英国の民意を批判し、『過激イスラム』と『ドイツ独裁』を擁護する愚

イギリスを代表する株価指数FTSE100の発表によれば、イギリスのEU離脱を問う国民投票の結果を受けて一時落ち込んだポンドや売りが目立った株価は、国民投票の行なわれた先週木曜日の水準以上に回復をしたようです。

www.theguardian.com

EU離脱によって株価が落ち込み、ポンドの価値が下落し、イギリス経済が不況に陥る事を警告した経済学者も多くいましたが、EU離脱までに月数があると考えられる事、またイギリス国立銀行や米国連邦(準備)銀行などが金利を低くして、英国経済のダメージを防ごうとすると見られた事が、ポンドやイギリス株の下落に歯止めをかけたようです。
 
また、イギリスのEU離脱に関連して、中東問題を専門に扱う保守派メディアの『Middle Eastern Forum』は、過激イスラム教の問題をBrexitの真の原因として、これを『臭いものに蓋』のように扱い、敢えて話題にしないEUや左翼エリート、また多くのリベラル派のメディアを批判するカナダ人で世俗派イスラム教徒のジャーナリストであるタリク・ファター氏の意見を掲載しています。

Radical Islam Was Brexit's Elephant in the Room :: Middle East Forum

 
自身が世俗派イスラム教徒(伝統文化、慣習的なイスラム教徒で、イスラム教を宗教的には信じていないイスラム教徒を指す)であるファター氏は、離脱が70%を超えた、かつて栄えた炭鉱の街であるバーンスリーでの、中年の男性の離脱に票を投じた理由を「イスラム教徒(の難民)がこの国に押し寄せる事を避ける為だ。単純な理由だよ」とイギリスのテレビ番組で答えた事を上げ、『過激イスラム』への危機感こそが、学者や政治家、メディアがはっきりと宣言しないまでも、離脱派が現状維持派を上回った理由であると分析しています。

f:id:HKennedy:20160630142632j:plain

 
またファター氏は、過激イスラムを問題視して『人種差別主義者』というレッテルを貼られる事を恐れる感情が多くの人々にあることを認めながらも、過激イスラムの問題が無いかのように振る舞えば、将来的に必ず極右勢力の反発があるだろうと予測しています。
 
人種差別主義者と見られる事への恐れは、イギリスだけでなくフランスでも特に左翼やエリート層の国民の間にありますが、過激イスラムやイスラム教の中世時代そのものの価値観を受容することへの抵抗感は、イギリス、フランス、ミャンマー、インド、中央アフリカなどで、実は殆どが抱えています。
 
続けてファター氏は、イスラム教の指導者が「過激イスラム」への受容を、ヨーロッパの街や路上、職場や学校で非イスラム教徒である地元民に対して強要し続けたり、路上を防いで金曜の祈りを捧げるならば、左翼に牛耳られているEU首脳がどのようにイギリスに対して『報復処置』を模索しても、英国の離脱に他の加盟国も続くだろうと分析しています。

f:id:HKennedy:20160630142716j:plain

 

民主主義的な手続きを以て『離脱』の意思表示をした英国を『ポピュリズム』と批判するメディアもあるようですが、むしろ共同体の一員でありながら、他の加盟国との同調や同意を得ないまま、多くのシリア難民の受け入れを独断で決行し、他国にもその政策のツケをを払わせているドイツのメルケル首相による『独裁』こそ、厳しい批判を受けるべきです。米国の保守派メディアは、英国の民意に対する批判を『反民主主義的だ』と酷評しています。
 
私は、感情的で反射的なナショナリズムやポピュリズムに決して賛同をするつもりはありませんが、EU離脱を望む英国民の意識は、現実を照らし合わせてむしろ理に適っていると考えます。批判されるべきは『過激イスラム』であり、移住先の先進国でイスラム主義社会を築き、地元に溶け込もうとしない多くの移民であり、また「民主主義的な手続きを省いて」80万人のシリア難民を受け入れを独断したドイツ・メルケル首相の『独裁』です。英国のEU離脱に対してドイツが批判をするならば、それこそ責任逃れの的外れでしょう。
 

f:id:HKennedy:20160630142743j:plain

 
イギリスが受け入れたシリア難民の数は5,000人です。これはドイツの80万人に比べれば僅少と言えますが、日本が去年受け入れたシリア難民はたった27人です。日本にシリア難民を受け入れる責務はない傍ら、イギリスがシリア難民を受け入れなければならない政治的、道義的、歴史的、言語、文化的責任も皆無です。

Japan took in just 27 refugees last year. Yes, for the entire year. - The Washington Post

 
イギリスと同じ立場に自国を置いて考えれば、軍事的、経済的に独立できる見通しが立つ限り、殆どの先進国、民主主義国家の国民は、ドイツの独裁(失政)の道連れとなるよりも、共同体離脱の道を選ぶでしょう。
 
ポピュリズムをいつでも手放しで賛同する事はありませんが、『過激イスラム』や『独裁』よりはマシであると考えます。