トランプ当選の悪夢が現実となった時---「我々は選挙結果を受け入れなければならない。」

何か月も前から、選挙後にはトランプ支持者たちによって全米各地でのデモや暴動が予想されていましたが、ヒラリー・クリントン元国務長官の敗北によって、全米各地でデモ、暴動を起こしているのは、反トランプを掲げた人々です。勿論、熱狂的なトランプ支持者らは、「トランプが敗退したら、自分の手で正義を行なう」と自分たちが選挙結果を受け入れず、反対運動に訴える事を主張していたにも拘らず、「民主党員はいつもの通り、民主党員の行なう事を行なっている」と、右が全て正しく、左が全て間違っているという単純な勧善懲悪の世界観を訴えています。

 

勿論、「反トランプ運動」は、民主党支持者やリベラル派だけが起こしていた主義ではなく、トランプ氏に反対する多くの共和党支持者、保守派がその一翼を担っていました。それどころか、反トランプ主義の面々を見れば、反トランプ主義こそ、アメリカの外交、経済、アメリカン・エクセプショナリズム等の伝統を唱える、原則重視の真の保守派であった事がわかります。

 

トランプ氏の勝利を熱狂的に喜ぶトランプ支持者の多くは自分たちこそ正しかったと主張していますが、もちろん彼らのうちの誰一人として、トランプ氏の勝因を正しく分析する事はできません。トランプ氏の勝因は、トランプ氏にもその陣営にも無いからです。

 

傍若無人であったトランプ支持者の熱狂ぶりに反発するかのように起こっている、全米各地での反対デモや暴動は、正当的な選挙結果を受け入れていないという時点で、厳しい批判に値します。自分が気に入った候補者であったら受け入れ、反対していた候補者が当選した場合はその結果を受け入れないという甘えは、民主主義や法律を冒涜するものであって、暴動を起こしているのが誰かに関わらず、許される行為ではありません。以下に「反トランプ派」として、トランプ氏に対して厳しい批判と警告を主張してきた核の専門家であり、ハーバード大学(エクステンション)で教鞭をとるトム・ニコールズ氏による、「トランプ大統領にどのように反応するべきか:主だる反トランプ派による、悪夢が現実となった時の格闘」という記事をご紹介します。

www.nydailynews.com

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さて、どうしよう。

選挙後、何日か過ぎたが、我々すべてがショックを受けている事は当然すぎる。ドナルド・トランプの当選に反対をしてきた保守派とリベラル派は、いかに我々の予測が間違っていたかにぐらつき、また同じアメリカ人の仲間に対する信頼にもがたつきがきている。現実的には起こり得ないと考えていた事が現実となり、我々にはそれを受け入れる準備が出来ていたとは言い難い。

多くのトランプ支持者でさえ、実現すると思っていなかった勝利について、持て余し気味だ。トランプの側近も、敗退の備えは出来ていたものの、全く考えていなかった政権移行チームの作成にまごついている。

 

大統領選挙は終わった。しかしながらトランプが実際どんな政治をするのかは全く分からない。いくつもの恐ろしいシナリオを討議したり、脈絡のない希望で自分を慰める事には意味が無い。

その代わり私は、右派であっても左派であっても、共和党支持者であるか、民主党支持者であるかに依らず、トランプに反対した全ての人に、前を向き、トランプ政権の第一年目を迎えるべきだ。

私がこう提案するのは、アメリカの政府、憲法による秩序は、たった一人の大統領よりも遥かに偉大であるという私の信条がもとになっている。我々がこの先の4年間を何とか持ちこたえる為には、またトランプ政権がアメリカの国民の一人一人の為の成功となるように協力をするならば、新大統領のこれまでの態度以上の立派な態度を、まず我々が手本として彼に見せる必要がある。

まず第一に、我々はこの選挙結果の正当性を争う事は止めなければならない。言うまでもなく、クレムリン(ロシア政府)の飼い犬であるウィキリークスや、少なくとも何か所かの投票所へのハッキングなどのロシア政府の介入はあった。これらは全て、新政権による抵抗の如何に関わらず、州政府と警察、議会による捜査を受けるべきであろう。しかし、トランプが次期アメリカ大統領となるに必要な選挙人団を確保する事で、法的な選挙に勝利した現実を受け入れる時が来ている。

 

トランプ陣営が嘘をつき、甘言で人を操り、興奮して、他者を徹底的に罵ってきたと主張することは出来る。ジェームズ・コーミィ(FBI長官)の不可解な手紙について意見をする事も出来る。あの手紙は実際、ヒラリー・クリントンの敗因であったかもしれない。ヒラリー・クリントンがトランプよりも多くの票を獲得した事についても意見を述べられる。これら全てが真実だとしても、それでもこれらは選挙結果には関係がない。両サイドが理解し、同意していたルールに従って、有権者は自らの意思でもって投票をしたのだ。実際、選挙プロセスと、選挙人団という方法の概念を攻撃することで、選挙結果を再び争う事は、非アメリカ的であるだけでなく、正にトランプ自身が、自身が敗退していた場合に行なおうとしていた事だ。同様に、街頭に出て大規模の反対デモを行ない、トランプが全てのアメリカ人の大統領ではないと宣言して歩く事は、(ヒラリーが勝利した場合)トランプ支持者たちが行なおうとしていた事だ。トランプ支持者らがこういった反対デモを行なった場合にもそれは誤りだ。このような行動に関わる事は、トランプが直前まで展開しようとしていた腐った手段に、お墨付きを与えている。

 

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             ニューヨーク、トランプタワーの前の反トランプデモ

第二に、我々は新大統領が就任する際に、彼の計画が何であるか示す、公平な機会を与えるべきだ。ヒラリーは決して感動を与えるような候補者ではなかったが、彼女は愛国者としての敗北宣言を行ない、我々が留意すべき健全な助言を与えてくれた。「我々は今、トランプがこの国を治める機会を与えなければならない。」

勿論これは、彼が優れた人物だからではない。或いは彼が、他者から公平さを求められた時に公平であったからではない。彼は公平な人物ではなかったし、今でも公平ではない。

そうではなく、我々の制度が彼にこの国を治める責任を彼に授けているからだ。今、全く同じ制度によって共和国の国民に課されている責務について、我々が不当だと否認する事は出来ないのだ。憲法と我々の選挙の伝統は、我々がその結果を気に入る事を要求はしていないし、また(トランプ氏に対する)更なる批判も禁じてはいない。しかしながら、我々の制度は、我々が新大統領が何であると考えるかによってではなく、彼が何を提案するかによって彼を裁く事を要求している。

 

これは、私を含めたアメリカ人には困難な事だろう。この選挙期間中、私はトランプに反対する記事を書いてきた。彼のとってきた行動にどれ程ゾッとしているか明確に記し、容赦はしなかった。我々の多くは、大統領としての彼の資質について、真剣な議論をしてきた。未だに彼の当選は、想像を超えるものだと感じるし、ドナルド・トランプがリンカーンやレーガンが歩いた廊下を歩くと考えれば不快ですらある。しかしながら、そうした嫌悪感にも限界がある。特に先の2人の大統領は、反対政党を支持する人々による苦い復讐の的となっていた。そしてこういった塹壕戦が、我々を今日あるところに導いたのだ。勿論、トランプが、そのキャンペーンの性質によって、似たような反対者たちを招いてしまっている。彼がキャンペーン中に語った事から判断すれば、彼は負けを認め、ヒラリーの勝利を受け入れることは無かっただろう。敗北を果たしたトランプが、特に一般投票では勝利していながら選挙人団による投票で敗北し場合、結果を潔くいけ入れ、クリントンと協力していくと宣言をするという考えは、冗談でしかない。

 

それでも、我々は候補者以上に優れた国民でなければならない。これも、トランプの周りで生まれてしまった個人崇拝のカルトが、どんなに非論理的で非現実的であっても彼の語る言葉全てを支持するように要求をしてしまっている。愛国で偽装した人種差別や女性差別以外の何物でもない場合には、我々はトランプ全面支持者たちを無視ししなければならないだろう

それでも、ただの反射的な反対者であってはならない。感情主義への拒絶は、真剣な政治を行なう上での基本的条件である。新しい大統領がその政策を発表する時、それを感情を抑えて吟味するべきである。我々は用心深く、原則に則った評論を行なうべきだが、新しい政権が何か行なおうとするたびに、ただ大統領の人間性を知っているというだけで、反対するようであったりしてはならない。最後に、我々はその政権と大統領に対し、敬意を払わなければならない。これは、多くの人々にとって困難な事だろう。トランプ自身が何に対しても敬意を払わず、誰に対しても失礼であったからだ。しかしながら繰り返すが、この原則と、選挙期間中のトランプの言動は関係がない。

 

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                  4日目を迎えたロサンゼルスのデモ

 

今までトランプは公人ではない人間で、政治家としての責任なく、自分の好むことを何でも言えた。彼に反対する我々は、同じように彼に対し何でも言えるのだ。しかしながら、彼はこれから4年間、我々すべての人々に属する貴い務めに就く。その務めを軽んじる事は赦されない。但しその原則は、彼の行動、政策が批判を受けて当然である時にその批判を控える類ではない。彼の反対者たちは、彼が間違っている時、特に彼が憲法を蔑ろにするような乱暴な約束を実行しようとした時に、彼に対して激しい反対をするべきだ。

 

           ロサンゼルスでの大規模なデモ

 

政府が危機に陥らない限り、日常を過ごす上で我々は、大統領執務室はトランプが政権を去る後にも長く続き、彼の後継者に受け継がれなければならない事を覚えるべきだろう。大統領執務室は、一人の大統領に属するものではなく、アメリカの国民に属している。これは原則以上の必要不可欠要因でもある。我々の両極の違いが何であっても、複雑で驚異的な機械である経済と軍の優位性は、一瞬の遮断もなく稼働され続けなければならない。国外で我々を代表する外交官らは、統一して力強い我々の民主主義の顔であるべきだ。恐らくもっと重要なことに、我々に代わって命の危険を犯す米軍の男性兵士、女性兵士らは、我々が新しい最高指揮官の下に、一致して国家として彼らを支えている事を知る必要がある。大統領に対し、大統領という責務の為に敬意を払う事は、その中で私が育ち、守ってきた価値観である。ジョージ・W・ブッシュ元大統領をを個人中傷し、その政権の正当性を疑ってきたリベラル派の安っぽい攻撃に対して、私は反対をしてきた。トランプ自身も繰り広げてきた、オバマ大統領がアメリカ生まれではないというような胸のムカつくような中傷や、保守派による、バラク・オバマ大統領を軽視し、大統領としての正当性を疑うする声も批判してきた。トランプによる分裂を齎し、不躾なキャンペーンの後、彼の辿ってきた低いレベルの前例に従う誘惑があるだろう。しかし今、昨今の歴史には無いレベルで、アメリカ人が国民として最も高潔であることが求められているのだ。なぜなら、もし我々が我々の本能に従って低いレベルで歩むならば、トランプもそうするからだ。我々は彼の為に、より良い大統領が彼のうちに眠っているとして、それを呼び起こす必要があるのだ。

 

その精神で、私は国民としての努めが何であるか、我々の多くが後に続くように、模範として示したいと思う。

 

「トランプ次期大統領、当選おめでとう。あなたが、「全てのアメリカ人の大統領でありたい」と言われた、その言葉の通りを願われていると信じましょう。そして私は、あなたがこの国を国内外の全ての敵から保護し、守っていく為に、私が出来ることは何でもしましょう。私はあなたが正しいと考えられる時にはあなたを支持し、あなたが誤っていると考えられる時にはあなたを批判します。私はこれを私自身の分、務めとして行ない、他者にもそうするように訴えましょう。

また、あなたがご自分の分、務めを全うされる事を、切に願います。」