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「ヒラリー大統領誕生」よりも共和党が恐れるべき「トランプ大統領誕生」

大統領選挙を一週間後に控え、殆どのメディアは大統領選挙に関連するニュースを報道しています。
 
FBIのジェームズ・コーミィ長官によるヒラリー・クリントン候補のe-mail疑惑捜査終了宣言の撤回が、選挙結果に影響を与えない筈は無く、世論調査ではヒラリー・クリントン候補への支持率とドナルド・トランプ氏への支持率の差が縮まり、今日発表されたABCによる世論調査ではトランプ氏がクリントン元国務長官を1ポイント、リードしています。但し11月1日発表のその他12の世論調査では、クリントン元国務長官がリードを保っています。
 
トランプ支持者は、保守派最高裁判事の任命や後期中絶認可問題を持ち出し、「トランプに投票しないならば、即ちヒラリー・クリントンに投票するのと同じだ」と主張しますが、いくら大統領の権限が強いアメリカとは言っても、三権分立の確立した法治国家であるのですから、独裁者を選ぶのとは違い、議会を共和党、民主党どちらが多数を占めるか、という重要な点も忘れるべきではありません。
 
このことは約一年前に既に指摘した事ですが、トランプ氏の掲げる政策の殆どは実現不可能であり、実現可能な政策は、従来の共和党が掲げている保守派の政治主張とは事なり、むしろリベラル派の主張です。トランプ氏は、経済がどのように機能しているかに関した常識的な知識さえ持ち合わせておらず、しかも陰謀説以外を学ぶつもりもなく、経済アドバイザーの殆どは経済の専門家ではなく、自身に献金をしたビジネスマンから成っている『トランプ政権』が公約を実現させれば、アメリカの経済は不況に陥る事は間違いありません。
 
そうなれば、『トランプ政権』に対する不満は上院、下院や地方議会に現れ、共和党の大敗を招きます。言ってみれば、共和党が従来掲げてきた政治と全く対極的なリベラル政治をトランプ氏が実現することによって、その失政の不満は共和党議員の落選に繋がり、上は大統領府から、下は地方議会に至るまで、保守政治や保守運動の徹底した排除に繋がります。
 
これとまったく同じ警告を、核戦争の専門家であるトム・ニコールズ氏が「トランプよりは、ヒラリー・クリントンを選ぶ」という記事に書いていますので、その一部を以下に引用します。
 
「保守派が、4年、或いは8年のヒラリー・クリントン政権から回復する事は出来る。その間、むしろ我々は繁栄するかもしれない。トランプの知恵の無いファンたちと大差のないオバマ大統領のカルト的性質が、900以上の民主党議席と多くの民主党州知事の座を犠牲にした点を考えて見よう。オバマ大統領は大統領として二期目の選挙にも勝利をしたが、民主党は党として何百もの大敗を経験している。トランプの勝利がこういった「勝利」であるならば、保守派はこれの一端に連なるべきではない。」
 
またニコールズ氏は、「ヒラリーは酷い、しかしトランプはそれよりも酷い」とした上で、以下のように警告しています。
 
「私の手は、これを文字に表す事を躊躇している。なぜなら、ヒラリー・クリントンはアメリカ政治の中で、最も酷い人間の一人であると考える。性的に病的な彼女の夫を容認し、擁護したとして、大統領執務室に就くのが相応しいとする確信を持っている他、彼女に原則などは殆どない。彼女は、最善の場合でも、怠惰によって、悪ければ腐敗を隠すため、国家の安全保障を犠牲にしていた。もし当選するならば、彼女はウォール街を豊かにし、アメリカの貧困層と労働者階級の不満をかわすためにアイデンティティー政治*の憎悪に満ちた教義を説きながら、公共の財源から略奪をするだろう。(*アイデンティティー政治とは、社会的不公正の犠牲になっているジェンダー、人種、民族、性的指向、障害などの特定のアイデンティティに基づく集団の利益を代弁して行う政治活動の事)
 
しかし、トランプは更に酷い。道徳的な信念が無く、情緒的には不安定であり、最悪の種類の資本主義を唱え、何年もに渡って語ってきた言葉を聞けば、ヒラリーとまったく同じか、或いは更に進んだリベラル派である。彼は反射的にも、本能的にも、ニューヨークの民主党員であり、公式の政党登録も、その他すべての懸案と同じように交渉次第ときている。彼は自分自身に関すること以外には全く関心が無く、彼の『交渉』といっても、保守派の主張や原則の益になる事は一つもない。」

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     ポール・ライアン下院議長とレインス・プリーバス共和党全国委員会委員長
 
保守派や共和党は、数々のトランプ氏の眉を顰めるような言動によって、民主党員やリベラル派が共和党や保守派を批判する際に言い立ててきた全ての批判が的を得ていると証明してしまったようなものです。共和党に対する信頼の回復には、トランプ氏を批判し、彼との距離を置くこと以外あり得ません。ヒラリー・クリントンの大勝が予測されてきた際にも、議会における共和党の大敗が囁かれてきました。これは即ちトランプ氏と距離を置かない共和党議員に対する裁きでもあります。ところがトランプ氏がまかり間違って大統領となってしまえば、間違いなく、連邦議会から地方議会に至るまで、共和党に対する批判票が民主党議員への飛躍に繋がるでしょう。
 
プライマリー選挙で一番多くの得票をしたトランプ氏を、共和党として任命せざるを得なかったポール・ライアン下院議長の苦渋は理解できるとしても、ライアン議長と、トランプ支持を拒否する共和党議員には党からの懲罰もあり得ると警告した共和党全国委員会のレインス・プリーバス議長は、これから長く批判されると思われます。