読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ドナルド・トランプの『災害的アジア政策』 The Diplomatの記事より

ドナルド・トランプ氏のアジア政策を批判したディプロマット誌の記事をご紹介します。

Donald Trump’s Asia Policy Would be a Disaster | The Diplomat

 

勿論、細部に渡る点まで、完全に同意できる訳ではありません。例えば、米軍基地の日本からの撤退後、すぐに日本が核化するであろうという見方は、ルビオ議員も主張されていましたが、日本国内にある『核アレルギーをご存じないようにも思われます。

またイランのような国は、日本が核を持たなくても自国の核所有を目指すでしょう。

 

それでも、トランプ氏の貿易不均等に対する知識の無さや、アジア地域からの米軍縮小や撤退によって中国の軍事拡張を招くという予測には同意を致します。

また「アメリカを偉大な国とする」というスローガンに反して、トランプ氏ご自身は「アメリカを偉大な国家としているものが何か」全く理解されていないという懸念を、この記事も指摘した事に留意をしています。

トランプ氏は、日本製品や中国からの製品に関税を35%まで引き上げると主張していますが、こうした政策は、米国内の消費者への負担を重くし、中国の軍事暴 発を招くだろうという懸念を以前にも書きましたが、貿易や経済への知識が少しでもあれば、トランプ氏の政策がアメリカと同盟国を危機に陥れる事は容易に理 解できます。

Trump’s trade rhetoric, stuck in a time warp - The Washington Post

 

「アメリカを再び偉大な国とする」というスローガンや、反ポリティカル・コレクトネス、取って付けたようなヒラリー・クリントンへの批判に魅了されてトランプ支持をするアメリカ人は、限りない無知と、子供のような無責任さをひけらかしています。

 

       f:id:HKennedy:20160317171917j:plain

 

以下、ディプロマットの記事より、

 

----------

 

共和党からの大統領候補、ドナルド・トランプがアメリカのアジア政策を決定すると仮定しよう。アメリカの大統領選挙は、外交政策で決定される事はないが、彼のナショナリスト、しかも商業主義哲学による支配や外交交流の視点を踏まえて、世界の最も豊かで人口の多い地域に、『トランプ政権』が、どのようなインパクトを与えるかを考える事には価値がある。トランプが大統領になった場合、アジアにはどのような変化があるだろう。短くまとめれば、それは『災害的』である。

 

彼は(アジア外交政策に対して)ごくたまに不得策な口ぶりで語るだけだが、我々はトランプの、特にアジアへの外交政策について、いくつかの事を知っている。彼は巨大で近代的な軍の必要を知っている。彼は軍事力をちらつかせる事の意味を知ってはいるが、それを行使する必要を認識していない。しかも彼は、同盟国(特に日本と韓国)が、アメリカとの軍事同盟にただ乗りをしていると信じている。そして彼は、それが二つの状況を招いていると主張している。一つは、「アメリカは、日韓が真剣に自国の防衛を行なっていないのに、戦略的な軍のプレゼンスを置いているお人好しだ」というもので、もう一つは「これらの同盟国は、自国の防衛に予算をつぎ込まなくて良い為、貿易の不均衡と経済発展によって、我々のランチを食べている」という主張だ。

 

これらの発言から、彼のアジア政策への主要なニュアンスを掴むことができる。そしてそのすべては災害的だ。

 

第一に、トランプはアジアからの米軍基地の撤退を行なうと思われ、かわりにアメリカ領土の守備を強化させると考えられる。これには大きな戦略的な代価を伴うだろう。戦略的軍基地の存在は、同盟国の安全を保障し、侵略者を抑止するだけではない。

それは、どこであっても緊急の事態に際して、米軍の速やかな行動を可能にするものである。米国の国益(に繋がりのある地域)への脅威に対して、米国本土から戦闘機を飛ばし、戦艦を派遣するならば、全ての面に於いて、充分な効果を発揮する事は出来ないのだ。抑止に関する中心的な考えは、「事が起こってから元の状態に戻すことよりも、事が起こらないように抑止する方が容易である」というものである。

もしもアメリカの派兵が距離の為に遅れるならば、国際システムの全ての拡張主義者たち、全ての修正主義者たちは、『既成事実』という手段に訴えるだろう。つまり、もしならず者たちが戦争やゲリラ戦を開始したり、他者のテリトリーを侵略したり、または近くの海域を支配し始めた場合、アメリカは彼らの行動に渋々同意をするか、或いは、彼らが自分達の存在を誇示した後に、大きな犠牲を払って元の状態に戻すことを強いられるのだ。

 

   f:id:HKennedy:20160315155134j:plain

 

第二番目に、アジアに於けるアメリカの存在を無くすことによって、『トランプ政権』の軍は、エスカレーション・コントロール(激化を防ぐ力)を失うことになる。別に難しい科学の話をしている訳ではないが、エスカレーション・コントロールは、危機や衝突の際に、完全な絶滅や核戦争に訴える事無く、敵側に対して訴える力を必要としている。全面戦争のアプローチは、既に1950年代にアイゼンハワー大統領の大規模な報復の教義によって試されているが、それが招いたのは、ソビエトとの核兵器開発のレースを触媒とした、中国や北朝鮮の核化の種である。そしてその為にアメリカは、50年代に中国が繰り返し起こした現実の世界での危機や対立に対して、なんの処置も取れなかったのだ。

それより悪いことに、どんなに小さな衝突であっても、全ての軍事衝突に対する解決策が、核による全滅であるとするならば、他国はそのような脅しは信用しなくなるか、その脅しが本物であると実証する必要に迫られる。そのどちらの結果も壊滅的だ。

当然の結果として、もし米軍基地が米国内にしかないならば、全ての衝突や危機は、21世紀ヴァージョンの大規模な報復の教義を招く事になる。何故なら、大西洋を超えて駆け付ける頃には、衝突の成り行きは殆ど決定されている頃となり、おあつらえ向きの解決や、抑止のための軍事行動や、小さな部隊の派遣では充分ではなくなるからだ。

米国内の軍事力は、国際紛争に対して、大規模な報復の暗示をする事によってのみ、影響力を発揮する事が出来るだろう。そしてそのような場合、どんな状況も、さらに受け入れ難い、無責任なレベルにまで引き上げられてしまうのだ。中国が、毎年何兆ドルもの貿易が通過する南シナ海の単独支配を求めるにつれ、米軍の同地域からの撤退は、中国の行動を揺るぎないものとしてしまうだろう。そしてもし中国が南シナ海への軍事支配を実現するならば、同盟国やパートナーと共に、『航海の自由』の権利と、各国との邪魔の無い貿易を行なう能力を失なうのは、アメリカなのだ。

 

   f:id:HKennedy:20160315164616j:plain

 

最後に、日本や韓国のような同盟国に対するトランプのスタンスは、これらの同盟を破壊させるだけでなく、北西アジアの不安定なバランスをさらに不安定にさせる事になる。米国との同盟なしには、日本も韓国も、自身で核兵器を開発することに間違いはなく、核不散の政府を維持する可能性を無くし、イランのような他国が核を所有する事を防ぐ手立てを失うことになる。

また日本と韓国に対する明確な米国の(彼らを守るという)誓いを放棄することによって、アメリカの誓いが曖昧である台湾に対して、アメリカの介入の見込みは無いと考えられるだろう。台湾の意しに反して、台湾を吸収しようと決意を固めている中国は、アメリカの介入が無いことがハッキリすれば、彼らの行動を制御するものはなくなるのだ。

 

しかも、ただ単に日本を見捨てる以上に、トランプは我々が日本との対立する時代に突入させようとしている。彼は日本が自国の防衛に充分な予算をつぎ込んでいないと批判している。しかしながら日本が軍事的に『普通の国』になることに憂慮をしているのは近隣国だ。アメリカの介入が無ければ、日本の巨大で近代的な軍事力は、日本との外交関係が緊張している韓国を中国の側につくように強要しかねない。トランプは日本との貿易不均衡に於いて子供だましのレトリックを繰り返しているが、日米の貿易関係で利益を得ているのはアメリカなのだ。例えばトヨタは、アメリカ国内の収入の低い地域で車を製造し、何万ものアメリカ人に職を与えている。貿易の不均衡などは抽象的概念だが、職は実質的なことだ。

 

韓国についてトランプは「我々はあとどの位、韓国からの何の支払いも無しに、彼らを北朝鮮から守るのか?」と質問する。まず韓国は、韓国に駐屯する米軍の費用を負担しているのが事実なのだが、韓国は、世界中での米国の安全保障の取り組みに協力をしている。また、北朝鮮の反米主義を考えれば、韓国を守りつつ、我々はアメリカも同時に守っているのだ。アメリカの韓国での駐屯によって、核拡散が防止されているのだ。しかしながらトランプは、「北朝鮮の若い男が、暴発する時に、我々はすぐに戦艦を派遣する。軍機も飛ばす。アメリカにとって何の益も無いのにだ」と主張する。化学兵器を使った戦争の被害を出さないというのは「何の益も無い」とは異なる。それは、不安定ではあるが、平和を意味する。それよりもトランプは、第二の朝鮮戦争の方がマシだと言うのだろうか。

 

   f:id:HKennedy:20160308075936j:plain

 

トランプのスローガンは、『アメリカを再び偉大な国にする』だ。しかしながらアメリカを意図的に世界の軍事的指導立場から退かせて、『偉大』であり得る筈がない。世界の自由主義秩序を、他の秩序の侵略に任せることは、『偉大』ではない。大規模の虐殺が起こることを容認したり、長く続いたアジアの平和を守れる力があるのに、終結させるに任せる事は、『偉大』ではない。そして日本と韓国への約束を破る事も『偉大』ではないのだ。

 

『偉大』ではないどころか、トランプのアジア政策は、道徳的、経済的、また戦略的にも『無法的』である。