トランプ氏の掲げる、あまりにも荒唐無稽な『移民政策』

本日、手元に届いた、「トランプ氏を真剣に受け止めた場合」という特集記事を掲載したコメンタリー誌が届きましたので、それを参考にして、「トランプ氏の掲げる公約を真剣に受け取る場合、何が期待されるか」という視点で、『メキシコとの国境沿いの壁建設』を含む『移民政策』について考えてみます。
 
メキシコとの1,951マイル (3,141km)に及ぶ国境沿いの約1,000マイル(1,600キロ)に、人が登れない高さ、約9メートルから12メートルのを建設するのには、材料費だけで2兆円掛かります。
 
アメリカとメキシコの国境の約3分の一の距離は、すでにフェンスが建てられており、最新技術によるセキュリティー・システムの導入や、国境パトロール隊が警備をしています。この1,600キロの距離の3分の2には、アリゾナ州の砂漠やニューメキシコ州の山や、川岸などが含まれており、勿論個人所有の土地もあります。

 

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同時にトランプ氏は、国境の壁以外にも、アメリカ内の1,100万人にも上る不法滞在者の徹底した強制送還を掲げています。また、状況が落ち着くまでとしながら、「合法移民」の受け入れも中断するとしています。
 
さて、誰がこれを建設するかという事ですが、アメリカの建設業界で働く労働者の15%は不法滞在者だと言われており、彼らが強制送還されることを考えれば、建設業界の「現場労働者」そのものが不足することになります。トランプ氏は、資格保有者や技術者の移民も一時中断することを掲げていますので、この不足を補うのは一般のアメリカ人だけとなりますが、果たしてこれが可能でしょうか。
 
また、建設業界の現場労働者の不足を考え、国内の建設工事への需要が変わらないとすれば、供給が間に合わないことになり、壁を建設するのに要する数年から数十年の間、国内の建築需要が慢性的に不足することになります。

 

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トランプ氏は、2年の間に彼らを強制退去させると約束していますが、そのためにかかる人件費、一時収容施設の増築、送還するバス費用、飛行機費用、裁判費用などの諸費用は、333兆円と計算されています。
 
因みに、この「不法滞在者」ですが、彼らとて、家賃を払い、労働し、消費し、その際には税金を払います。彼らはアメリカ社会の中の一員であり、商品やサービスなどを提供し、同時に消費者でもあります。彼らが2年の間に強制送還されることは、アメリカの経済を『大恐慌』に似た不況に陥れ、労働人口を6,4%減少させ、1,000万人以上の労働者を失なう事となります。
 
トランプ氏が大統領に就任する以前の経済力と比較し、トランプ氏就任2年後のアメリカ経済は5,7%縮小します。GDPは、110兆円を減少させ、オバマ政権が過去3年かかって回復させた利潤を消滅させます。
 
「違法滞在者」が強制送還される為に、アメリカの将来を担おうとして教育を与えられてきた彼らの子供たちも国外退去する事となり、将来的にアメリカは、彼らから技術や労働サービス、納税を受けることが出来なくなります。
 
「不法滞在者」だけでなく「合法的滞在者」の受け入れも一時停止するという政策によって、現在、外国人の仕事となっている「野菜や果物などの収穫」「チキンの骨を取り除く作業」「オフィスの床やトイレの掃除」などを、アメリカ人が担うことになるようですが、果たしてこれらの仕事をアメリカ人が行なうでしょうか。

 

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それだけでなく、「合法的移民」の一時停止は、エンジニア、科学者、数学者など、アメリカの「頭脳技術者」も一時停止すると見られ、「アメリカを再び偉大な国とする」という公約は、偉大な国どころか、移民政策一つをとっても、アメリカの国力を破壊させる大きなキッカケとなるようです。