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日曜未明、あるジャーナリストの不審死と、先を行く205人のジャーナリストの死

日曜未明、ウクライナ首都キエフで、反プーチンを掲げるジャーナリストのアレクサンドル・シュチェティニンが自宅アパートのバルコニーで、頭に銃弾を受け椅子に座って死亡しているのを、シュチェティニンの誕生日祝いに駆け付けた従兄弟によって発見されました。

News from Ukraine: Russian journalist Shchetinin found dead in Kyiv flat

シュチェティニンは数年前にロシアの国籍を棄て、ウクライナ国籍に変更していますが、2014年にはロシア軍がウクライナに侵攻し、クリミア地方を違法併合したままです。

ウクライナ当局は、「親族に宛てたe-mailで自殺を仄めかした」として、これを自殺として発表していますが、捜査結果は発表されていません。また先月20日には、、首都キエフで、ウクライナ政府、ロシアのプーチン大統領、ロシアによるクリミア併合を批判していたジャーナリストであるパヴェル・シェレメット氏が、車に仕掛けられた爆弾で暗殺されています。

News from Ukraine: Ukrainian-Belarusian journalist and Nemtsov's friend killed in car blast in Kyiv (live updates)

 

ヴラジミール・プーチンが大統領に就任してからのロシア、及びロシア連邦で暗殺されたり、不審死を遂げたジャーナリストの数は205人に上ります。

https://web.archive.org/web/20150401205405/http://www.journalists-in-russia.org/

勿論、これらの暗殺すべてがプーチン大統領の直接の命令で行なわれたという訳ではありませんが、KGBの申し子であるプーチンが権力を握り、KGBが力を得れば、どのような社会となるかは明らかです。

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ソヴィエト連邦崩壊後の旧衛生国やロシア連邦は、共産主義というイデオロギーを掲げておらず、国民の投票による選挙が行なわれていますが、これはロシアが欧米のような民主主義・法治国家と変貌したことを意味しません。

 

民主主義という形態を全く経験した事のない国にとって、民主主義・法治国家への変貌は困難を極めます。ゴルバチョフ大統領時代、又エリツィン大統領時代の初期には試みがなされたものの、エリツィン元大統領や側近にしても、どのように政治や社会のシステムを変えていくのかは見当もつかなかったようです。政権の中期・後期には、エリツィン元大統領は殆どアルコール浸りの生活に陥り、自身や親族の身の安全の保障と引き換えに、第二次チェチェン戦争で人気を得たプーチン首相(当時)とKGBに政権を譲っています。

KGBが力を握れば、腐敗と恐怖政治が蔓延るのは当然で、これはワルシャワ大学のアンジェイ・コズロウスキー博士が2000年に、友人であるスウェーデン人経済学者のアンデルス・アスルンドに書かれた通りです。

「私はあなたがレポートに、多くの人々のプーチンに対する評価がまだ定まっていないと書いたことに驚いています。プーチンが完全な近代KGBそのものであることに疑いはありません。これが何を意味するのか、説明する必要があるでしょうか。プーチンが代表するものは、既に数多の風刺画に見られる通り、また、ヴラジミール・ジリノフスキーの敷いたシステムに見られる通りです。このシステムは、ナチス・ドイツの下に見られたような、いくらかの市場経済ですが、実際にはもっとひどい腐敗を抱えています。ジリノフスキーと違い、プーチンはKGB出身である為に、時によっては、西側の愚かなリベラル派や皮肉屋が聞きたい言葉を使います。その他の場合では、彼のボキャブラリーは、完全にKGBのものです。これらは驚くべきことではありません。」

今日のロシアは「共産主義国家」ではないものの、マフィアの集団によって国が牛耳られていると言って過言ではなく、プーチンはそのマフィア集団の統領です。

国として「検閲制度」が敷かれてはいないことを以て、ロシアには報道の自由があるかのような錯覚すらありますが、実はプーチン大統領や政府に対する批判は、欧米に向けた小規模の英字ジャーナルに掲載されるだけで、ロシア人がこれを読むことは殆どなく、ロシア人の情報源であるテレビは、プーチン賛美を繰り返すだけです。周期的にプーチンや政権を批判するジャーナリストらが暗殺や不審死が起こる事を考えれば、メディア側の『自己検閲』ですら、クレムリンには不満なのでしょう。

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          日曜未明、不審死を遂げたアレクサンドル・シュチェティニン