読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「ヒラリー・クリントンを投獄する」に狂喜するトランプ支持者の知性衰退

昨夜行なわれた第二回大統領選討論会で、共和党からの候補者であるドナルド・トランプ氏は、「私が大統領となった暁には、私の政権の司法長官に特別検査官を任命させ、あなた(ヒラリー・クリントン)について調べさせる。あなた程多くの嘘をついた、まやかしを行なった前例はない。このようなことが行なわれた事は過去にない」と発言しました。

これに対してヒラリー・クリントン候補が「ドナルド・トランプ氏のような癇癪もちの人物が我々の国の法を支配していないことは非常に良い事です」と反論すると、トランプ氏は続けて「なぜなら(私が大統領となれば)、あなたは刑務所に送られるからです」とすかさず切り替えしています。

Donald Trump threatens to jail Hillary Clinton - CNNPolitics.com

 

まず、ヒラリー・クリントン元司法長官が多くの嘘をついたこと、まやかしを行なった」というトランプ氏の主張には誤りはありまん。

但し、比較論で言えば、より多くの嘘、まやかしを行なってきたのはトランプ氏本人です。昨日の討論会でも、トランプ氏はより多くの嘘・誇張・歪曲を行なっています。トランプ氏による多くの嘘や誇張、歪曲をトランプ支持者が気付かないとすれば、彼らの政治、外交、経済や今までの発言などについての無知や無関心を端的に表明しています。

PolitiFact | Comparing Hillary Clinton, Donald Trump on the Truth-O-Meter

トランプ氏はこの主張を自身のフェイスブックでも繰り返し、盛んに支持を受けていますが、果たして、トランプ支持者のうちに、この主張に疑問を持つだけの知性を持つ人々はどれくらいいるでしょう。

 

f:id:HKennedy:20161011090126j:plain

                    トランプ氏のフェイスブックページ

 

昨夜行なわれた討論会だけでなく、選挙キャンペーンが始まった去年からのお互いの主張の嘘や真実などを比較しても、ヒラリー・クリントン元国務長官に嘘や歪曲、誇張が無いとは言わないまでも、トランプ氏の方がはるかに多くの大嘘をついている事が指摘されています。

Donald Trump's file | PolitiFact

Hillary Clinton's file | PolitiFact

このような比較をすると、トランプ支持者は「メディアは嘘をついている」「この比較の基となっている情報には誤りがある」などと否定したがりますが、「メディアが嘘をついている」証拠はなく、むしろ陰謀論そのものであり、比較の基となっている情報のどこが誤りなのか、指摘することは出来ません。

 

また、トランプ氏が政敵を投獄すると言っても、大統領にそのような権限は無く、FBIにしても、司法庁にしても、個人をターゲットにして有罪とする為に捜査官や裁判官を任命する事は出来ません。アメリカを始め、民主主義法治国家では、そのような権力の乱用が行なわれる事が出来ないよう、法律で厳しく禁じられています。

GOP ex-prosecutors slam Trump over threat to 'jail' Clinton - POLITICO

 

しかしながら、多くのトランプ支持者らは、ヒラリー・クリントンを罰する為には、権力の乱用も歓迎しているようです。それでもアメリカの政治史の紐を解けば、故ニクソン大統領がウォーターゲート疑惑を捜査していたFBI捜査官らを解雇するように司法長官に求めた時、当時の司法長官であったエリオット・リチャードソンや副長官であったウイリアム・ルッケルシェルスは、その命令を拒否し辞任しています。故ニクソン大統領は、自らでもって「サタデー・ナイト・マサカー(虐殺)」と呼ばれる、ニクソン政権内の高官を解雇しましたが、この権力の乱用が明らかとなり、違法性を問われ、弾劾裁判を受けたのち罷免となっています。

f:id:HKennedy:20161011084808j:plain

 

つまり、トランプ氏が何と豪語しても、ヒラリー・クリントンを投獄すれば、或いは投獄する為に検察官や捜査官を任命すれば、トランプ氏こそ有罪となります。本当にトランプ氏の行なう政治に期待し、トランプ氏こそアメリカを偉大な国にすると信じる支持者がいるならば、彼に対して、その権力の乱用は弾劾裁判や罷免に繋がると警告を発するべきです。

しかしながら、多くのトランプ支持者らは、ヒラリー・クリントンを罰する為には、権力の乱用も歓迎しているようです。このようなファシスト国家や独裁者のような権力の乱用宣言に喜ぶようなトランプ支持者は、法治国家の仕組みも、アメリカの司法制度や政治史も理解されていません。

 

このような基本的知識を欠く公民教育の衰退が、トランプ支持の一因となっていることは、軍史の専門家でありブッシュ政権で外交アドヴァイザーを務めたマックス・ブート氏の嘆く通りかもしれません。

America Is Turning Into a Confederacy of Dunces | Foreign Policy