通州事件のユネスコ申請に関して…(1)

通州事件のユネスコ申請に関して…(1)

 

通州事件をユネスコの記憶遺産に申請しようという日本側の動機は、「南京大虐殺の登録を受けて」と言われているようです。

「通州事件」ユネスコ記憶遺産に申請へ つくる会「世界に知ってほしい」 中国人部隊の邦人200人殺害 - 産経ニュース

水を差すようですが、私は、通州事件がユネスコの記憶遺産に登録されるとは考えてはおりません。登録の申請を支持される方の中にも、実際に通州事件が登録されると考えられている方はどれ位いらっしゃるでしょう。

通州事件が誰によって起こされたか、という基本的な背景ですが、この事件は、日本の傀儡政権であった冀東自治政府の保安隊が、日本軍機による通州の兵舎を誤爆され起こした反乱事件です。暴徒は日本関連施設だけでなく、冀東政府、冀東銀行などから掠奪を行ないました。

冀東防共自治政府 - Wikipedia

蒋介石率いる国民党軍による虐殺でもなければ、毛沢東率いる中国共産党軍による犯行でもなく、日本の傀儡政権の保安隊によって、日本軍の誤爆に反発する形で起きた虐殺事件が、現在の中国への牽制となり得るかどうか、この点も議論されるべきだと思います。

また、通州事件の被害を過小評価するつもりはありませんが、同規模の虐殺は実はいたる所に存在しますし、1900年に中国で起こった義和団事件では、欧米の宣教師241名と中国人キリスト教徒23,000名が虐殺されています。その他にも西側の意識に強烈な影響を与えた虐殺には天津教案、古田教案といわれる虐殺事件があります。 

被害者数の規模で言えば、何と言ってもルワンダの虐殺の方が大規模ですが、勿論登録などはされていません。

ユネスコは通常『虐殺』の登録は行ないません。南京の登録は、国連という組織に対する中国の特別な政治力を示しているものでしょう。

最近では、パレスチナ側がイスラエルの『嘆きの壁』をイスラム教の聖地の一つとしてユネスコ遺産登録を申請し、イスラエルが激しく反対しましたが、国連という組織の圧倒的多数のイスラム票を考えれば、イスラム教聖地としての『嘆きの壁』の申請の方が、通州事件登録よりも、遥かに現実味があります。(実際には、嘆きの壁はユダヤ教とユダヤ人のものであって、イスラム教徒がこれに権利を主張する事は、歴史の冒涜も良いところですが…) http://www.cnsnews.com/news/article/patrick-goodenough/unesco-may-designate-jerusalems-western-wall-islamic-holy-site

このような政治的組織の決定に対応する為に『通州事件』を申請しても相手にされないだけでなく、外国の目から見れば「南京大虐殺の正当化」、或いは「日本人の被害史観を訴えようとしている」としか映りません。日本の申請に対して好意的に捉える国は、親日的なアジアの国々を含めても、皆無でしょう。

登録が認められなかった場合、特に若い日本人の意識の中に、『日本人は世界から不当な差別を受けている』という『孤立感』と『犠牲者意識』から来る『排他主義』が高まると思います。反中感情だけでなく、まるで全てが旧戦勝国の陰謀であるかのような反米感情すら生じるかもしれません。

むしろそれを期待した上での申請ではないかという疑問すら感じています。