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現在の日本は素晴らしい国と思えるか

ワルシャワ大学教授のアンジェイ・コズロウスキー博士から、レベッカ・クリフォードという女性が2004年に書かれた、『Cleansing History, Cleansing Japan.(歴史の浄化、日本の浄化)』という論文を送って頂きました。この論文はオックスフォード大学内の日産研究所=日本学科に提出されたもののよ うで、書かれたクリフォード女史は、当時オックスフォード大学の博士課程で近代史を専攻されていたようです。

 

内容は主に、漫画家である小林よしのり氏の『戦争論』と、このベストセラーの背景となった考えについてでした。

 

このような論文は、クリフォード女史の『戦争論』への解釈がどのようなものかを理解する助けにはなりますが、小林氏の『戦争論』そのものを理解するのとは違います。但し、俗に『ナショナリスト』と呼ばれる方々の主張を聞く限り、クリフォード女史の『日本人ナショナリストの歴史解釈とその目的』への理解は、 おおよそ正確ではないかと思われます。

 

 

クリフォード女史の解釈によれば、日本のナショナリストが戦時中の日本の犯した戦争犯罪やその他の蛮行を全く認める事が出来ず、日本は悪い事を行なわなかった国であると主張するのは、現在の日本人の愛国心の薄さや道徳観の低さを、自国に誇りを持てなくなった為とし、『自虐史観』の原因となった(?)連合 国主導の東京裁判や、アメリカ的民主主義の導入などに見出しているからだと説明されています。

 

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こういった解釈は、クリフォード女史独自の解釈というよりも、愛国を掲げる方の多くも主張されています。体系だって説明される事はなくても、愛国心の無さや道徳心の低さを、第二次世界大戦の日本の行ないへの解釈と直接的に結びつける言論は頻繁に存在します。「東京裁判の見直しがなくて日本の真の"自立"はな い」等の言論に見られる通り、現在の日本の"依存"(?)が東京裁判によるものだという主張すらあります。

 

愛国心の欠如や道徳心の低さなどを取りあげ、現在の日本が抱える諸悪の根源を戦後の歴史教育に求めている為、これらの『諸悪』を正す為には、戦前の日本の肯定と日本の歴史に誇りを持つ事から始めなければならないと考えられているのでしょう。

 

その為に「日本人であることに誇りを持てる歴史観を読者に提供することを目的としている」書籍が多く出版され、近代(戦前、戦中)の日本の素晴らしかった人々や話しが強調されるのだと思います。

ところが、「日本人である事に誇りを持てる歴史観」の目的は、「日本人に誇りを持たせる事」ですから、「誇りを持てることに繋がらない事実はどう処理するのか」という疑問がどうしても残ります。 

 

「戦前、戦中の日本は悪い事を行なわなかった」と正面きって仰る方はあまりいらっしゃいませんが、日本が行なったとされる戦争犯罪の一つ一つについての議論を見れば、全て否定されたり、或いは正当化されるだけで、結局何も悪い事をしなかったと主張するのと同じ顛末となってしまっています。

 

「日本人であることに誇りを持てる歴史観」は、「現在の日本の愛国心や道徳心の低さを正す為に必要」だという仮説の下に提供されているようですが、果たして現在の日本は本当に悪い国なのでしょうか。

 

 

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現在の日本のシステムには、戦前の日本のシステムと比較して、個人の自由や権利が確立されている為、道徳・不道徳の行ないが個人の采配に任せられている点は否めません。

それでも、誰でも自由に発言し、法の下に自由に行動ることが許されています。少なくとも選択肢は与えられています。

 

世界には色々な国があり、政府の形態も多種多様ですが、言論の自由一つをとってみても、それが保証されていない時代や国に住むという事がどれ程の悲劇なのか、軽んじられるべきではありません。

 

思想、表現、報道の自由という視点も、見逃されるべきではありません。どれ程現在の日本の政治家が腐敗していても、そうした政治家を非難し、批判記事を報道する自由は認められています。こうした自由が認められない時代や国に住む悲劇は、察するに余りあります。

 

現在の日本は、一部のナショナリストが主張する程、それほど悪い国なのでしょうか?

 

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5年前の大震災の最中で見せた、日本人の公共心や相互の思いやり、またあれだけの災害から立ち直った姿は、世界中を感動させたのではなかったでしょうか?

 

現在の日本を肯定的に評価できるかどうかが、ナショナリストと保守派を分け隔てているのかもしれません。