経済・安全保障・外交専門家らがトランプ氏当選に反対する理由

大統領選挙を一週間以内に控えても、ヒラリー・クリントン元国務長官支持者とドナルド・トランプ氏支持者の間では、どちらがマシだか、どちらが大統領となるべきかの議論が盛んになされていますが、370人以上の経済学者、122人の外交・安全保障専門家が、トランプ氏の大統領就任の危険を警告し、反対しています。

Prominent Economists, Including Eight Nobel Laureates: ‘Do Not Vote for Donald Trump’ - Real Time Economics - WSJ

Open Letter on Trump from GOP National Security Leaders

 

トランプ氏は国家安全保障問題の専門家らがこぞってトランプ氏に反対する声明を発表した際、「彼らは私に嫉妬しているだけだが、どのみちこれらの反対者を新政権で採用するつもりは無かったのだから、別にどうという事はない」と反論していますが、勿論、これらの反対者が、そのような低レベルの個人的理由でトランプ氏に反対している訳ではありません。

 

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        トランプ氏の危険を訴えるマイケル・ハイデン元CIAディレクター

http://www.modicanews.com/trump-says-national-security-experts-who-signed-stinging-letter-against-him-are-just-jealous-and-dont-feel-relevant-because-i-hadnt-planned-on-using-any-of-these-people/

 

私は以前から、ヒラリー・クリントン元国務長官をアメリカの政治史上最も腐敗にまみれた政治家であると主張してきました。

 

クリントン候補の不正などを擁護するつもりはありませんが、クリントン元国務長官がいくら不正腐敗にまみれていても、中国やロシアのような独裁主義国家の政治家とは腐敗や公共心の桁が違います。また同氏の能力の無さも取り上げられますが、この場合も北朝鮮のような失敗国家を批判するのと同様に語られるべきではありません。

 

不正腐敗をしていると言いつつ、法の支配による民主主義国家において、「選挙目当て」でありながらも、一応それなりに、国民のほぼ半数を占める民主党支持者などの有権者に訴える政治を行なってきた点も確かです。

 

当然ながら、ベンガジ事件やe-mail私的サーバー使用の疑惑に関するFBI捜査の対象となっている事を以て、「だからトランプ氏の方がマシだ」とは、決して言えません。ヒラリー・クリントン元国務長官の不正腐敗や能力の無さは、トランプ氏の大統領としての資質を保証する材料とはなり得ないからです。

 

不正腐敗や無能ぶりという物差しで測れば、一般市民、或いはビジネスマンとしてのトランプ氏の不正腐敗や無能ぶりは、一弁護士としてのヒラリー・クリントン氏よりも酷いと言われていますが、最も根本的な議論として、たとえ清廉潔白な人物であっても、アメリカという国家を担う大統領には、共産主義者や独裁者は失格である事が見過ごされているかもしれません。

 

「不正がある」と民主主義選挙プロセスを批判したり、法による支配やその下の平等を軽んじ、強権独裁者や軍事政権を礼賛したり、権力の拡大や個人所有の規制、言論の自由への規制に言及し、国家の体系や社会経済システムそのものを変革させたりする事は、アメリカという資本主義、自由主義、法治国家の大統領として許されません。そような人物は、たとえどんなに誠実であり、腐敗と縁遠くても、大統領としては失格です。また、防衛条約や同盟を反故し、国際法違反も構わないかのような主張を繰り返す人物は、米軍の最高指揮官として失格です。

 

資本主義、自由主義、言論や報道の自由が保証される民主主義国家であり続けるという基本的視点から見れば、トランプ氏は、候補者として数えられること自体相応しくありません。

 

共和党がトランプ氏を党からの候補者として指名した時点で、アメリカにはヒラリー・クリントン元国務長官以外に選択肢がなくなってしまったのが本当でしょう。これは、クリントン元国務長官の不正腐敗によって、いずれ同氏が弾劾される可能性があったとしても同様です。

 

トランプ氏の自惚れによる低次元の議論とは違い、保守派、リベラル派に関係なく、多くの経済学者、外交・安全保障専門家がトランプ氏を大統領として失格としている理由は、このような点にあります。