『愚か者』によって作られたドナルド・トランプ

ニューヨーク・タイムズが、「愚か者の党が、いかにドナルド・トランプを作ったか」という記事を掲載しました。
 
この記事を書かれているのは、保守派の軍史家、コラムストであり、マルコ・ルビオ議員の選挙キャンペーンで外交問題アドバイザーを務めたマックス・ブート氏ですが、ブート氏は、トランプ氏の数限りない暴言や無知、大統領としての資質の伴っていない性質の披露に関わらず、多くの共和党支持者や保守派がトランプ氏を支持していることに関して、共和党支持者や保守派の間に蔓延った、『経験』のみを頼りとした『勉強不足』による『無知』を原因として、厳しい批判をしています。
 
以前も書いたことですが、保守派は、リベラル派に比較して、経験から来る知恵を重視し、学問上の知識やイデオロギー、「ポリティカル・コレクトネス」、「机上の空論」にも魅力を感じない為「地球温暖化がアメリカの直面する最大の脅威」などという主張には惑わされません。
 
勿論、全ての保守派や共和党支持者が愚かで無知なのではありません。共和党議員や保守派の指導的ジャーナリストやコラムスト、アナリストなどは、揃ってトランプ氏の政策や資質を批判し「ヒラリーよりも破壊的だ」と警鐘を鳴らしています。(ただし、テレビの場合は視聴率の為に、大衆相手の扇情的なメッセージを送る人々が採用されています。)
 
保守派の名だたる外交・軍事・経済専門家が、こぞって#ネバー・トランプを掲げている事を考えれば、ブート氏の言うとおり、諸問題に対して「無知」であるかどうかが、トランプ氏を支持するか、しないかの境目になっている点は否めません。
 
トランプ支持者が「国際関係」「軍事」、また「経済」の諸事情やその仕組みについての知識が無いことは事実です。それだけでなく、諸事情やその仕組みについて、詳しく学ぶ必要を感じないようです。『無知』である為に、トランプ氏の掲げる政策をそれほど危惧する事なく、「邪悪なヒラリー」を罵倒してくれそうなトランプ氏に靡いているのが本当でしょう。
 

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またこれらの支持者は、トランプ氏によって煽動された「犠牲者意識」をもって「システムの抜本的改革」をトランプ氏に期待している面があります。
 
トランプ氏は、自身の得票に結びつかない全てのシステムを「不正操作されている」とし、この「システムの改革をもたらす事は、ワシントンの既成の政治家には出来ず、ビジネスで成功をおさめたドナルド・トランプ氏しかいない」というイメージ作りに成功をしています。勿論、トランプ氏自身が語る「不正操作」とは、トランプ氏の「思い通りにならない」という程度のもので、逆に、自身がシステムを悪用し、不正を行なってきたことを無視しています。中小企業や下請け企業への支払いを拒否し、トランプ大学などでも一般の学生から資金を巻き上げたと言われるトランプ氏が、何が不正で、何が単なる主観的不都合なのか、公正で客観的に見極められる筈はありません。
 
それでも「システムが不正操作され、熱心に働く我々が不当に搾取されている」というメッセージは、トランプ支持者たちの「被害者意識」に相当な魅力を感じさせるようです。彼らは民主党によるバラマキ政治の恩恵を受ける貧困層と、一般平均家庭よりやや下の収入や学歴層の間に位置する為、社会的恩恵にも、政治的恩恵にも預からない不満があるのでしょう。
 
トランプ支持者には、いくらトランプ氏による外交政策や経済政策の結果をとやかく言われても、あまりピンと来ないようで、そうした議論を避けるか、「そんなことにはならないと思う」という根拠のない返答をします。いくらデータを基にした客観的な議論をしようとしても、議論そのものを避け、「ヒラリーは嘘つきだ」ですとか、「トランプに投票しない事は、ヒラリーに投票する事と同様だ」と判で押したような解答をします。

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私はトランプ支持者多くの議論を交わしてきましたが、彼らの中には本物の人種差別主義者や、白人至上主義者、性差別主義者などがいます。KKKの団体や、KKKの以前のリーダーであったデイビッド・デュークがトランプ氏の支持を表明し、彼を「我々の白い騎士」と呼んでいるのも本当です。「アメリカを再び白い国に」というTシャツやビルボードが誕生し、ツイッターのトランプ支持者には、「白人至上主義者」が本性を隠すことなく横行しています。

 

以下は私が個人的に受けたメッセージの例ですが、インターネット上のやり取り、という事を考慮しても、保守派やその他の共和党支持者のうち、トランプ支持者でなければ、こういった発言をすることはありません。

 
例1)、KJ May氏、「あんたは知恵遅れだ。次にはひどい目に遭うといいよ」

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例2)、ウィリアム・フィリップ・ヒーレイ氏、「アジア人め、あんたの発言と一緒にアジアに帰れ。あんたはトランプのような人間がこの国を建てた事を忘れてる。我々のような白い肌でだ。あんたたちのような黒い肌の人間の殆どは、泥の家で暮らしてるじゃないか。戦争したって白人から施し物を貰うばっかりだ。あんたは良いものは全て白人から来ることを知るべきだ。我々はあんたを西側に受け入れた。ところが使用済みのコンドームみたいなあんたは、全くそれを無駄にしてる。あんたは本当に馬鹿だ。トランプはアメリカを良くしてくれる。クリントンの下じゃ、災害ばっかりが起こり、第三次世界大戦だって起こるだろう。こんなことは、何千も前に書いてあるさ。」
 

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これらの人々は、母国語の英語を使っていますが、綴りや文法の誤りが多く、殆どきちんとした文章を書いたことが無い層である事が伺えます。或いは、酔っ払ったまま、書いているのかもしれません。それでも、このようなコメントは、どんなに意見が違っていても、マルコ・ルビオ支持者や、テッド・クルーズ支持者にはありませんでした。
 
また、トランプ弁護をする為に、民主党のシステムにハッキングをさせたプーチン大統領まで擁護し、プーチン政権の下で弾圧されたゲイリー・カスパロフ氏のようなロシアの人権活動家、民主運動家の批判をされたトランプ支持者もいます。
 
一般的に、トランプ支持者は、共和党支持者、保守派の中でも知的・或いは道徳のレベルが低い層の人々であると言われてます。これはトランプ氏自身がネヴァダ州での開票日に「私は無教養の人々が大好きだ」と支持者に対して語った事からも伺えますし、その他の意識調査や報道にも表れています。
 
勿論、全てのトランプ支持者がこのような暴言をメッセージとして他人に送るわけではありませんが、このような暴言を用いて意見の違う他人を罵るような人々は、その殆どがトランプ支持者です。(それ以外はお目にかかった事がありません。)
 
このような現実を前に、どこの国でもそうでしょうが、保守派は良識や知性の証明にはならず、リベラル派が道徳的でないとは言えません。