ガンジーから、「すべての日本人への手紙」
To Every Japanese : Selected Letters from Selected Works of Mahatma Gandhi
無策のトランプ大統領、『一つの中国』政策を伝える
大統領就任直前のトランプ氏は、ここ何十年かの外交慣例を破って、台湾の蔡英文からの大統領当選への祝辞を受け、電話会談を行なった。それに対するメディアや外交、軍事、安全保障専門家からの猛烈な批判を浴びたトランプ氏は、「何億ドル分もの武器を売っている国からの、当選を祝う電話会談が問題なのか」とツイートをした。また「一つの中国政策に縛られるつもりはない」と発言している。
トランプ氏は、大統領当選を祝う電話だったと弁明したが、アメリカ大統領、及び次期大統領と台湾総督との直接外交は、アメリカの何十年にも上る外交政策の慣習を破るものである。オバマホワイトハウスは、これに仰天し、すぐさま米国は一つの中国を支持すると発表している。メディアや外交、軍事、安全保障専門家らも大きな懸念を示したが、これには、保守メディアや共和党政権のアドヴァイザーであった、外交、軍事、安全保障専門家らが含まれる。
勿論、共和党議員の中には、トランプ氏によるこの中国への強硬な姿勢を高く評価し、米中の関係に新風うを吹き込むと期待する声もあった。南シナ海への領域主張や人工島の建設、身勝手に設定した防空識別圏、近隣諸国との領土摩擦や威嚇など、中国がやりたい放題であった事を考えれば、トランプ氏による台湾への接近や中国への挑発、敵対姿勢などに、胸のすく思いをした議員もいたのだろう。日本の保守言論も、主にトランプ氏の中国への敵対姿勢や台湾との接近を歓迎し、トランプ氏による中国への強硬外交に期待する声も上がったようだ。
しかしながら私は、トランプ氏の言動に懸念を示した一人である。台湾が中国の一部であるという中国政府の主張には勿論同意しない。しかしながら、トランプ政権の中国・台湾問題への政策の有無が疑われたのだ。これは『トランプ次期大統領・台湾総督との直接電話会談』でも述べたが、もし中台への有事に軍事介入をする決意が無いならば、「有事を作るべきではない」と考えるからだ。
トランプ次期大統領・台湾総督との直接電話会談 - HKennedyの見た世界
大統領就任直後のトランプ新大統領は、選挙公約を無視して、初日に中国を挑発する事を行なっていない。いくら公約違反と言っても、これは評価に値する。中国側の反撃と、それに対するトランプ大統領の計画、方針、決意の無さを考えれば、トランプ大統領によるいたずらな挑発は、極東地域への不必要な不安定材料となるだけである。アメリカ大統領として、この政権がアマチュアの集まりであり、外交、軍事政策においては全くの無策である事を、疑いの無い事実として世界に見せて良い筈がない。
President Trump didn't go after China on Day One - Jan. 23, 2017
実は、トランプ政権への不甲斐なさは、直接電話会談による期待感から覚めた台湾人も感じていたようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、以下のように書いている。
Taiwan Fears Becoming a Pawn in Donald Trump’s Game - WSJ
『ドナルド・トランプと台湾総督とによる電話会談によって高められた高揚感は、新政権が台湾を中国との交渉材料の一つとして扱うのではないかという疑惑に変わってきている。
先の電話会談とその他の声明によって、トランプ氏は何十年も続いた常識を打ち破り、台湾のライバル政府を政治的に孤立化させようという北京の政策を見直させる意欲を見せた。
ところが、先週彼は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙との新たなインタビューで、貿易やその他の課題に対する中国の姿勢によっては、台湾との交渉に前向きであると答えている。台湾メディアの解説や学者、政権政党と野党政治家らは、アメリカの新大統領が北京の譲歩によっては、台湾の国益を無視するのではないかという恐れを表した。蔡英文総督陣営は、トランプ氏に近い人々に迫り、トランプ氏の立場の表明を求めたようだが、これについて外務省と総督のスポークスマンはコメントを控えている。
台湾で影響力を持つシンクタンクのリー・ティング・フイ副所長は「我々は、トランプ氏に、台湾の重要性と、台湾を交渉の材料とさせてはならない事を知らせなければならない」と述べた。世論調査によれば、殆どの台湾人は、中国との穏やかな関係から来る利益を求めつつ、北京の目指す政治的統合や、両岸が「一つの中国」であるという主張には反対をしている。』
つまり、台湾人でさえ有事を望んではいないし、中国との交渉の材料として自国の将来をトランプ政権によって政治利用される事に危惧を感じているのだ。
台湾の将来を、トランプが本当に気にしているとは思われない。台湾の人々にしてみれば、トランプ氏の発言は「中国の出方によれば、台湾の在り方についても考える」という意味に受け取られ、「交渉に長けている中国が、トランプによる一時的な要求を呑むかわり、トランプから、台湾の将来に影響を及ぼす発言を引き出すかもしれない」という危惧を持つのは、当然だろう。
トランプ支持者や、トランプを知らない日本人ナショナリストの期待するところは、中国に対して強い口調で非難し、挑発し、その面子を損なうことを国際社会の場で述べ、圧倒的な軍事力でもって屈伏させる事だろうか? ところがトランプには、そのような決意も、そうした事を行なう原則も全く持ち合わせていない。全ての事は彼にとって、自分を豊かにし、強く見せてくれるための手段でしかないのだ。
案の定、今日トランプ政権は、「一つの中国政策を重んじる」と中国側に伝えている。
Trump tells Xi Jinping: U.S. will honor 'One China policy'
トランプ政権には、挑発した後の策が無いのだ。核戦争の専門家で安全保障アドバイザーでもあったトム・ニコールズ氏は、以下の通り指摘している。
『中国との電話会談で言えることは、計画の無いままの台湾総督との電話会談への誤りだ。私は中国への強硬姿勢そのものには同意する。台湾への中国の脅しを押しのける必要もある。但しこれはそういった問題ではない。もし、何十年にもわたる慣例や政策を変更するならば、その後の計画が何種類も必要となる。絶対に避けなければならないのは、勢いよく突っ込んでいき、敵を怒らせ、その後の計画の不在に気付き、後ずさりする事だ。今回の行動は、結局中国の利となった。彼らは求めていた事をアメリカ大統領から再び得、念を押されたのだ。一つの中国政策を尊重するという政策は、私の意見によれば正しい。政権誕生から不必要なほどの軋轢を、招いている。』
中国は、「尖閣を守る」と保証したマティス国務長官の訪日2日後に、既に日本の領海内に戦艦を運航させている。NATOを始め、同盟国への軍事防衛義務を負荷だと主張し、アメリカは同盟国によって搾取されているとの意見を変えないトランプ氏が、極東での有事の際に実際どのような行動をとるのか、策があるとは到底思えない。当然ながら、中国もそれを承知しているだろう。
これからも、トランプ大統領が短気や癇癪を起し、挑発的な言動をくり返すだろう。中国はその都度反応する素振りを見せるだけで、アメリカは尻込みをし、結局中国がアメリカからの譲歩を得る時代となるのかもしれない。
ナショナリズムとパトリオティズムの違いについて
ジョージ・オーウェル, 1903~1950
トランプ・アメリカでは、対中国戦は勝てない。
挑発的で、『反中国』とも受け取れる発言をするトランプ氏の大統領就任をも
Trump Administration Set to Impose New Sanctions on Iran Entities as Soon as Friday - WSJ
Trump risks isolating critical neighbor with Mexico feud - POLITICO
U.S. asks Aso to join Abe-Trump meeting - The Japan News
Donald Trump avoids saying who he trusts more — Vladimir Putin or Angela Merkel | The Independent
Donald Trump Meets Nigel Farage Ahead of U.K.'s Theresa May | Time.com
中国との戦争を語る狂気のトランプ陣営
Trump’s National Security Coup Cuts Intelligence Out of Big Decisions | Observer
『アメリカ・ファースト(第一)』とは何なのか
私は、トランプ大統領の主張する「アメリカ・ファースト」というスローガンに対して、なぜ日本人が嫌悪感を持たないのかが理解できない。このスローガンに対しては、保守派の政治評論家ビル・クリストル氏も「米国大統領がアメリカ・ファーストを連呼しているのは、非常に恥かしい。このスローガンの歴史を知らないのだろうか」と述べているが、全くその通り、この主張は「アメリカさえよければよい」という意味で使われてきた。このスローガンには、外国人への配慮は欠片も無かったのだ。
「アメリカ・ファースト」は、真珠湾攻撃の数日後真であった委員会の名称で、1940年9月4日から1941年12月10日まで続いた、「世界で何が起きていても、とにかくアメリカは巻き込まれたくない」という一国主義を掲げる政治圧力団体である。
当時のアメリカは、ナチスドイツによってヨーロッパで起きているユダヤ人虐殺を無視しようとしていた。ユダヤ人が大量虐殺され、民族浄化されても、外国の戦争に巻き込まれたくないと考えていたのだ。当時のアメリカ人には、ユダヤ人の悲劇は我慢できたのようだ。であるからこのスローガンは、ドイツにもう一つの家庭を隠し持ち、ドイツとの戦争を避ける事を主張していたチャールズ・リンドバーグに代表される通り、多くの反ユダヤ主義者によって叫ばれていた。
現在のアメリカが、これを繰り返す大統領を恥ずかしく感じるのには理由があるのだ。
この政治圧力団体が解散した理由は、真珠湾攻撃と日本の宣戦布告によって、開戦が決定されたからだ。
勿論どの国でも、最優先されるべきは国民の安全である。それを否定するつもりは無い。しかしながら、アメリカ・ファーストは「アメリカを一番にして、二番目には同盟国、近隣国」という意味では使われなかった。あくまでもアメリカ・ファーストであり、またアメリカ・オンリーであり、セカンドやサードは無かったのである。
このスローガンは、戦後も「アメリカさえ無事ならば、アメリカさえ良ければ、他で何が起こっていても構わない」という意味で使われ続けた。それは、アメリカで有名なスース博士の挿絵にある通りである。
この挿絵は「アメリカ・ファースト」と書かれたセーターを着た母親が、子供たちにヒトラーを思わせるオオカミの本を読んで聞かせている。
「そしてオオカミは、子供たちを嚙みつくして彼らの骨を口から飛ばしました。でも、この子供たちは外国の子供たちなので、別にどうでも良かったのです。」
アメリカ・ファーストとは、「アメリカさえ良ければ、外国人の悲劇は気にならない」という意味でしかない。そして日本やメキシコは、例え経済が崩壊し、政権が転覆し、軍事侵略をされても「アメリカさえ良ければ気にならない」という宣言なのだ。
トランプ大統領のくり返すこの宣言にシンパシーを感じ、理解を示すトランプ支持の人々は、このスローガンの持つ残酷な歴史や意味を知らないのだろう。
なぜヒラリーの民主党は敗退したか
ヒラリー・クリントンの不人気は、民主党支持層を回復できなかった。
アハムド少年の作ったとされるアタッシュ・ケース時計。素人には、アタッシュケース爆弾にしか見えない。
Third party voters criticized after slim Trump margins - NY Daily News
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