政治家としての自殺的主張を繰り返すドナルド・トランプ

ドナルド・トランプ氏の行き過ぎた、(政治的)自己破壊的な言動に、トランプ支持を表明していたジャーナリストのアン・コルターや、ニュート・ギングリッチのような議員までが、疑問を発するようになりました。アン・コルターは、一連のトランプ氏の行状を指して「メンタルがおかしい」「16歳の息子を絶えず少年院から助け出しているような気になる」と言い、ギングリッチ氏は、ハイジ・クルーズ夫人への攻撃を「まったく愚かな行動だ」としています。

http://www.nationalreview.com/corner/433432/mental-utterly-stupid-trump-only-cares-about-trump

 

今更何を…という感もするのですが、共和党トップ候補者でありながら、充分な選挙人を獲得できるか、また獲得出来たとしても、ヒラリー・クリントン候補者を相手に一般選挙で敗北した場合、「なぜトランプ氏のような問題の多い候補者を支持したのか」と既に落ち目だったこれら著名人のキャリアにも致命的な傷がつくことになります。

 

これらの著名人サポーターによる、突然のトランプ批判は、一部の支持者による熱狂的で無条件のサポートにも拘らず、高まり続ける不支持率に危機感を覚えてのものでしょう。

 

発端は、反トランプ氏を掲げる共和党選挙委員会『Make America Awesome』が、トランプ氏のプライベート・ジェットで撮影され、GQという雑誌の表紙を飾った有名な現トランプ夫人のヌード写真を取り上げて、彼女が大統領夫人となるのに相応しいか暗に問いかけた事にあります。

 

これをもってトランプ氏は、テッド・クルーズ陣営を批判し、「嘘つきのテッド・クルーズ、GQが撮影したメラニアの写真をキャンペーンの広告につかった。気をつけろよ。そうでないと、あんたの妻の秘密もばらすぞ」とツイートしました。これに対し、まずクルーズ氏側が、「あなたの妻の写真は私たちとは関係がありません。ハイジ(クルーズ夫人)を攻撃するなら、ドナルド、あなたは私が考えた以上の臆病者です」とツイートしました。

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加えて『Make America Awesome』のグループが、「トランプ、あの広告は私たちが出したのであって、クルーズのキャンペーンとは関係ないのよ」とツイートしましたが、トランプ氏は、「秘密をばらす必要はない。写真は千の言葉よりも多く語る」と、元モデルであったメラニア夫人の写真と、クルーズ夫人の特に写りの悪い一瞬の写真を並べたものをツイートしました。これにクルーズ議員は「ドナルド、真の男は女性を攻撃するものではない。あなたの奥方は美しいが、ハイジは私の愛する女性です」と怒りの応戦となりました。

 

クルーズ夫人の容姿がトランプ夫人に劣るというかのようなツイートは、女性にとって容姿がすべてであるといった主張と同義で、これには多くのメディアも反発しましたが、トランプ氏は、「先に始めたのはクルーズ側です」と繰り返しています。実際に、GQ誌の表紙を飾ったメラニア夫人のヌード写真は、トランプ氏と夫人の道徳観や倫理観に背いたものではなく、特にトランプ氏はその写真を誇っていたのですから、今更攻撃されていると逆上する方が、おかしな話です。

 

CNNのアンダーソン・クーパーは、トランプ氏の「先にやったのはクルーズ側だ」という解答に対して、「それは5歳の子供の言い訳でしょう?」と詰め寄りました。

「お言葉を返すようですが、『先にやったのはあっちだ』という言い訳は5歳の子供のものでしょう。どの親でも知っていることですが...」

 

www.businessinsider.com

 

トランプ氏は、続けてクルーズ陣営が共和党政治委員会を使って自分の妻のモデル業を揶揄する為にあの写真を使ったと主張しましたが、なぜかミット・ロムニー、マサチューセッツ州知事まで引き合いに出して批判しました。

 

「彼らはミット・ロムニー側の人間です。ロムニーは、4年前、自分がひどい大敗をしたことをとても恥ずかしく考えています。まるで犬のように惨めな負け方でした。選挙に負けたでしょう。クルーズがやったことです。クルーズは、共和党の政治行動委員会の全員を知っていますから。」

 

ちなみに、30日、ラジオ放送のインタビューで、トランプ氏の選挙マネージャーが、トランプ夫人の写真の広告とクルーズ陣営は関係がないことを認めています。

Lewandowski: Actually, Cruz Had Nothing to Do With That Melania Ad - Guy Benson

 

トランプ氏は、大統領の資質としてはあまりにも繊細で、攻撃されていると感じやすいのではないかとクーパー氏が質問を投げかけると、トランプ氏は彼の癇癪が大統領の資質として必要だとし、ホワイト・ハウスの声明は外国語にも訳されるため、外国に対して「アメリカは二度と搾取されないというメッセージになる」と主張しました。

 

また、今日30日、トランプ氏はもし中絶が違法となった場合について聞かれ、中絶が違法となれば、中絶をする女性は罰を受けるのかという質問に、「そういうことになります」と答えています。リベラル派の民主党支持者だけでなく、共和党支持者からも猛烈な批判を受けたトランプ氏は、数時間後、自身の回答を撤回し、「医者などが罰を受けるべきです。女性は被害者です。私の立場は初めからはっきりとしています」とツイートを出しました。

Trump reverses statement on women and abortion after outcry - CNNPolitics.com

 

トランプ氏の見せるナルシシズムと、他人が常に攻撃しているに違いないという被害者意識、他人の気持ちを配慮出来ない資質は、以前ご紹介したサム・ヴァクニン博士が語られた通り、典型的な『自己愛パーソナリティー症候群』の例だと思われます。

 

最近のトランプ氏の一連の発言は、政治的自殺行為と呼ばれる類のもので、その一つでも語ったのがほかの候補者であったら、その資質と責任を問われ、選挙から降りていたと思われます。実際、私を含む多くの人々は、トランプ氏の支持率がトップの座を保ち続けるとは思っていませんでした。一度はベン・カーソン氏に首位を奪われ、また共和党第一のアイオア州の選挙では、テッド・クルーズ議員に首位を奪われました。トランプ氏の支持率の伸びもそこまでであると考えられていたのです。トランプ氏の過激で挑発的、また実現性のない政策によって、支持者が彼に愛想を尽かすと予想をしていました。

 

ベン・カーソン氏は、トランプ氏には二つの人格があると語りましたが、トランプ氏の支持者たちは、馬から振り落とされないようにしがみつく騎手のように、最後までトランプ氏を支持すると決意を表明しています。逆にトランプ氏は、しがみつく騎手を振り落とそうとする馬のように、過激さを増している感があります。

 

これは、無理難題を押し付けて、自分に対して本当に忠誠を誓える側近を選ぶ新興宗教の教祖のような側面があるのかもしれませんが、別れたい恋人に対して傍若無人に振る舞いつつ、自分ほど魅力のある恋人はいないと見せ続けるエゴイズムにも見られる行為かもしれません。

 

トランプ氏の元政策アドヴァイザーのステファニー・セジールスキー氏が語った言葉が説得力を持ちます。

 

「トランプ氏ご自身も、ここまで来るとは思われていなかったと思います。たぶん最も怖いのは、彼自身、ここまでの事になるのを、望んでいなかったという点でしょう。もちろん彼は、ホワイト・ハウスまでいくには準備出来ていませんでしたし、相応しくもありません。けれども今では彼のエゴが運転席に居座り、他の事はどうでも良くなっているようです。『ドナルドは失敗しない』『ドナルドには何の弱さもない』『ドナルドの真の敵はドナルドだけだ』トランプ氏は、まるで創作上のキャラクターのように振る舞っています。けれど、ヘラクレスのように、ドナルド・トランプは、造られた作品なのです。」

Trump Defector Parts Curtain on the Donald

 

セジールスキー氏の言葉が正しければ、この『ドナルド・トランプ』を作ったアメリカの層は何なのかという社会深層心理にも、興味が湧くところです。