ロシア: 民主活動家アレクセイ・ナヴァルニィー逮捕に見る、独裁者プーチンの焦り
ロシア政府内の腐敗を暴露し、『プーチンが最も恐れる男』と呼ばれ、ロシア民主化運動の指導的立場である弁護士のアレクセイ・ナヴァルニィが逮捕された。彼が主催した「反腐敗デモ」はロシア連邦内の90カ所以上の都市に広まり、各地では何千人もの人々が集まり、2011年から2012年の間に起こったデモ以来、最大規模の行進を行なっている。非政府組織OVD-Infoによれば、このデモの為にロシア内で逮捕された市民は約800人に上るとされているが、この数の確認は取れておらず、ロシア国営放送のタス通信がモスクワ警察の発表として計算した逮捕者は、およそ500人とされている。また、デモ隊の参加者の半数は20歳以下の未成年であり、クレムリンのプロパガンダ報道機関である『ロシア・トゥデイ』や『スプートニック』、『タス通信』などではなく、インターネットから情報を得る世代である事が伺われる。
Protesters Gather in 99 Cities Across Russia; Top Putin Critic Is Arrested - NYTimes.com
Russia: Mass Protest Against Government in Moscow | Time.com
От Петербурга до Владивостока. Всероссийская акция протеста в фотографиях — Meduza
アレクセイ・ナヴァルニィー(右)と、収監される弟のオレグ・ナヴァルニィー(左)
デモ参加者の半数は20歳以下の若者である。
FBI Probing Breitbart, InfoWars In Russia Investigation | The Daily Caller
https://www.nytimes.com/2017/03/25/business/alex-jones-pizzagate-apology-comet-ping-pong.html?_r=0
https://www.nytimes.com/2017/02/14/us/politics/russia-intelligence-communications-trump.html
Trump aides were in constant touch with senior Russian officials during campaign - CNNPolitics.com
Updated Trump Russia election timeline FBI - Business Insider
Poll: Majority of Americans want independent commission to investigate Trump-Russia ties - POLITICO
『反腐敗』のプラカードを掲げた自転車に乗っていた為に逮捕された18歳の少年
ヘイトスピーチと「日本らしさ」の限界
最近私は、知日派のアメリカ人と議論を交わすことが多い。
勿論、アメリカ人と言っても様々な考えがあり、ナショナリストや保守派から始まって、左翼、リベラル派まであるのだが、一致しているのは、「日本の評判は、中韓の流すヘイトスピーチやプロパガンダではなく、現在の日本人の言動によって落とされている」という点だ。
アメリカ人の中には現在日本の政治事情に詳しい人もおり、一部『ネットウヨ』の主張を目にする事も多いようだが、自称人権派でなくても、人権に関する概念の育った環境で暮らした事のある人間にとって、「~人を殺せ」等というあからさまなへイトスピーチや、「韓国人を見たら泥棒を見たと思え」等の表現が、殆ど批判される事なく一部保守派の間で横行している現状は、日本在住の日本人が考えるよりも遥かに悪印象を与える。
あるアメリカ人は、ソーシャルメディアが発達した現在、フェイスブック上の議論によってファナティックな日本人のヘイトスピーチに接し、慰安婦問題において中国人学者の流すプロパガンダをすっかり信じてしまうようになった。彼の信じ込んだ誤解を解くには、こうしたヘイトスピーチの影響を過小評価したり、或いは「韓国人の方がもっと悪い」とファナティックな日本人ナショナリストを弁護する事ではなく、「こうしたヘイトスピーチがどれ程間違っているか」に同意する、普遍的な道徳心を示すことが先決となる。
こうした問題を考えていた矢先、桜井よしこ氏が2014年に書いた記事を目にした。
櫻井よしこ氏 ヘイトスピーチは日本人の誇りの欠如が原因│NEWSポストセブン
『最近、在日韓国人や在日朝鮮人に対するヘイトスピーチが問題に
桜井氏は、一応ヘイトスピーチに反対をなさっているようだ
しかしながら、ヘイトスピーチに反対されるその理由は、「根拠な
在日韓国人や在日朝鮮人に対するヘイトスピーチを行なう人々にと
加えて、桜井氏によるヘイトスピーチへの対処法は、①「私たちが『
①に関しては、「『日本らしさ』の根本とはいったい何でしょうか
しかしながら、ヘイトスピーチを行なっている人々は、主に『日本
桜井氏は「外国から来た人にもそれを理解し、受け入れてもらうこ
実際には、ヘイトスピーチは排他的ナショナリストの産物であり
何でも『日本らしさ』や『日本』に問題への解決があるかのような
もちろんの事、ヘイトスピーチやヘイトクライム、人種や国籍によ
伝統的保守派でありながら排他的ナショナリズムに陥らず、ヘイト
一部右派の間に見られるヘイトスピーチを撤廃する為には、「
因みに思い出していただければ、「普遍的な人権論」を「日本独自の考え方」、或いは「日本らしさ」に置き換えようとする論理こそが、普段は日本の憲法改正に賛成をするような米国保守派メディアをして、自民党憲法改正論に懸念を抱かせる根拠となっていた筈だ。
ナショナル・レビュー誌の書く『ファシズムに逆戻りする日本』 - HKennedyの見た世界
「日本らしさ」という「特別な日本論」に、他者を騙せるほどの魔法の力は無い。普遍的な人権論や道徳心を「西洋的な考え」を否定せずに、その重要性に立ち返る事も必要ではないだろうか。
愛国教育で有名な森友幼稚園の父兄に宛てられた手紙
日本政府によるグレンデール慰安婦像撤去裁判への意見書提出の問題
カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像撤去を巡る裁判が、グレンデール近郊に住む日本人によって起こされたのは記憶に久しい。この裁判は現地の裁判所で一審、二審とも原告側の訴えが退けられているが、この判決を受け、原告側は先月、連邦最高裁判所に上告をした。
米国グレンデール市慰安婦像訴訟 日本国政府の意見書提出 | 外務省
こうした原告側の上告を受け、日本政府は、連邦最高裁判所に対し、「像の設置はアメリカ政府も支持する日韓合意の精神に反する」などとして、上告を認めて審理を行なうよう求める意見書を提出した。
また日本政府は、「像の設置は、国際社会で互いに非難や批判をすべきではないとした合意の精神にも反する」と意見書提出の正当性を訴えている。
外務省は「これまでもあらゆる場面で政府の立場や取り組みを説明しており、今回の意見書もその一環だ」と説明しているが、日本政府は、こうした行動が、米国をはじめ国際社会にどのように受け取られるかを、全く考慮していないのではないか。
まず、こうした日本政府の行動は、日本政府の立場や取り組みを説明しているものとは映らない。その動機が慰安婦像撤去に向けた意思表明であってもなくても、こうした意見書の提出は、日本政府による司法への介入、ひどい場合では外国権力による弾圧だと米国側に受け取られるだけだ。
三権分立の徹底している民主主義国家において、外国政府が第三者として司法に対して立場を示し、市民の起こした裁判の上告を求めるように要求をする事は、普通あり得ない。こうした行動が通常あり得ないことを認識してか、日本のメディアは『異例』という表現をするが、この『異例』は、米国にとっては呆れるばかりの『非常識』なのだ。
米国連邦最高裁判所
地元に住む日本人の起こした裁判そのものについて、裁判を起こす権利が二審判決で認められた点を踏まえ、原告側の主張や目的に同意するかしないかは別として、彼らが裁判を起こす権利がある事は認める。しかし、国民の行動と政府の起こす行動では意味が全く違う。
一連の日本政府の介入が、何故米国では権力による不当な介入と受け取られるかを説明しよう。
欧米社会では、政府は国民の権利を剥奪し得る権力として見做されている。また実際、強権を振るい、自国民の権利や自由を取り上げ、弾圧する国々が世界にある事を踏まえれば、こうした見方も一概に誤っているとは言えない。特に保守派の間では出来るだけ国民の自由や権利、活動に介入しない「小さい政府」が望ましいとされ、リベラル派の間では保守派に比較して、やや「大きな政府」を主張するが、その目的は「国民の自由や権利を更に拡大する為にある」と考えられ、いずれにせよ国民の自由と権利に関しては介入しない国家が求められている。権利の侵害や自由を拘束される事を嫌う気質がある英米では特に、国民は国の介入を拒絶する。自由と引き換えに、自由の責任を自分で負う覚悟も持たなければならない社会なのだ。
対して日本は、政府が国民の必要を満たす国家である。しばし誤解されるが、実際の日本は『全体主義国家』ではなく、『Nanny State』と呼ばれる方が相応しいだろう。これは、乳母が幼児の必要をすべて満たすように、国家が国民の必要を満たすシステムを指す。勿論日本では、しばし『全体主義国家』の『専制君主』がするように、国が国民に対して威圧や暴力を使ったことは皆無と言って良く、古い時代からかなりの法治国家でもあった。しかし国民は危険を避ける傾向があり、自らの責任を負うこともしない。日本人の多くの投資や勤労が無駄になるのは、その為である。勤勉な努力に相応する個人の成功も僅少だが、比較的安定をした社会ではある。親が子供の責任を負うように、リスクは政府が負ってくれるし、外交から内政まで、他国では介入しないような国民の為の諸問題まで、政府が介入する事を期待されているのである。
であるから日本人の間では、「政府は何をしている」「外務省は何をしているのか」という声がしばしあがる。これは英米では殆ど上がらない声である。まさに「国があなたの為に何が出来るか」を問う国民気質ではないからだ。
こうした文化的違いを念頭に、連邦最高裁判所への意見書を提出した日本政府の『外交』を考える前に、この慰安婦像を巡る裁判と米国司法制度について、簡単に纏めてみる。
まずこの裁判の一審では、グレンデール市が連邦政府に代わって外交を行なう事は憲法違法であるという原告の訴えそのものが棄却され、上告も二度却下されている。同じ裁判を、再び繰り返し審理してはならないという『一事不再審理原則』によって、連邦最高裁判所がこれを取り上げるとすれば、控訴判の手続きに不備があった場合である。そして、これが慰安婦像を巡る裁判である事をわきに置いて落ち着いて考えれば、一度訴えが棄却され、更に二度上告が却下された裁判に、手続きの不備があったとして、連邦最高裁判所で取り上げられるとは、常識的に到底考えられない。
原告側は、連邦最高裁判所がこの訴えを取り上げるか否か、あるいは原告側の主張を認めるかどうかを「米国の裁判所がどれだけ公正に法律の規則に従って判断するかのモデルケースになる」としているが、もしそうであるならば尚更、「外国政府からの要請(圧力)によって、米国の司法が動いた」と見られる行動を日本政府が取った事は、決定的な誤りである。
日本という外国政府による口出しが、米国司法に影響を与えることは勿論絶対にない。もし司法が、外部からの圧力によって特別処置を取るとすれば、それは法治国家ではない。法治国家としての米国司法の威信にかけても、こうした「要請」や「意見書」は、無視されるだろう。
勿論こうした日本政府の行動に影響がない訳ではないが、メディアや反対派は日本政府による司法への介入を厳しく咎め、現在の日本に対する誤解を広める助けとなるだけだ。
意見書提出にせよ、在韓大使を召還にせよ、日本政府とすれば、韓国側民間人の行動に怒りを感じる日本国民への理解や対処のつもりかもしれない。しかしそれならば、2014年から2015年にかけて、産経新聞の加藤記者が韓国政府によって自宅軟禁処分を受けた際に、日本政府が大使召還を決断しなかった理由は何か。大使召還という厳しい外交措置を取りたかったとして、最もそれに相応しく、国際的に理解を得られた機会は、加藤記者の人権が韓国政府によって侵害された際だ。あの時大使召還をしていても、日本の主張を支持せず、韓国政府を糾弾しなかった民主主義国家は無かっただろう。
政府は、国民の感情よりも、国民の人権や権利や報道の自由を守るべきではないか。
自国民の人権や報道の権利が、外国政府によって何か月に渡って侵害されていた際に何もせず、外国の民間が設置したただの像の為に異例な強硬手段を取るところに、日本政府が気にかけているのは、国民の権利や自由ではなく感情であり、名誉といった実態の無いものである事が伝わる。
安倍政権が「ナショナリスト」による政権だという外国の味方が間違っているならば、なぜそういった誤解を受けるのか、自身の行動を振り返るべきだ。
歴史問題と心の癒し
Irving v Penguin Books Ltd - Wikipedia
The fiction of memory: Elizabeth Loftus at TEDGlobal 2013 | TED Blog
ボリス・ネムツォフ故ロシア副首相の死を悼むロシア国民の無言の抵抗
故ネムツォフ副首相の死を悼むモスクワ市民による花束
Mikhail Khodorkovsky - Wikipedia
プーチンが最も恐れる男と呼ばれる民主運動家のアレクセイ・ナヴァルニィー
故ボリス・ネムツォフ副首相の暗殺に抗議するモスクワ市民
アパートのエレベーターで射殺されたジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ
韓国の『反日ナショナリズム』を理解する
Why South Korea Is So Obsessed with Japan | The National Interest Blog
釜山総領事館前慰安婦像設置を巡る、安倍政権「在韓外交官召還」の大失敗
「日本政府は慰安婦像を合意の精神への違反だと考える。しかし政府の管轄外にある市民団体の行動に対する日本によるハイレベルの応酬は、モグラ塚から山を作るようなものだ。極東地域におけるアメリカの同盟国同士の協力関係が重要である時に、日韓関係を危機に陥れるような、戦略的判断の誤りである。アメリカは日韓の緊張緩和と関係改善に向けて、日本の方向転換をさせなければならない。
日本は外交接触や一般の抗議などによる反対にとどめる事も出来たはずだ。しかし、それと引き換えに、大使を召還し、経済協議の延長を決め、この争論の輪郭を一気に高め、政府の協力姿勢と全く関係のない市民による行動を関連付けてしまっている。こういった行動は、戦時中の非難されるべき行動への誠意に対する疑いを搔き立て、日本への批判を力づけるだけだ。
韓国内の反日感情を考えるが、2015年のピュー・リサーチセンターの世論調査では、日本はマレーシアやフィリピン、ヴェトナムとオーストラリアから80%以上の好感度を得たが、韓国からの好感度は25%に過ぎなかった。ソウルに拠点を置くアサン研究所の調査では、韓国人は、バラク・オバマ、習近平とヴラジミール・プーチンを安倍晋三よりも遥か高く評価している。安倍への好感度は、2014年から2016年の調査では、北朝鮮の金正恩への好感度に近い。
今年の韓国では、慰安婦問題をめぐる日韓合意を取り付けた朴大統領の腐敗による弾劾をもって、日韓関係は更に微妙な位置にあると言える。対抗する大統領候補らは多いが、韓国の政治にとって、合意を取り付けた朴大統領の不人気さは、日本を更に安易なターゲットとし、大統領選の課題とさえなり得るのだ。新大統領の可能性のある文在寅候補は、すでに合意の再交渉を示唆している。」
Japan’s Terrible Mistake on ‘Comfort Women’ | The Diplomat
韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像を設置した問題で、
日本政府は、
日韓合意は、日韓双方の政府が、
実際に、「安倍政権が自民党右派及びその背後の右翼の無知、
【「慰安婦」日韓合意】政府に言論弾圧要請? 民主ブレーン山口教授「公式見解に反したら処断を」(1/2ページ) - 産経ニュース
確かに合意の一部には、日本大使館前の慰安婦像について、「
韓国政府としても、もし「撤去させる」などと約束すれば、
ディプロマット誌は、「慰安婦問題での日本のひどい失敗」
朴政権の弾劾を迎えた上、トランプ米政権の発足で、
合意の通り、韓国政府は国際外交の場で、日本に対する批判を行なっていない。朴大統領が以前繰返していたような、外遊をする度に日本バッシングする姿勢からは方向転換をしたと言えるだろう。在韓大使館、釜山総領事館に向けた慰安婦像は、日本人に不快感を与えるかもしれないが、現在の日本が、市民団体の言動を弾圧するような国家だと見られる事に比較すれば、そうした不快感は、外交関係を絶ってまで我慢できないものではない。
私は、米国の教科書記述に対しても安易に日本政府の介入を求めた新聞の主張を思い出すが、政府による民間の言動、しかも外国における民間の言動に圧力をかけることを良しとするような風潮こそ、日本に対する悪い誤解を増長させるキッカケとなると指摘する。
勿論、慰安婦の像設置などは、韓国の運動家による自己満足の為の日本叩き以外の何物でもない。このようなものの設置で真の平和や女性の人権への向上などが実現できるほど、世界は単純な場ではない。こうした像が設置されれば設置されるだけ、韓国の市民団体のヒステリックな反日運動が、安全保障を無視した非常識として、国際社会からは侮蔑の対象となる筈だったのだ。実際、2015年末の日韓合意は、日本政府による外交勝利と考えられていた。
しかし日本政府は、外交官召還というあまりにも大袈裟で極端な対応に出た為に、韓国の市民団体が得る筈だった侮蔑を肩代わりしてしまったようだ。極端で愚かな市民団体がある事と、極端で愚かな政府がある事では、受ける侮蔑の種類が違う。また現在の日本に対する悪い誤解は、70年以上前の日本への悪い誤解よりも、現在生きる日本人の安全保障にとって、はるかに上回る悪影響を及ぼす。
慰安婦に関する記事を書かれたアンジェイ・コズロウスキー博士に言わせても同様だが、日本政府は、韓国政府が直接的に行なうこと以外を無視していれば良かったのだ。釜山総領事館前の新たな慰安婦像設置に関しては、「日本政府は、韓国市民団体の言動を束縛したり、弾圧するつもりは無い。韓国の人々の表現の自由は保証されている」とでも声明を発表していれば、さぞ国際的な名誉が与えられていたことだろう。
そうしなかったところに、安倍内閣の外交的、戦略的大失敗がある。安倍内閣が安全保障や同盟関係を軽視するナショナリスト内閣であり、他国の民間人による言動すら弾圧しようとする威圧的な政府だという疑惑があったとすれば、そうした疑惑は、今回の大使召還で、ただの疑惑ではなかったとお墨付きが与えられた筈だ。