ディプロマット誌も認める「政治論争」としての「歴史論争」

2013年に書かれたディプロマット誌の記事を再読する機会に恵まれました。

以下はその和訳(部分)です。

 

thediplomat.com

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『歴史の議論』は、日本が近隣諸国に対する過去の侵略戦争を一度も誤ったことが無いという前提で常になされている。(ところが)実際には、日本はアジア諸国に賠償という形で経済支援をしてきた。アジア女性基金に明確さはないが、トーキョーは性奴隷の被害者たちに支払いをしてきた。また同時に村山富市首相は、1995年に「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」と述べ、「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明」するとしている。

 

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1993年には、河野洋平官房長官が慰安婦問題にかんして、「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」とし、「いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ち」を述べ、何人かの首相たちも、生存している元性奴隷たちに「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」と手紙を書いている。

 

これらは、世界の平均から見て、はるかに徹底した謝罪である。

 

それなのに、なぜ日本はこれらの謝罪を行なってきた事を認められていないのだろう。その一つは、以前述べたように、同盟相手のドイツがはるかに良い関係を隣国と築き得ていることにあるだろう。しかしこれだけではない。

 

もう一つの理由として挙げられているのが、地政学の問題だ。戦略緊急課題はイスラエル、西ヨーロッパと、冷戦後の中央ヨーロッパは、ドイツとの関係改善をする必要に迫られていた。ところがアジアでは、日本の立場は悪化をしている。1970年代、80年代には、中国共産党はトーキョーからの大規模な資金を要求し始めた。今日北京は、日本からの資金は必要としていない。日本の同盟国であるアメリカは、(今では)ロシアに代わって(中国の)敵国となっている。また中国共産党は排他的愛国主義に認証を与えるため、ジャパノフォビア(日本恐怖症)を育成している。

 

韓国は日本との国交正常化がされた1965年には、貧しい自治国だった。条約の一環として、韓国は日本から経済支援を得たが、ソウルは植民地時代の日本の行為を責める主張には日本を免責していた。1980年代後半の民主化の折、多くの韓国人指導者たちは日本との関係改善に励んでいた。ところが同時に「反日カード」が選挙の目的で利用され始めた。「日本に対して弱腰である」と思われることは、呪いとなった。これは特に、父親である故朴正煕大統領が日本の満州軍の中尉であった朴槿恵大統領にとって言えることである。


経済発展によって韓国は外国からの経済援助を必要とはしなくなった。また司法も独立機関となった。最近韓国最高裁は、「1965年の日本との条約は、日本に対して賠償を請求する韓国市民の憲法上の権利を侵害する」と判決を下した。


日本の外交は、韓国の政治が新しい時代に入ったことに適応するのに失敗しているとも言える。

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因みに、2013年8月には、地方自治体の公園が外国の政治論争の場になることを懸念する記事もあります。これはグレンデールやユニオン・シティーなどの地方都市で進められていた慰安婦像設置運動を指すと思われますが、「歴史論争」ではなく「政治論争」とされています。

 

http://www.dailycamera.com/…/comfort-women-parks-japan-korea

 

いずれにせよ、過去の問題が、蒸し返されてきた理由は、政治的な原因であることがこの記事によっても分析されています。歴史問題の原因が「政治」にある限り、政治家が政治的な解決を果たすことは、時として必要であると言えます。