トランプ陣営が認めた、選挙トリックとしての『メキシコとの国境沿いの壁』『オバマケア撤廃』『ヒラリーを刑務所に送る』

トランプ氏のサポーターでトップ・アドバイザーでもあるニュート・ギングリッチ元下院議長は、トランプ次期大統領が「メキシコとの国境沿いの壁をメキシコに支払わせる事は恐らくないだろう」とした上で、「しかし、優れたキャンペーンのからくりではあった」と、他の共和党候補者の政策の差を見せつけ、保守派有権者からの票を得る策であった事を認める発言をしています。

Newt Gingrich admits Trump probably can't get Mexico to pay for his wall. 'But it was a great campaign device.'

 
壁についてはトランプ氏自身が、2月にニューヨーク・タイムズのインタビューでも、「まあ、少しつまらなくなって来て、人々もそろそろ去っていこうと考えているのがわかると、『私は壁を建設しますよ!』と叫びます。そうすると彼らは熱狂するんです。」と答え、壁の建設は、支持者を飽きさせず、引き留めておく手段であったことを示唆しています。
 
「メキシコとの国境の壁建設」は、もともと「全ての不法滞在者の摘発・強制送還公約」と共に不可能で意味のない公約ですが、現実的な『恩赦案』を提案していたジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事や、マルコ・ルビオ議員などを「やる気がない」と罵り、不法移民問題に強気で臨む姿勢を強調して、自分だけが問題の解決ができるとアピールするだけのトリックであったとトランプ陣営側が認めた事で、就任以前に早くも選挙公約を破棄する、奇異な政権となりそうです。
 
またトランプ氏はオバマケアについて、大統領討論会に於いても「全面撤廃」を強調し、新たな制度設置を主張してきましたが、オバマ大統領との面会時に、オバマケアについての意見交換を行ない、その後のウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューでは、オバマケアの一部引継ぎを認める発言をしています。

 

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         ホワイトハウスで会談をするオバマ大統領とトランプ氏
 
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、トランプ氏は、オバマケアが現在保証している「現存する疾患があるままで医療保険に加入する事が出来る」を引き継ぐ予定です。

Donald Trump, in Exclusive Interview, Tells WSJ He Is Willing to Keep Parts of Obama Health Law - WSJ

 
これらの政策変換は、現実を見据えた政策変更で、民主党支持者にとってもむしろ歓迎するべき事ですが、トランプ氏が選挙に当選する為に、国民の中に無用の分裂、混乱、不信が増し加えられた事は否めず、この点に於いては厳しい批判を受けて当然でしょう。
 
熱狂的なトランプ支持者らが、もしトランプ氏の掲げた公約によって彼を支持していた場合、これらの政策変更には失望をするでしょうし、これから厳しくトランプ氏の公約実現を求めるでしょうが、もともと「ヒラリー・クリントン憎し」という感情論のみでトランプ氏を支持していた「Uninformed (知識の少ない人々)」が殆どであったことを考えれば、支持者の中の困難は少ないと思われます。
 
但し、ヒラリー憎しの人々を狂喜させた「ヒラリーを刑務所に送る!」は、単なる政治戦略的な発言であった事を、側近のアドバイザーであるクリス・クリスティーとルディー・ジリアーニが認めています。

Rudy Giuliani and Chris Christie: Lock her up? Maybe not so much - CNNPolitics.com

 
トランプ支持者を狂喜させたこれらの非現実的で尋常ではない約束は、現実や法律というものがどんなものかを知る真の保守派には受け入れられないものでした。もともと保守派ではなく、ニューヨークのリベラル派であり民主党員であったトランプ氏にとって、真の保守派の思考は分かりません。恐らくこれらの「狂った発言」は、「共和党員」としての自らの政治的立ち位置を偽る発言であったのでしょう。言ってみれば、この異常な発言の数々は、トランプ氏が実は共和党員をどのように見ているかを示します。

 

いずれ、トランプ氏が現実的な政策に方向転換を余儀なくされるのであれば尚更、トランプ氏による大統領選当選の為の言葉のトリックに騙され、ジェブ・ブッシュ元知事やマルコ・ルビオ議員などの人格的に問題のない大統領を選べなかった国家としての不運が、今更ながら悔やまれます。