ドナルド・トランプ氏と嘘

ニューズウィーク誌は、「ポール・ライアン下院議長への手紙」の第二弾として、「宣誓供述においても繰り返されたドナルド・トランプ氏の嘘」という記事を掲載しています。

Donald Trump’s History of Lying Under Oath

 
勿論、宣誓供述で虚偽の主張を行なえば違法に当たりますが、この場合は「意見」や「記憶」に関するものなので、起訴には至らない類が殆どでしょう。
 
さて、この記事の中で、以下の部分が目につきました。
 
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Trump then blamed the media for applying the rules of grammar and sentence structure to him, instead of being like his acolytes, for whom words and sentences no longer have agreed-upon meanings.
 
This, Mr. Speaker, is what you would be dealing with in a Trump presidency, and this flagrant disregard for the facts, for the truth, is why I am writing this, my second open letter to you. Trump must be stopped. Let the GOP lose this election. It is the only way to save the Republican Party, and the nation. Even some of his most deranged supporters recognize the danger he poses—one caller into C-SPAN last week said he knew his candidate might start a nuclear war, but at least America would win.
 
「トランプ氏は、カトリックのミサの最中に司祭の言葉をただ大人しく待つ従者とは違い、文法という法則を適用して彼の言葉を解釈するメディアに責任を擦り付けている。
 
下院議長、このように事実や真実に対しては悉く目をつむることが、トランプ大統領政権下に於いて期待されることであり、私があなたに対して第二の公開書状を書いている理由です。
 
トランプ氏は制止されなければなりません。共和党は、党として今回の選挙には敗北するべきです。それが唯一、共和党と国家を存続させる手段となります。最も狂ったトランプ支持者でさえトランプ氏の招き得る危険は承知しています。先週、C-SPANテレビ局の電話インタビューに答えた支持者は、トランプ氏が核戦争を始めるかもしれない可能性を承知していました。「それでも少なくともアメリカが勝つだろう」と語っていたのです。
 
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私は、「最も狂ったトランプ支持者でさえ…」という部分には少しばかりの疑念を持ちます。私が議論した限りの殆どの支持者は、トランプ氏の政策を知りませんし、例えば「トランプ氏の経済政策は、1930年代に陥ったような経済の不況を招くと考えられる」「ヨーロッパやアジアでの戦争を勃発させる」と主張しても、「そんなこと、起こる筈がない」と一蹴する傾向があります。
 
殆どの支持者にとっては、自らの銃携帯や所有を認められなくなる、イスラム教徒の移民が増える、トランスジェンダーの人々の権利の為に公共施設のトイレが男女別でなくなる、などのリベラル政治に対する懸念が大きく、トランプ氏の政策を真剣に捉えるに至っていません。
 
それでももしトランプ氏が核戦争を始める可能性を突き詰めて考えた場合、支持者の多くはこの記事に出てくる視聴者のように、「それでも、アメリカはどうせ勝つ」と自分を納得させるのは本当でしょう。
 

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トランプ支持者の多くは、同盟国に対する道義を考えていません。トランプ氏が一年以上繰り返した「アメリカは利用され、搾取されている」というレトリックによって、トランプ支持者にとって、ヨーロッパやアジアの同盟国は、すっかり敵国となってしまいました。
 
トランプ氏の発言や主張、理屈には余りにも嘘が多いのですが、これにはヒトラーの国民啓蒙・宣伝省のジョセフ・グーべルス長官が語ったとされる言葉(*)を思い浮かびます。
 
(*ただし、この言葉はムソリーニが語ったとも言われており、実際には誰が語った言葉か定かではありませんが、いずれにせよ国家指導者が公けでこれを語ることは、むしろあり得ないと思われます
 
 “If you tell a lie big enough and keep repeating it, people will eventually come to believe it. The lie can be maintained only for such time as the State can shield the people from the political, economic and/or military consequences of the lie.
 
「もし嘘をつくならば、嘘は大きく、続けて繰り返されなければならない。そうすれば人々は、いずれそれを信じるようになる。嘘は、人々が政治的、経済的、或いは軍事的に、虚偽の代価を払うことから守られる時代に継続される」
 
トランプ氏が、「ヒトラーの語ったスピーチや言葉をまとめた書を枕元に置き、頻繁に読んでいた」という証言が元夫人のイヴァナ・トランプ氏からなされていますが、トランプ氏がこういった思想からの影響を受けたと考えることはでしょうか。
 
無難な言い方をすれば、トランプ氏は「己の不利に働いたとしても、その良心や真実に従って発言をする事こそ、人としての美徳なのだ」という原則を持ち合わせていないようです。