トランプ氏のメキシコ訪問と移民政策の方向転換

本日、共和党からの大統領選候補者のドナルド・トランプ氏は、メキシコ大統領からの正体で、メキシコを訪問しました。これには双方の政治的思惑が絡んでいると見て、間違いないでしょう。
 
メキシコのエンリケ・ぺニャ・ニエト大統領の不支持率は高く、トランプ氏への公式の場での批判をすれば、大統領にとって益となるでしょうが、友好路線を打ち出した場合、トランプ氏にとっての利点となると思われますが、大統領との会談後の記者会見で、トランプ氏は「国境沿いの壁を誰が支払うのか、話題にのぼらなかった」と発言しましたが、メキシコのペニャ・ニエト大統領は「メキシコが支払う事は無いと伝えた」と主張し、双方の主張には早くも一致していません。
 

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メキシコにおけるトランプ氏への好感度は4%と低く、会談を行なった事でメキシコ国民からの大統領への非難が高まっているようです。
 
トランプ氏は、大統領選に立候補を表明した直後、メキシコからの移民を罵って、
 

「メキシコが国民を送り込む時、彼らは自国の良い人々を送っている訳ではない。(支持者に対して)あなた方のような人々が送られている訳ではない。彼らは問題を持った人々を、その問題と一緒に送り込んでいる。麻薬を送り込み、犯罪を送り込む。彼らは強姦犯だ。中には良い人もいくらかいるだろうが」

 

 
と語り、メキシコ系移民やメキシコに対する反感を煽りました。
 

勿論、こういった偏見や差別、挑発的発言は、一部の無知で偏見に満ちた一部保守層を喜ばせましたが、メキシコ系アメリカ人だけではなく、民主党支持者を含める多くの良識ある大多数のアメリカ人を怒らせています。

 
それでも、大統領選挙本選が近づくにつれ、一部の保守派だけでなく、民主党支持者からの支持を広げなければならないドナルド・トランプ氏ですが、ここにきて、目玉政策であった「すべての不法滞在者を、例えアメリカ市民権を持った子供を持つ親であっても、強制対処させる」という移民政策を撤回し、共和党指名選を競い合ったマルコ・ルビオ議員やジェブ・ブッシュ元知事、ジョン・ケイシック知事らと同じ、アムネスティー(大統領恩赦)によって永住権を与える政策を打ち出しています。
 
アムネスティーを主張していた他候補者を口汚く罵り、実現不可能な1,100万人の不法滞在者を強制送還させるとして、反メキシコ感情を煽りつつ、「強いリーダーシップ」を強調していたトランプ氏ですが、180度の方向転換を打ち出したことで、早くからトランプ支持を打ち出していた保守派ライターのアン・コルターなどは、「失望したけれど、私のトランプ氏に対する礼賛は、北朝鮮の国民が『親愛する偉大な将軍様』に対するのと同じ忠誠心で、失望や批判はしても、トランプ支持は変わらない」と、一般のアメリカ人からはゾッとするような告白をしています。
 
コルターは、「神を信ずる」という常套句をもじった「トランプを信ずる」と題する新著を発売したその当日に、トランプ氏に裏切られた形となっていますが、トランプ陣営の広報係、カトリーナ・ピアースは、「これは政策変更ではない」と語り、保守系ラジオ番組のホストであるラッシュ・リンバーグはリスナーからの電話質問に対しても「方向転換だと思わない」と語った後、「自分は、トランプ氏が何を約束していたか、そもそも覚えていない」と発言しています。
 
リスナーに、トランプ氏の語った事そのものを指摘されると、「そもそも、誰もトランプ氏が全ての不法滞在者の強制送還を出来るとは信じていなかったじゃないか」と逆に怒りを表す失態を犯しました。
 
勿論、トランプ氏の掲げる政策の実現性を疑った有権者は、誰一人として「信じて」いませんでした。ところが、トランプ氏の主張を信じた無知な有権者がいたこと、不法滞在者らの犯した僅少の犯罪を強調し、トランプ氏を支持しながら、アムネスティーを主張していた15人の他候補者を批判していた保守派コメンテーターがいた事は事実です。
 
もし、トランプ氏の掲げる『実現不可能』な政策が、後になって変更されても、「もともと誰も信じていなかったではないか」と開き直る事が許されるならば、これらの保守派コメンテーターらは、今からでも「どの政策を信じて良いか」「どの公約は実現不可能か」明らかにすべきでしょう。
 
トランプ氏は、「私は保守派から最高裁判所判事を任命する」として、自身への支持を求め、トランプ支持者もこれを目玉政策として期待していますが、『保守派最高裁判事の任命』も、いずれ「もともと誰も信じていなかったではないか」と、『騙された脳が悪い』ばかりの『絵に描いた餅』になるのではないか、と思われます。
 
トランプ氏のメキシコ訪問は、メキシコとの関係回復を強調する事で、移民政策への方向転換の話題からメディアや有権者の注目を逸らす目的があると考えられますが、いい加減な政策を掲げるトランプ氏への信頼回復にどれ程役立つかは定かではありません。