう事で、大統領に起訴を決断する権限はありません。大統領が出来るのは司法長官の任命ですが、政敵を起訴する為に「起訴を決断してくれる司法長官」を任命すれば、『権力の乱用』と見做され、トランプ大統領が法的責任を問われ、自身が弾劾される可能性を抱えます。

 

また政敵を権力を用いて罰するという前例を大統領が作る事は、アメリカという法治国家において大きな懸念となっており、憎悪によって煽動されたトランプ支持者の落胆はともかく、トランプ陣営の『恩赦』とも受け取られる発言は、政治評論家のチャールズ・クラウサマー氏の主張する通り、正しい決断であったと評価されるべきでしょう。

www.nationalreview.com

 

ところがここに、トランプ氏が安全保障補佐官として任命したマイケル・フリン元将軍の「機密情報扱い」に関する疑惑が浮上してきていますので、以下にニューヨーカーの記事を抜粋します。

The Disruptive Career of Michael Flynn, Trump’s National-Security Adviser - The New Yorker

 

『フリンは、自分が下らないと思ったルールは破っていた。ある時彼自身が話してくれたが、自身がイラクに派遣されていた頃、ヴァージニア州ラングリーのCIA本部からの『異常な』許可なく、時折基地を抜け出していたという。また技師を呼び、ペンタゴンにある自分のオフィスに秘密裏にインターネットを接続させていた。これらは禁じられている事だ。また、NATO(北大西洋条約機構)の同盟国に、許可なく機密情報を漏えいした事もある。これが発覚し、彼は捜査の対象となり、上官から勧告を受けている。また機密情報の責任者としてミュレン将軍に従事していた時には、これを目撃した人物によれば、ただ上司に渡すように定められている機密書類に「こんなのくだらない」としばし書きなぐってもいた。』

 

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 トランプ・タワーの金のエレベーターに乗り、トランプ氏に面会するフリン氏

フリン氏の経営するロビィ会社は、トルコのエルドアン政権からコンサルタント料として金銭を受けており、ロシア政府による国営放送であるロシア・トゥデイから、講演料としての金銭授与がある。

Trump adviser linked to Turkish lobbying - POLITICO

http://www.nytimes.com/2016/11/18/us/politics/michael-flynn-national-security-adviser-donald-trump.html?_r=0

 

トランプ氏が、ヒラリー氏のクリントン基金を批判し、自分の政権内での外国の為のロビィ活動は許さないと約束していた事は、記憶に新しいところですが、安全保障アドヴァイザーのトップが、人権侵害が甚だしく独裁の色を強めるトルコのエルドアン政権と、ロシアのプロパガンダ・メディアであるロシア・トゥデイから金銭を受けている事実は、問題に思われないのでしょうか。

 

また、トランプ氏に関するどんな疑惑も「でも、ヒラリーはe-mailで機密を漏らしていたかもしれないし」と目を瞑ってきたトランプ陣営や支持者たちは、トランプ氏の安全保障トップ・アドバイザーであるマイケル・フリン氏による機密情報の意図的な漏えいや、勝手にペンタゴン内のオフィスにインターネットを接続させるような違反行為等を問題にされないのでしょうか。

 

そうであるならば、ヒラリー・クリントン氏の『e-mailゲート』でさんざん彼女を罵ってきた事に対して、せめて書面による謝罪を行なってはどうでしょう。トランプ氏は、自らの新政権のトップアドバイザーの一人が、機密文書扱いのルール違反を意図的に行なっていた事や、クリントン基金と同じように、外国政府からのロビィを行なうアドバイザーを置いている事を認めるべきです。

 

これらの違法行為が気にならないトランプ支持者は、「ヒラリーの違反は許せないが、フリンなら許せる」と認めるのも良いでしょう。或いは「きっとそれでも、ヒラリー大統領の方が悪くなっていたと思う」と、独り言のように言い訳し続けるのかもしれません。