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ドナルド・トランプ...その攻撃的無知と変わり続ける公約

ドナルド・トランプ氏の公約がコロコロ変わることはよく知られていますが、ことに対ISISへの対策への矛盾は、トランプ氏の大統領としての資質を疑わせています。

 

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トランプ氏は、テロリストに対して水責めだけでなく更に酷い拷問を加え、米軍にはテロリストの家族(妻子)を殺害するように命じるつもりだと発言をしました。

この政策の変わりようについて、コメンタリー誌が指摘をしています。

Donald Trump Makes a Virtue of Ignorance and Malleability

 

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トランプ氏の発言を受けて、先週のデトロイトでのディベートで、アメリカ軍が、国際(国内)法違反であるテロリスト親族への殺害や、水責めよりも酷い拷問を行なう命令に従うだろうかという質問がなされました。これに対してトランプ氏は「私はいつでもリーダーでした。私は人々を導くのに困難を感じた事はありません。私がしなさいと言えば、彼らはするのです。それがリーダーと言うものです」と答えます。

 

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翌日、トランプ氏の選挙本部は、トランプ氏の名前で、この発言を撤回すると声明を発表します。それによれば、トランプ氏は「アメリカは法と条約を順守する国家であり、軍や高官に対して違法となる命令を下す事はしない。このような懸案に関して、彼らからのアドヴァイスを求める。私は軍の兵士に対して法律を犯すような命令は下さない。大統領として私が他のアメリカ人と同様に法の下にある事は明らかである。そして私は法の求める責務を全うする」ようです。

 

ところが、昨夜マイアミ州で行なわれたディベートで、再びこの件が取り沙汰されると、以下のように答えます。

「テロリストの家族に関して、また法律に関して、これは水責めについての質問状で始まった質疑です。私たちの法律では水責めは現在禁じられています。ところが彼らには法律はありません。ルールもありません。要網もありません。彼らは首を切り落とし、40,50、60人の人々を鉄のケージに入れて水に沈め、一時間後に引き上げます。勿論、全ての人が死んでいます。私達は、違うレベルの戦いを戦っているのです。我々は法律に従わなければなりません。しかし我々の法律は拡大されるべきです。何故なら我々は少なくとも同等のレベルで戦い得る必要があるからです。さもなければ我々は決してISISやその他の悪人を始末する事は決してできないでしょう。我々が我々の法律を拡大しない限り、我々は敗者のままです。そして彼らは我々を笑っているのです。笑われているのです。信じて下さい。」

 

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なるほど、彼のポジションは、ISISは我々が彼らと同じ虐殺を行なわない限り我々の事を敗者と見る...それだけでも我々がアメリカの中心的原則や国際法を『拡張する』という形で『違反』しても良いと主張しているのでしょう。

トランプ氏のこのような変わり身は、勿論、予見されていました。トランプ氏は、戦争犯罪を犯さないという約束の下にはどんなISIS対策も打ち出せないからです。予見が難しかったのは、中東にアメリカ軍を派遣しないという彼自身の約束を反故している点です。

今まで彼は、ISISに対して戦うために地上軍を派遣する事を拒否していました。その代わり、彼は無差別爆撃と拷問について語っていただけです。また『石油を取り上げる』案についても述べましたが、これなどはもっと長期的な地上軍派遣と駐屯が必要となります。ところが彼は、多分『一国平和主義者』たちを喜ばせようとしてか、現実としての地上軍派遣の必要性を認識してきませんでした。

 

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しかしながら、昨夜ヒュー・ヒューイットのインタビユーで、ロイド・オースチン将軍の「我々はISISを制圧する為にもっと地上軍を送らなければならない」というコメントに対して語った内容によれば、トランプ氏はこれに反対をせず、「我々には他に選択肢がない」と述べています。

「我々はISISを制圧しなければなりません。彼らを徹底的に始末しなければならないのです。我々は彼らを一掃するべきです。そして崩壊しかかっている我々の国を建て直さなければならりません。我々に選択の余地はないのです。私は将軍たちの言う事を聞きます。しかしながら私が聞いている地上軍の数は2万人から3万人の規模です。我々は彼らを早急に片づけなければなりません。」

この発言は、トランプ氏のイラク戦争への不支持に狂喜して、トランプ氏が『ネオコンの戦争屋』を隅に追いやったと思った支持者達にはショックでしょうが、ここで彼は他の候補者以上に、ISISを制圧する為に更なる米軍の地上軍を投入する計画を語っているのです。しかしながら、このコメントは殆ど注目される事がありませんでした。その理由が何故かはわかりきっていますが、もはや誰も彼の言う事を一々真剣には受け止めていないのです。全ての人は、トランプ氏の最も熱心な支持者でさえ、彼が翌日には全く違う事を主張する事を知っています。

 

   

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これは驚くに値しません。彼は去年の9月から外交政策のチームを作る事を約束していますが、未だにそれは存在せず、ISISへの制圧に向けて真剣な計画を立てるアドヴァイザーなどいないのです。或いはトランプ氏の人格を信仰するカルト新興宗教のキャンペーンには、そのようなものは不必要なのでしょう。

実質的な政策は、支持者にとって無関係であるばかりか、トランプ氏の大声の主張から注意を逸らすだけだと思われているようです。事実は、彼の誇大で不正確な宣言にとっては却って妨げになるのでしょう。

(ウォール・ストリート・ジャーナルの指摘の通り、トランプ氏は我々から日本は何も買っていないと主張しましたが、実際には我々は年間約1160億ドル(13兆円)の製品とサービスを売っています。「何も買ってもらっていない」とは程遠い現実です。) 
 
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このコメンタリー誌の記事から何が伺えるでしょう。トランプ氏の支持者は、彼の政策ではなく、トランプ氏の人格への信仰によって、彼への支持を表明しているという事実です。

ですから、トランプ氏が中絶に賛成しても、反対をしても、不法移民を強制退去させると言っても、させないと言っても、ヒラリー・クリントンを優れた国務長官であったと褒めても、史上最悪の国務長官であったと非難しても、支持者にとっては全く関係がないのでしょう。

 

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トランプ氏の支持を表明した元外科医のベン・カーソン氏によれば、「大統領的な」トランプ氏も「ステージを降りると存在している」ようですが、我々は「大統領的な」トランプ氏にお目にかかった事はありません。

またカーソン氏は「トランプ氏には二つの人格がある」とも述べましたが、そのカーソン氏も2週間前には、トランプが指名選を勝ち取る可能性について、「我々は、ひどい、とてもひどい間違いを犯そうとしている」と語ったばかりです。
いくつもの顔を持っているのはトランプ氏だけではないようです。

Ben Carson on Trump getting elected: voters not 'that dense' | US news | The Guardian

 

このような醜悪な変わりようについて行けなくなったのか、昨日マルコ・ルビオ議員は、トランプ氏が共和党からの指名を勝ち取ることになった場合、議員自身は共和党員としてトランプ氏を支持出来るかわからないと語っています。

 

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http://www.nytimes.com/politics/first-draft/2016/03/12/marco-rubio-nearing-reckoning-in-florida-primary-likens-donald-trump-to-third-world-strong-men/?_r=0

 

私には、トランプ氏への不支持の表明、或いは支持の撤回こそ、米国保守派の良識と原則を代表する声であるように思えます。