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コメンタリー誌『反戦左翼の偽善』

国際政治事情

 

先週末にかけてシリア政府によって空爆された3つの病院では、それまでの政府軍による化学兵器攻撃を受けた子供たちを含む多くの生存者が治療を受けていました。化学ガス爆弾から助け出された生存者への治療手段が、今回の空爆によって奪われた事は明らかです。

 

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化学ガスを使用したと思われる爆弾による被害の治療を受けるアレッポ住民。今回の病院砲撃で、彼らへの治療の手段は絶たれてしまった。

以下に、コメンタリー誌に掲載された『反戦左翼の偽善』という記事を訳します。

Does the Anti-War Left Care about Russian and Syrian Atrocities?

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[2015年の10月、北アフガンの年クンドゥズで、アメリカ軍による『国境の無い医師団』に属する病院への誤爆があった。フランスのNGOはすぐさまアメリカによる戦争犯罪を非難し、アメリカ軍はすぐさま内部捜査を行ない16人の関係者を処罰するに至った。

一方今日、バシャール・アサドとヴラジミール・プーチンの空軍は、誤爆ではなく意図的に、アレッポの病院を狙った空爆を行ない、反アサド派の支配するアレッポの街を人の住めない場所にしている

ニューヨーク・タイムズの報道による、医師、看護師、住民の証言によれば、ここ3日間によって行なわれたシリア政府による砲撃は、戦線に於いてトラウマへのケアを行なっていた2つの総合病院を破壊し、唯一残った小児病院をも襲った。WHOは「この破壊攻撃によって、東アレッポに住む25万人以上の住民が、医療サービスを受けられない状況になってしまった」と語っている。

これは、自国政府とロシアとイランという外国政府の協力による、唯一の大虐殺であると言える。彼らは病院を空爆しただけではなく、定期的に住宅街を爆破し、食べ物や衣料品が戦闘の巻沿いになった市民に行き渡らないように通行遮断をしている。シリアの内戦によって犠牲となった5,000人とも言われている死者に対する責任の多くは、アサド政権にある。それより多くの人々が負傷し、難民となった事は言うまでもない。

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          瓦礫から救助される幼児

イラン、シリア、ロシアに対してこれらの虐殺を止めるように要求するツイッターのキャンペーンやデモが行なわれるのは当然だろう。オバマ大統領や西側の首脳が、アサド、カメニ、プーチンらを戦争犯罪人として起訴し、シリアの人々を保護できるように軍事介入を誓う事は当然である。オバマ大統領による虐殺防止委員会を設置する事は正しいのだ。

ところが、これらの何一つ、起きていない。これらの、人道に対する罪を目の前に、全く非難の声が聞こえない沈黙を、どう説明するべきだろう。こういった虐殺というものは、「目の開かれた思考人」にとって、アメリカやイスラエルのような国家が非難される場合に関心を払われるだけであって、その他の国が行なう時には、全く罰を受けなくて構わないのだろうか。そんなことがあってはならない。万が一それが正しければ、俗に言う多くの『人権活動家』を、偽善、意気地の無さ、一貫性の無さによって責めることになる。

 

オバマ大統領は先週、アンゲラ・メルケル、ドイツ首相との記者会見の最中、これらの懸案について、トランプ次期大統領と会談すると述べる神経の太さがあった。「私の希望は、彼が『現実的政治』という安易なアプローチによって、ロシアとの交渉をいくつか止めたり、人々が傷つくのに任せ、国際常識に違反し、弱小国を防御の無いままとし、シリアのような地域の長期的問題を作りながら、ただその時に便利な提案を行なわない事である。」

オバマ大統領による自己認識の無さに驚きはしないが、あきれるばかりだ。トランプが行なおうとしていると非難されている事と、オバマ大統領が実際に行なってきた事、或いはむしろ「何も行なわない」方針と、どう違うのだろう。オバマ大統領が、もし「現実的政治アプローチ」と称して、ロシアとイランが好き勝手にシリアで行なうままに任せたのでなければ、何をしていたのだろう。トランプがしようとしている事は、オバマ大統領が認めないままにも、アサド政権の行なってきた虐殺を事実として受け入れてきた方針を、あからさまに認める『親アサド方針』ではないのか。世界は、過去の虐殺については「我々は決して繰り返してはならない」というくせに、現在行なわれている虐殺は止める気が無く、これらの言葉の虚しさを再び目の当たりにしているのだ。]

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勿論この「反戦左翼」への批判は、オバマ大統領の外交政策を『弱腰』と呼び、ロシアやアサド政権による虐殺に対して『何もしていない』と批判してきた、トランプ支持者にも当てはまります。

この記事にある通り、オバマ大統領は、アサド大統領やプーチン大統領によるシリア市民虐殺を批判、それらを公けに擁護する事はしませんでした。勿論、言葉だけの批判であり、人道に対する彼らの犯罪をそれに相応しい形で報いる事は避けてきました。虐殺を見過ごしてきたオバマ大統領の偽善を批判しているトランプ支持者が、アサド政権とプーチン大統領を大っぴらに擁護し、彼らを称賛するトランプ氏を無条件に支持する姿は、口先だけでも虐殺を批判している左翼に劣る偽善だと言わざるを得ません。

人道に対する罪が犯される度に聞く「我々はこれを二度と繰り返してはならない」という叫びは、誰も介入しないまま、今週、人知れず虐殺された人々を目の前に、政敵を非難する政治目的以外に、叫ばれる事はないのでしょうか。